怪盗うさぎ仮面だぴょ~ん! ④
馬を走らせて辿り着いた教会を見て、ロイルは眉を寄せた。
「ここ・・・ですか?」
あきらかに長年放置してあることが分かる、ボロボロの教会―――――。
壁も崩れかかっているし、ドアも辛うじてあるといった感じで、勿論人の気配もない。
周りには木が生えてるくらいで、民家も全くない。
「さあ?」
「さあ!?」
「知らないわよ。来るのは始めてなんだから。ほら一号、早く中に入ってちょうだい」
「・・・・・」
ロイルは仕方なく馬を近くの木に縛り、壊れているドアを力任せに破って中に入った。
舞い上がる埃に眉をしかめながら、素早く中を確認して、マリンを招き入れた。
「それで、ここに何があるんですか?」
「何処かに棚がある筈よ。探して」
「はいはい」
―――――パシィッ!
「返事は『ぴょ〜ん』だって言ってるでしょ!?」
「・・・ぴょ〜ん」
ロイルは溜息を吐きつつ、ランプの明かりを頼りに棚を探し始めた。
程なくして、隅の方にそれらしき棚を見つけた。
「この棚を退けて」
ロイルが棚を持ち上げてみると、意外と簡単に動かすことが出来た。
「見た目と違って、随分軽いですね」
棚を脇に退かして、ロイルは埃だらけになった手をはたいた。
「そこの壁に、色が違う所がある筈よ」
ロイルがランプを近付けてみると、確かに一ヶ所、周りより少し色の濃い部分があった。
「ありましたよ」
「引っ張れば取れる筈よ」
「この部分が・・・ですか?」
色は多少違うが普通の壁に見えるその部分を、ロイルは半信半疑で爪で引っ掻いてみた。
すると、ポロリと壁が落ちた。
「・・・・・」
驚くロイルを尻目に、マリンは胸の谷間から小さな布の袋を取り出す。
そして中から鍵を出して、壁の穴の開いた部分に差し、ゆっくりとまわした。
―――――カチリ。
マリンは鍵を胸の谷間に戻して、ロイルを見た。
「壁を向こう側に押してちょうだい」
「・・・・・」
ロイルが両手で壁を押すと、ギギッという音を立てて、少しずつ壁が動いた。
やがて、完全に開いた先に現れたのは、地下に降りる階段だった。
「隠し部屋・・・ですか?」
「隠し通路よ。ここを降りて、後は一本道よ。でもちょっと、目的地まで遠いわね」
「・・・物凄く嫌な予感がするのですが、帰りませんか?」
「そうだわ!ジョニーも一緒に行けないかしら?一号、ちょっと通路を見てきなさい」
「俺の意見は無視ですか・・・」
ロイルは溜息を吐くと、階段を降りていき、すぐに戻ってきた。
「中は広いですね。入り口もギリギリいけそうです」
「そう、良かったわ。さあ、早くジョニーを連れてきて!」
「・・・ぴょ〜ん」
ロイルは額に掌を当てて、仕方なく愛馬を迎えに行ったのだった。