ぶた仲間 ④
「止まれ、スケルトンだ」
部隊長のイベリコ豚が言い、全員が足を止める。乱立する木々の隙間から、剣を持った骸骨数体が見える。
「八体か。武器確認。八体とも剣。よし、撃滅する。いつも通り防護柵を使う」
囮役を命じられた騎士三名を残し、他は近場の防護柵まで移動する。
「ステフ、いつも通り防護柵を使うっていうのはね」
「柵の隙間から一方的に槍で突くんだろ。騎士の称号は持ってるから、いや、今は剥奪されてるんだが、とにかく、基本的な知識は頭に入ってる」
「ステフ、聖騎士だったの?」
「研修中に戦争が始まって、なんだかんだ正式な称号はもらってないけどな」
「エリートだったんですか」
「なんでこんなとこいるのよあなた」
「無駄口を叩くな」
柵の内側に着くと、イベリコ豚が剣で地面に線を引いた。
「ここから前には出るな。柵越しだからといって油断していると、スケルトンの剣が突き出てくる」
囮役の騎士三人が走ってくる。イベリコ豚が内側から扉をあける。スケルトンには扉を開ける知能があるが、この扉は内側からしかあかないようになっているため問題ない。囮役が扉に滑り込み、扉が閉められる。
囮役を追ってきたスケルトンが骨を鳴らしながら歩いてきた。
「隊長、一体が森の奥に戻りました。仲間を呼びに行った可能性があります」
「撤退だ」
数舜の迷いもなくイベリコ豚が言い放ったとき、森の奥から馬の足音が聞こえた。
「撤退中止! デュラハン相手では砦まで逃げ切れない! ここで迎え撃つ!」
デュラハン――馬に跨がった首のない鎧――が猛スピードで接近する。
「武器確認! フレイルです!」
「槍構え!」イベリコ豚含め、三人の騎士が柵の隙間に槍を構える。「他はもっと下がれ! オレインは後詰めだ! 馬をやれ! 本体は落馬したところを囲んで潰す! 他は聖職者を守れ! ステフ除く聖職者三人は衝突と同時に前衛三人を治療! 負傷の有無は確認無し! どうせ怪我する! 全力で治癒を頼む!」
イベリコ豚が素早く指示を出すあいだに、デュラハンが勢いよく近づいてくる
「よーし、死ぬなよお前ら! 死ななきゃ治してくれる! 来るぞ、来るぞ、来るぞ、槍出せええ!!」
柵の隙間から槍が突き出され、デュラハンと馬に突き刺さる。しかし勢いはまったく衰えず、射出されたフレイルと突進してきた馬が、柵に激突する。衝撃で柵ごと前衛三人が吹き飛び、それでようやくデュラハンの勢いが相殺される。すぐさま後詰めを任されたオレインという男が飛び出し、勢いの死んだ馬の胸部めがけて槍を突き刺す。そのあいだにベラ、ルース、リフィが吹き飛んだ三人を治癒する。
治った三人はすぐさま立ち上がり、落馬した本体が起き上がる前に、剣を突き刺した。
「デュラハン消滅! 油断するな! まだスケルトンがっ……」
叫ぶイベリコ豚に、アタシは最後のスケルトンの頭部を杖で叩き割り、報告する。
「スケルトン八体、殲滅」
イベリコ豚が唖然としてこっちを見ている。間抜けに開いたその口から、かろうじて声が出てきた。
「……か、確認した」