2020年のクリスマスに地球人全員に与えられた贈り物
2020年のクリスマス。
人類みんなに贈り物が与えられた。
世界中に住む人のうち、10人に1人ぐらいは1週間ほど前から頭とお尻がムズムズすると言い出し、またある人は動物ととても仲良くなる夢を見た。
☆☆☆
クリスマスイブ。
「なんか魚が食べたくなるんだよね」
「あたしはカラスが怖い。なんでだろ」
なんかまわりにいる人がそれぞれそんなことを言う。
ソウタは頭のてっぺんをさわった。
頭が変だ。てっぺんがムズムズするし、お尻も同じようにむずむずする。
なんでだろ。
で。クリスマス。
12月25日の朝。
鏡を見て異変に気が付いた。
「なに。これ…」
頭に生えた耳。
ちょうどネコのような耳が頭のてっぺんについている。
人の耳は無くなっていた。
「かあさん。耳が。耳が…」
台所で朝食を作っているかあさん。
そのかあさんの後ろ姿もおかしかった。
ネコのような細くて長いしっぽが生えていた。
頭のてっぺんにはネコミミが…
「おはよう」
何事もない感じで言うかあさん。
「ねえ。朝起きたら耳が…本物だよ。触るとあったかいし…触っている感触があるし。ねえ」
ネコミミをさわりながら言う。
「あたしもびっくりしたけどね。朝食を作ったりお弁当を作らないといけないから、そんなことは後回し…さあ、早く食べてしまって」
といつもの朝のように言う。
「ねえ。とうさんは?」
と父の姿を探す。
「いつものとおりでしょ。もう出勤したわよ。ネコミミの姿でね」
とかあさんは言った。
ネコミミになったビジネスマン。スーツを着て出勤か。
絶対似合わない。
「そ。そう…」
テレビ。僕はテレビを見た。
国営放送のニュースキャスター。年配の人。ニュースキャスターの頭を見ると普通の人間だった。
頭のてっぺんがもこっとしているが…
「ねえ。ニュースキャスターは普通の頭だよ」
僕は台所でお弁当をつくっているかあさんに言う。
「あれはカツラよ。他の番組を見てみなさい。ネコミミとかうさ耳とか、いろいろいるわよ」
「え?」
朝の番組は生放送だ。CMは事前に収録されているんだけど、それ以外のクリスマス以後に放送されているテレビ番組に出ている人のほとんどは動物のような耳が生えていた。それと、女の人でスカートを履いている人のお尻からは動物のしっぽが生えているのが見えた。
男の人はズボンの中にしっぽを隠しているみたいだ。
☆☆☆
今日から冬休みなので学校は休みだ。
友達に電話で連絡をとることにした。
スマホはまだ持ってない。
「ソウタだけど、ツトム君いますか?」
「ちょっと待ってね」
ツトム君のおかあさんが言い、電話をかわる。
「お前の頭にも生えたか?」
いきなり聞いてきた。
「僕はネコミミとしっぽ。ツトムは?」
「僕はしましまのしっぽと耳だ。なんだろアライグマかなぁ。家の家族はみんな同じだよ。
お前のところは?」
「うん。僕の家はみんなネコミミだよ。お父さんはネコミミのままスーツを着て出勤していったみたいだよ」
「そうか。家のおとうさんもしましまの耳なんだけど帽子をかぶって行った」
「なあ。ミヨコちゃんはどうなんだろ」
「お。そうだな。じゃあ遊ぶか。電話してみる。僕スマホ買ってもらったから」
「いいなあ。じゃあ何時?」
「そうだな。僕の家に10時かな」
「うん。わかった」
と言い電話を置いた。
☆☆☆
かあさんはパートで仕事に出るので、お昼のお弁当を作ってつくってもらっていた。
すぐに時間だと言いながら家を出て行った。
僕は1人っ子だ。誰もいない。スマホほしいなと思いながらテレビをつける。
チャンネルを変更すると、うさ耳の男の人が番組の司会をしていた。
隣には同じくうさ耳の女の人が司会の男の人の隣でしゃべっていた。
ゲストの人もそれぞれ犬のような耳の人と、ネコミミの人と、あと髪の毛が変な人がいた。
人のような細い髪の毛ではなくて、トリの羽毛のようにふわっふわの髪になっている男の人と
女の人がいた。
そして、なんかおかしい。男の人は番組の収録中なのに女の人のふわっふわの髪をさわってなでていた。
☆☆☆
10時ちょっと前に近所のツトム君のところに遊びに行くと、ミヨコちゃんはもう来ていた。
