怪盗うさぎ仮面だぴょ~ん! ⑨
暴れ疲れて眠ったマリンに溜息を吐いて、ロイルはぐったりとして寝室を出た。
廊下で待機していたアンが、頭を下げる。
「出掛ける。マリンを屋敷から出さないように。それと―――――」
ロイルは壁に貼ってある差し押さえの紙を剥がした。
「―――――これ、剥がしておいて下さい」
「かしこまりました。いってらっしゃいませ」
もう一度頭を下げるアンに頷いて、ロイルは階段を降りた。
「あぁ、たかだか一億インで酷い目にあったな・・・」
あの隠し通路は絶対に埋めてもらおうと決めて、ロイルは玄関のドアを開けた―――――。
目が覚めたマリンは、小さく欠伸をして、隣で眠るロイルを見た。
―――――バキッ!
「・・・何故朝から殴られなきゃいけないんですか」
ロイルは目を擦りながら、身体を起こした。
「寝かせて下さい。寝たの朝方なんですよ」
―――――バキッ!
「あー、はいはい。起きますよ。まだ昨日の事怒っているんですか?仕方ないでしょう?」
プイと横を向くマリンの頬にキスをして、ロイルはベッドから降りた。
ベルを手に取って鳴らすと、すぐにアンがやって来る。
「おはようございます」
「おはよう、アン。マリンの着替えをお願いします」
「かしこまりました」
頬を膨らませてロイルを睨んでいたマリンは、ふと何かが昨日と違う事に気付いた。
「・・・・・?」
マリンが周りを見渡す。
「どうしました?マリン」
「いっぱい貼ってあった紙は?」
首を傾げるマリンに、衣装部屋からドレスを持って戻ってきたアンが答えた。
「あの方達なら、捕まったと今朝の新聞に載っていました。随分悪い事をしていたらしいですわ」
「え、そうなの?じゃあお金は返さなくていいのかしら?」
「そのようです」
マリンはパッと笑顔になって、ロイルに抱きついた。
「よかったですね」
ロイルがマリンの髪を撫でる。
「もう!だったら、あんなところ行く必要無かったのに!あ、そうだわ」
マリンは掌をロイルに突き出した。
「時計!持って帰ってきたでしょう?早く出しなさい」
「・・・あー、それなんですがね・・・」
ロイルは頭を掻いて、申し訳なさそうにマリンを見た。
「実は逃げる途中で落としてしまったようで・・・」
マリンが目を見開く。
「え・・・、まさか全部?」
「全部です」
「・・・・・」
マリンはロイルから離れると、怒りのこもった瞳で睨み付けた。
「信じられない!馬鹿ぁ!!!」
―――――バキィィィッッ!!!
マリンの拳がロイルの頬にめり込んだ・・・。
怪盗うさぎ仮面だぴょ~ん!はこれで終わりです。
次話もよろしくお願いします。