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29話:東出さんがな亡き田川さんのために直木賞、応募

 文章表現もインパクトがあってと言い、そして別の神に草稿のページとエピソードのくっつけ方の案を数通り、書いてあった。いつ頃、形になりますかと、小声で聞くと、東出さんが、来年、夏までに、形を作り、その後、来年中に完成したいと答えた。もし、なんかあったら、気軽に電話してくださいと担当者が言った。それでは、これでと言うと、時間あったら、修善寺の温泉に泊まっていくと良いですよと笑いながら言った。


 編集者は、安月給でも、いろいろと、細々と忙しいもので、これで失礼しますと言い帰っていった。その後、三井夫妻が、体と相談しながら無理しないでくださいよと言った。

その言葉が、心にしみたのか、本当に親切にしてもらって、ありがとうございますと涙声で答えた。じゃー、これでお暇しますが、欲しいものがあったら言ってくださいね、用意しますからと言い、襖「ふすま」を閉めた。


 その後も三井夫妻は、老人施設を若い石動健太と平野宗助に任せて、その後も交代で東出さん様子を見に行った。すると東出さんが、温泉地って素晴らしいわ。だって、考えが煮詰まったり、筆が進まなかったりすると温泉にはいって、物思いにふけり構想を練り直せる。それで駄目なら気分転換に山道を汗びっしょりになるまで歩くと不思議に問題が解決していくのよ話した。


 やがて梅雨が来て、外に出られなくなり、それが明けると、一気に日差しが強くなり夏を迎えた。その頃、暑い昼間は、エアコンを聞かせて仮眠したりして体を休め、夜、小説を書く日が続いた。やがて、お盆が過ぎて、9月、10月となり、10月11日、荒原稿ができたと言った。すぐに、荒原稿を下村さんと言う編集者に郵送した。すると翌週、編集者が東出さんのところを訪ねた。興味あるので三井夫妻も同席した。編集者が東出さんに、よく頑張りましたねと言った。

 総論的に、良いと思いますがと言いながら校正すべき点を荒原稿のコピーに赤鉛筆で書きなぐっていた。次は、いよいよ、最終校正ですと言い、もっと、インパクトと言うか印象に残るような、タッチの文章にできれば、完璧ですと言った。そうね、その方が読者にとって印象的かもしれないと東出も同意した。そして、もう一つ、ここまで、やったのだから直木賞に応募しましょうよと言った。


えー、直木賞、そんなの無理ですわと言うと、嫌そんな事はない。東出さんの世界旅行、日本旅行の小説は素晴らしく、今でも、コンスタントに売れ続けてます。その、あなたの紀行文の上手さを直木賞に応募してぶつけてみましょうよと、編集者の男は、東出さんを説得していた。それを聞いていた三井夫妻が、天国の田川さんも、生きていたら、きっと、やってみろよというはずですよと言うと、わかりました、お任せしますと答えた。


 その後、2017年、年末、東出さんの小説が完成したと三井夫妻の耳に入った。そして2018年が明けた。2018年3月には、全国の書店に、「修善寺での白昼夢」と言うタイトルで発売され、全国の書店でじわじわと売れ出した。専門家の批評も上手な紀行文に、叙情的な雰囲気と、今までにない情熱的なタッチが加わり、今までにない大人の文学と高い評価が雑誌に載るようになった。


 それから毎週の売り上げ順位がトップにならなくても、毎回ベスト5入りし、週によっては2位になったりした。そこで、今まで世話になった編集者とともに札幌、仙台、東京、横浜、大阪、神戸、広島、福岡で3泊4日で書店でのサイン会を開いた。すると、ゴールデンウイークの頃から、欠品する書店が出てきて急いで増版をする羽目になった。そして、2017年9月、直木賞にエントリーする事が決まった。


 東出は、生まれて初めて記者会見をして、小説を豊かな自然と温泉に恵まれた修善寺で、地元の人たちに支えられながら小説を書き続けたことを語った。そんな時、下世話な記事で有名な週刊誌に、花形小説家に男ありという記事が載った。それは、東出さんと亡き田川さんの事だった。その2人の関係を肉欲に満ちた感じで書いたので、その週刊誌は、バカ売れした。これで、東出さんは、落ち込んでしまった。


 この話を聞いた三井賢治は、弁護士に相談して、訴訟を起こしたいと言ったところ、それ構わないですが、有名なプロ野球の選手が訴え3億円の損害賠償が、最終的に800万円で決着ついたりして決して有利とはいえませんよと言った。訴訟費用も300万円は必要ですから、心情的にはわかりますが、あまり奨められませんと言われた。それに訴えたご本人にとっても深い心の傷が残りますよと言われ、あきらめた。


 しかし、この週刊誌がバカ売れし、加えて、お昼のワイドショーでも東出芳子さんの名前が出て、一躍、時の人になった。そのため全国の書店では、「修善寺での白昼夢」の本の売り切れが続出して増版の連続となり、出版社では、うれしい悲鳴となった。しかし、東出は、テレビ、週刊誌のインタビューは、一切受け付けなかった。やがて2017年も12月中旬を迎え、て芥川・直木賞候補発表で今年は、11人中7人が初ノミネートされた。

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