ミヨコちゃんはさっきテレビで見たようなトリの羽毛のような髪の毛をしている子になっていた。
「ねえ。これどう? 髪へんなの。なんか羽毛になっているの」
「ねえ。さわっていい?」
僕は聞いた。
「うん。いいよ。なでてみて」
ミヨコちゃんは頭を出してくる。
なでなで。
なでなで。
ふわっふわだ。
そとでなでていると、風がふいてきた。
「うわ。寒い。早く。出て来てくれないかな」
呼び鈴を押したが出てこなかった。
そして。
がちゃ。
やっと出てきた。
顔をしかめていた。
「入って」
「ん」なんか何かをぶつけたみたいに痛そうな顔をしているツトム君。
「ねえ。どうしたの?」ミヨコちゃんはツトム君に聞いた。
「ああ。さっきドアにしっぽをはさんじゃった。痛かったんだよ。しっぽ邪魔だな」
「えー。そうなの? そんなに痛いの」
「うん。ソウタはネコだろ。しっぽ挟むなよ。たぶんどこかで挟むぞ」
「わかった。注意してみる」
しっぽの動かし方が良く分かっていないから僕はしっぽを手でたぐりよせて自分の体にまきつけた。
これで良し。
2階のソウタの部屋へ行く。
「お菓子とジュースを持ってくるから」
ソウタは部屋を出て行った。
「ねえ。羽はあるの?」
僕はミヨコに聞いてみた。
「うん。小さいのが背中にあるの。でも服の中」
さわってみたいと思ったが女の子だし…
「ねえ。お耳さわっていい?」
ミヨコが言う。
「うん。いいよ」
ミヨコはネコを飼っている。
ミヨコは僕の頭をなでて、僕の耳をさわってきた。
「うわあ。くすぐったい」
「本当にネコミミね。耳の中に毛も生えているし…そーれつんつんと」
つんつんしてきた。
「うわ」
「おもしろーい。つんつんすると耳がぴくぴく動くよ。じゃあ。しっぽ」
ミヨコは僕のネコのしっぽをわしずかみにした、そしてなでなでしてしっぽを先っぽのほうに向かってしごいた。
しごくと触っているのがわかる。
なんか変な感じ。お尻でもない脚でもない背中の下のお尻の先端から先に感覚がある。
「あ」しっぽの先をミヨコちゃんがさわると変な感じだったのでしっぽを思わず動かした。
動かせた。
「ごめんね」ミヨコちゃんが言う。
「いや。初めての感覚だったからびっくりしちゃった」
お尻の先の筋肉に力をいれるとしっぽを動かせた。
後ろを見てしっぽが動くのを見る。
右。左。
右。左。
上。下。
しっぽの先っぽだけ上。
試しに、自分のしっぽで自分の頬っぺたをかきかきしてみた。
お。いいなこれ。手を使わなくてもいいぞ。
ツトム君の家でゲームをして遊ぶ。
両手はコントローラを持つのでふさがっているが、たまに頭がむずがゆくなったらしっぽでかきかきした。
普通にしっぽを使えるようになってきた。
ツトム君はゲームで負けるとしましまのしっぽを床にびたんびたんと打ち付けてくやしがった。
お昼になった。
昼ごはんは自分の家にあるのでいったん帰ることにした。
午後は近所の大型スーパーへ出かけることにしていた。
☆☆☆
お昼ご飯を食べてお皿を洗い、午後1時にツトム君の家の前に行った。
ミヨコちゃんはもう来ていたが、なかなかツトム君は出てこない。
待っているとやっと出てきた。
「ごめん。またしっぽを自分の部屋のドアにはさんだ」
「うわぁ。痛そう」
ミヨコちゃんはツトム君のしっぽをなでなでする。
「しっぽ太くなってないか?」ツトム君が言う。
「うん。どうだろう。アライグマのしっぽだからソウタ君のしっぽより太いけど」
ミヨコちゃんは僕とツトム君のしっぽを見ながら言う。
大型スーパーまで行く途中。公園の近くを通ったとき、ばさばさとカラスがそばに降りて来た。
「きゃあ」ミヨコちゃんが後ずさった。
「あれ。怖い」
僕にしがみついてきた。
「え。カラス?」僕はカラスを見て手で追い払った。
カラスは飛んで行った。
「なんで?」
僕は聞いたけどミヨコちゃんは「なんでだろ。昨日までは気にならなかったのに…
襲われると思ったの」
「そうなんだ。きっとこのせいかな」
ミヨコちゃんの頭をなでた。
ふわふわの頭。
「そうかもね」
途中にそういうハプニングがあったが…
大型スーパーについた。
大型スーパーの入り口。人はそれなりにいる。
「ねえ。ペットショップに行かない?」
ミヨコちゃんが言った。
「うん。じゃあその次にゲーム見ようぜ。今日買おうと思ってて」
