怪盗うさぎ仮面だぴょ~ん! ②
屋敷に入ったロイルは、中の様子を見てまた溜息を吐いた。
至る所に貼られた差し押さえの紙―――――。
「剥がすのが大変だな」
誰も出て来る気配がないので、取り敢えず居間に行ってみると、そこにマリンとアンが居た。
「あ・・・。お帰りなさいませ。ロイル様」
ロイルを見て、慌ててソファーから立ち上がるアンと、ビクリとして視線を逸らすマリン。
ロイルはテーブルに酒を置くと、マリンの横に座って肩を抱き寄せた。
「ただいま。それで?何があったのですか?」
マリンが顔を背けたので、ロイルはアンに視線を向けた。
「・・・それが、突然男の方々が来て、『金を返せ』と・・・」
「金額は?」
「一億インです」
「・・・・・」
ロイルはマリンの顎を掴んで、視線を合わせた。
「何をやったのですか?」
「分かんないわよ!」
マリンが乱暴にロイルの手を払う。
「・・・半年程前に、カジノでお金が無くなって帰ろうとした時、隣に座っていたおじさんが一万イン貸してくれたの。それからカジノに行ってもそのおじさんは居なかったし、私もそんなこと、すっかり忘れていたのよ!」
「・・・・・」
ロイルは掌を額に当てて、ガクリと肩を落とした。
マリンは間違い無く騙された。
一万インが半年で一億インになるなど有り得ない。
明らかに違法である。
「・・・仕方ないですね」
そう言って立ち上がり、ドアに向かおうとするロイルの腕を、マリンが掴んだ。
「ちょっと!何処行くの!?」
「もう一度実家に行って、事情を話します。父に何とかしてもらいましょう。まあ、いざとなればマリンの為ですからね、一億くらいポンと出してくれますよ」
「だ、駄目よ!」
マリンは慌ててロイルにしがみ付いた。
「やめてよ!こんなこと知られたら、恥ずかしいじゃない!」
「いや、今更では?」
―――――バキッ!
「どういう意味よ!」
ロイルは殴られた脇腹を擦りながら、溜息を吐いた。
「じゃあ、どうするんですか?」
「え・・・、それは・・・」
「どうにもならないでしょう?」
「・・・ちょっと待ちなさい。今考えるから」
マリンはロイルにしがみ付いたまま、目を閉じて暫くじっと考えた。
「・・・・・」
やがて目を開けると、大きく頷いて、立ち上がった。
「準備をします。アン!手伝ってちょうだい!ロイルはここで待ってなさい」
マリンは二人に命令すると、足を踏みならして部屋から出ていった。
アンが慌ててそれに続く。
「・・・また何をする気なんだ?」
ロイルはソファーに身を投げ出すと、ぐったりとして目を閉じた。