怪盗うさぎ仮面だぴょ~ん! ⑤
「なんだか、じめじめしてて嫌ね」
「では帰りましょうか」
「嫌!」
ロイルは溜息を吐いて、馬を少し速めに歩かせた。
「それにしても・・・、いいのですか?」
「何が?」
「俺にこの隠し通路を教えてしまって。父でさえ、この通路は知らないと思いますよ」
「あら、トルカナでも知らない事もあるのね」
マリンは意外そうに、ロイルの顔を見上げた。
「マリン、『おとうさま』ですよ。一応義父なんですから」
「一号、私のことは『バニー様』と呼びなさいって言ってるでしょう」
「・・・・・」
ロイルはガクリと肩を落とした。
「それより、ジョニーを走らせて。早くここを抜けたいわ」
「・・・・・」
帰りたい気持ちを抑えて、ロイルは馬を走らせた。
暫くすると、前方に階段が見えてきた。
ロイルは馬の速度を落として階段の前で止まった。
「目的地はこの上・・・ですね」
心底嫌そうに溜息を吐くと、ロイルは馬から降りて、飛び降りたマリンを受け止めた。
「・・・やっぱりやめませんか?俺の予想通りの場所なら、確実に面倒くさい事になりますよ」
「今更なに言ってるの?行くわよジョニー」
「え・・・、ジョニーも連れて行くんですか?」
マリンは眉を寄せて、ロイルを睨み付けた。
「当たり前でしょ?こんな所に置いて行けるわけないじゃない。可哀想でしょ?」
「・・・・・」
馬への優しさを、少しでいいから自分に向けて欲しいとロイルは思った。
マリンは階段を上り、その先にあったドアの鍵を開けた。
「一号、このドアを開けたらまた棚があるから、それを横に動かして」
「・・・ぴょ〜ん」
ロイルはドアを開け、棚に耳を近付けて中の様子を探った。
「・・・人の気配はしませんね」
「好都合だわ」
「・・・動かしますよ」
溜息を吐くと、ロイルは棚に両手を置いて、そっと横に動かした。
隙間から光が漏れてくる。
もう一度中の様子を探ってから、一気に横にずらす。
「・・・・・」
ロイルはその場に崩れ落ちた。
「ちょっと!早く退いてちょうだい!」
マリンが眉を寄せて、ロイルの背中を何度も蹴った。
「・・・やはりここに出ましたか。まずいでしょう、ここに来るのは」
「ジョニー!やっておしまい!」
「分かりました!退きます!」
ロイルは立ち上がると、部屋の中に入った。
「懐かしいですね。まさかこんな形でまたここに来るとは、思いもしませんでしたが」
「さあ、あの馬鹿が帰ってこないうちに、さっさっと終わらせるわよ」
「・・・あれでも一応、国王陛下ですよ」
ロイルは溜息を吐いて、久し振りに入った国王の私室を見渡した。