「うん」
いいなツトム君。父親の職業が公務員だからお金あるし…
ペットショップの店員の人も耳が生えていた。
僕と同じネコミミだった。
しっぽも器用に使って仕事をしている。
しっぽでほこりキャッチャーを握りしめてハムスターがいるかごを拭いていた。
両手には2つのほこりキャッチャーを持っていて同時に3つのハムスターのかごを掃除していた。
サークルの中。ふれあえるようになっていた。
子犬とネコ。子猫がいる。
サークルの中で座っているお姉さん。
子犬を抱っこしている。
子犬の毛並みとお姉さんのお尻から生えているしっぽの毛並みは同じだった。
ネコは床にいて、たまに動くお姉さんのしっぽにじゃれついていた。
「こら。これはネコジャラシじゃないの」
自分のしっぽを上に持ち上げてネコに言う。
びたんとお姉さんがしっぽを床に下すと、しっぽをちょんちょんするネコ。
お姉さんがお耳をぴくぴくさせた。
ネコがそれを見ていて、お姉さんの頭に飛び乗った。
「きゃあ」
びっくりして両手でネコをかかえて下す。
ちょんちょんと前足でお姉さんの犬耳をさわっているネコ。
「これもだめ。もう」
お姉さんは立ち上がった。
しっぽはふりふり左右に大きくゆれている。
動物好きなお姉さん。ネコにあそばれて嬉しそうだ。
ふりふり左右に動くしっぽ。
今度は人間の子供がしっぽを後ろに引っ張った。
「きゃあ」
びっくりして後ろを見る。
「ああ。ごめんなさい。しっぽを後ろにひっぱったらダメでしょ。お菓子買うのやめた」
その子のお母さんが言う。
「えー。ごめんなさい」
その子はすぐに謝った。
「いいの。ねえ。しっぽは引っ張ったらだめなの。わかった?」
「うん」
僕は別の店員のほうを見た。
うさ耳の店員の人だった。
耳が後ろとか前とかに動いている。本物のウサギみたいだ。
また耳が後ろに向き、方向転換をしてたなの後ろの方へと歩いて行った。
「どうしたの?」
声が聞こえる。
「え? 聞こえたんですか」別のアルバイトの店員らしき人が言う。
「在庫がないのに気が付いて小声でぼそっと言っただけなのに」
「うん。良く聞こえるから」
なんかすっかりとけこんでいる。
☆☆☆
短い冬休みは終わり、学校へと行く。
先生の頭には見たことがないミミが生えていた。
「みんなもアニマルガールとボーイになっているな。先生の耳は何の動物かは不明だそうだ。めずらしいものでもない10人に1人ぐらいはいるみたいだ。さあ。宿題やってきたか」
「げっ」
「もう回収するのか」
宿題は全部できていなかった。20問中16問ぐらいしかできていない。
☆☆☆
1月14日。
学校から帰ってくるとテレビをつけた。
するとニュースで未確認の物体が地面に突き刺さっているということを言っていた。
「宇宙から来たものではないかと言っていますがどうでしょう」
女のニュースキャスターがうさ耳の男の人に言う。
うさ耳がいろいろな方向に動く。
男の人は「私は誰かのいたずらかと思ったのですが、各国で同じような情報が入ってきています。
この町の高台のてっぺんにもあるという目撃情報がありますね」
「そうですね。危険なものかもしれないので触らないようにしてください」
☆☆☆
1月17日。
ニュースでこう言っていた。
「突如未確認の物体が地面に突き刺さっているというニュースを先日お伝えしましたが、その物体から垂れ幕みたいなものが出て来て映像を映し出したみたいです。現場の阿部リポータ」
「事件です。地面に突き刺さっている未確認の物体から垂れ幕が下がっているという情報があったみたいなので現場で確認をしていますが、さっき垂れ幕に映像が映りました。果物の映像ですが、刻々と果物の数が減って減っているようです。これはカウントダウンでしょうか」
「現場の阿部さん。ありがとうございました」
「ねえ。これなんだろ。この耳と関係ある?」
僕はかあさんに聞く。
「さあね。食べちゃいなさい。お皿を片づけてパートに行かないと」
「はーい」
ネコミミのときもそうだけどかあさんはあまり、驚いていない。
☆☆☆
1月17日。今日は土曜日が学校の日。
学校が終わってから、近くの高台に行くことにした。
ツトム君は家によってスマホと自撮り棒を持っていくと言っていた。
