生誕祭
沢山の人で賑わう商店街。
店には華やかな飾り付けがされ、道の中央には聖女の像が置かれている。
少女達が腕に籠を抱え、道行く人々に聖女像に捧げる花を売っていた。
今日は『生誕祭』である。
この国では昔から、王家に生まれる女には、平和をもたらす奇跡の力があると、信じられている。
故に王女が誕生すると、人目に触れぬよう隔離され、成人と同時に『祈りの塔』と呼ばれる場所に入り、『聖女』として一生をそこで終える。
三百年ぶりに王家に生まれた王女も、一年前に聖女として塔に入った。
人々は聖女に感謝をし、誕生日には本人の代わりに像に花を捧げるのだ。
「ああ、凄い賑わいですね」
ロイルとマリンも商店街に来ていた。
ロイルは、はぐれないようマリンの腰をしっかりと抱いた。
「ほら、あれが聖女様の像ですよ。綺麗でしょう?」
ロイルが指差す先、聖女像は、両手を広げ、優しい微笑みを浮かべている。
マリンは無言でじっとその像を見つめていた。
「ああやって像に花を捧げるんです。マリンもやりますか?」
「・・・・・」
ロイルは花売りを呼び止め花を一輪買い、マリンに差し出したが、マリンは受け取ろうとはせず、像から視線を外し俯いた。
ロイルがクスリと笑い、マリンの頭を撫でた。
「皆さん信心深いですね。聖女像に祈ってますよ。『平和をもたらす奇跡の力』なんて胡散臭い話、本気で信じてるんですね。・・・マリン、知ってますか?元々この伝説は、大昔の王女様の駆け落ちがきっかけで創られたんですよ」
目を見開いて自分を見るマリンにニヤリと笑って、ロイルは話を続けた。
大昔の王女様が、お忍びで行った湖で、一人の騎士と出会いました。
二人はたちまち恋に落ち、愛し合うようになりました。
しかし身分の低くかった騎士と王女は結婚できない。
その上、二人の関係が王様にばれてしまったのです。
そこで二人は、夜の闇に紛れ、馬に乗って駆け落ちしました。
朝になり、王女が居なくなった事を知った王様は、必死で王女を捜しましたが、見付ける事は出来ませんでした。
王女が駆け落ちしたなどという醜聞が広がるのを恐れた王様は、王女は塔に籠もり国の平和を祈っていると、嘘を吐いたのでした。
「なんでそんな嘘を吐いたんでしょうね。で、その数十年後、更に数十年後と駆け落ち王女が続いたらしく、同じような嘘を吐いている内に、段々話が大きくなって、現在に至るという訳です。因みにここ三百年程は、王女が生まれても、塔に閉じ込めるのは可哀想だ、普通の暮らしをさせたいと、こっそり信用のおける者に託していたそうですよ。しかし、王女が生まれない事が国民に不安を与え、国が滅亡するなどという悪い噂が広まったので、仕方なく王女が生まれた事を公表したのです。現聖女様は運が悪いですね」
ロイルは花に口付けすると、唖然とするマリンの髪にそれを挿した。
「誕生日おめでとう。マリン」