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7.お父さまにお願い

「それは、できないことだよ、アンネ」


お父さまはいつものようにやさしい顔で微笑えんだままそういった。


「お父さま、どうして?」

「追放者たちのために、なにか施設をつくって助けてあげたい。それは立派なおこないだけれどもね」

「はい。リュミエール王国には他国を追放されたひとたちが、たくさん流れ着いてくるってきいたんです。だから、わたしたちが・・・・・・」


 そうか、とお父さまは続ける。


「私も、そのことは知っているよ。なんとかしたい、とも思っているんだ。でもね」


お父さまの顔が、リュミエール王国国王のそれへとかわっている。


「このリュミエール王国では、使えるお金はとても限られているんだ。そうしてそれは、まず国民のために使うべきだって私は思う」


はっきりとそういわれてしまえば、わたしにいえることはもう無かった。


ってそうじゃない。


お父さまのいうことは、もっともではあるけれど、それならばなおのこと、わたしがいわなければならないのだ。


「それでもだれかが、いえ、リュミエール王家がやらなければいけないんです」


そうだ、とわたしは続ける


「甘いものを週に一度、いえ、なんなら月に一度にするのはどうかな。それで少しはお金を浮かせば・・・・・・」


「アンネ、そういうことではないのだよ」


「恐れながら、ルクスさま。私からもお願い申し上げます。アンネローゼさまは本気で、追放者のことをお考えいただいているのです」

「あたしからもお願いします。姫さまが決して、思いつきだけで言っているわけではないってこと、あたしが保証しますから」


「おまえたちまでもか。むぅぅ」


マルカとシエラが口添えしてくれた。

わたしは心強かったけど、それでもお父さまは「うん」とはいってくれなかった。


「やはり、どうしても回せる予算はない。国王として、優先しなければならないことが、あまりにも多いのだから、」

「・・・・・・あなた」


お父さまの隣から声がした。

ユイリィお母さまだ。

お母さまは小さな声でささやくように、お父さまにいう。


「わたしが嫁入りのときに持ってきたあの指輪。あれを売ったら、すこしはお金のたしになるんじゃないかしら?」

「え、いや、それは・・・・・・。でも、あれはきみがあんなに大切にしていたものじゃないか」

「いいのよ。それよりもあなた、思い出してみて? アンネがわがままをいうなんて、ほとんどはじめてのことじゃない」


お父さまは目をつむって、考えるようにした。


「せっかくのわがままだもの。わたし、叶えてあげたいの」

「そう、だったか。いや、そうかもしれないな。」

「そうよ。やっちゃいましょ」

「ほんとうは、私がやらなければいけなかったことでもあるのだしな」


そうして、お父さまは私をみた。


「わかった。なんとかしてみるよ、アンネローゼ」

「ありがとうございます、お父さま」


わたしは少し泣きそうに鳴りながら、そういってにっこり笑った。


「そのかわり、といってはなんだが、この件はアンネが責任をもってやること。いいね」


いわれて、すこし驚いたけど、わたしはなんとか頷いた。

ほんとうはお父さまにやってほしかったのだけれど。

でも、これ以上お忙しいお父さまの手を煩わせるわけにはいかないな。

そのくらいは、やってみせなければね。


「マルカ、そしてシエラ。ご苦労だけれども、きみたちふたりはアンネローゼのお手伝いをお願いしたい」


「願ってもないこと」


マルカがそういうのに、


「え、あたしがですか?」


シエラは少し、心配顔だ。

それでも彼女はわたしの方を見て、しょうがないですねえ、というように頷いた。


「ああ、これで安心だ。アンネ、忙しくなるだろうけど、くれぐれも頼んだよ」


「はい、お父さま。きっと追放者のみなさんのお力になってみせますね」


わたしの言葉に、お父さまはにっこり笑った。


「ありがとう。それから、甘いものはしばらく月一回にするよう伝えておくよ。これも、約束のうちだからね」


「うぐっ」


こればかりは、すぐに頷くことはできなかった。


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