僕はミヨコちゃんと一緒に先に高台へと行くことにした。
☆☆☆
警察によって、テープで立ち入り禁止となっていて近くには行けなくなっていた。
人はまばら。
地面につきささった棒を見ていた。
垂れ幕は風でなびいていたが、映像が映っている。
何かの果物と思う絵が映っていてもう残り2個になっていた。
2個だ。と思ったとき、いきなり無くなって。別の映像が垂れ幕に写りだした。
「はーい(^O^)/。こんにちは。あたし達は宇宙人よ。近いうちにこの星に立ち寄るからよろしく。あと、あなた達の体を改造させてもらったから。あたし達の外観はいまのあなた達と同じように大きな耳としっぽがあるの。こういう人に慣れてもらうためにそうしたの。ごめんなさいね。もし気に入らなかったら、あたし達が来たときに言ってくれればいいからね。じゃあね」
「はい?」
いきなりだった。
「なにあれ。いたずら?」
ミヨコちゃんもぽかんとしていた。
さっきの映像はちょっとすると、同じものが垂れ幕に流れ始めた。
「待たせた」ツトム君がやっと来た。
「ねえ。あれあれスマホで撮影してよ」僕はツトム君に言う。
「なんだ?」ツトム君は動画撮影の準備をして自撮り棒でスマホを垂れ幕に向けた。
さっきと同じ映像が流れた。
スマホでどこかに連絡をしている男の人もいる。
だんだん人が集まってきた。
そのうちに大人の人が大勢やってきた、放送用カメラを抱えている人もいる。
阿部レポーターもやってきた。
「事件です。垂れ幕に映像が流れたという情報があったので現場に来ました。この映像は繰り返し流れています。本物の宇宙人が来るのでしょうか。これは年末の特番ではありません。現実のニュース番組です」
「すげえ。わくわくしてきた」ツトム君が言う。
☆☆☆
日曜日。
いきなり宇宙人がやってきたが、UFOが空に現れるのかと思ったが違った。
地上に人が転送されてきた。
「目の前に人が現れたんだぜ」男の人は犬のようなしっぽを振りながら言っている。
多数の人が目撃しているらしい。
外観は僕たちとそっくりだ。動物のような大きな耳をつけている。しっぽもある。
服装は違っているから現地の人と違うのがわかるらしい。
☆☆☆
1月末。
宇宙から来た人。2月のはじめには出て行くという。ただし地球に残りたいという人もいると聞く。
それと動物のような耳としっぽはやっぱりいらないという人も出てきた。
僕のまわりの人も元に戻りたいという人がいて、元に戻してもらう薬を注射してもらったという人がいる。
僕は結局便利なのでネコミミのままにした。
かあさんやとうさんも同じ。
ネコのしっぽは便利だからだ。
ツトム君は元に戻るといい、ミヨコちゃんはそのままという。
僕は隣を歩いているミヨコちゃんの肩をとんとんとしっぽで叩いた。
「なあに」
ミヨコちゃんはこっちを振り向く。
「ねえ。あれ」
ネコミミの男の人と女の人。
並んで歩いているが、体の後ろで2人のしっぽをからめている。
手をつないで歩いているかのようにしっぽをからめて歩いている。
男の人は両手に女の人の荷物と思われる買い物袋を持っている。
そして別のほうを見る。
買い物袋からこぼれたミカンを両手を使って広いあげているおばあちゃん。
ころがっていくミカンを尻尾で押さえている。
なんか、長くて細いしっぽを持っている人はほとんどそのままにしたみたいだ。
☆☆☆
「みなさんにあたらしいお友達を紹介する。こんな時期だけどな」
僕たちの学級にきつねのようなフェネックのような大きな耳をしている子が入ってきた。
来ている服から宇宙人ということがわかった。
「僕は家族がこの地球に住むことになったので、この学校に転入してきました。地球人のみなさんと仲良くなりたいです。日本語は覚えたてですがよろぴくおねがいしまふ」
ところどころ間違っていたが、いい子のようだ。
「よろしく」
「よろしく」
クラスのみんなが言う。
「なあ。すげえ。宇宙人のクラスメイトだぜ」
「ねえ。宇宙船持っているのかな」
「はいはい。質問」
普通の転校生が来たかのような感じに近かったが、こういうのも当たり前になるのかと僕は思った。
☆☆☆
転校生の子は、ソラという名前だ。
ソラは言った「ねえ。僕の家の近く?」
確かに住所を聞くと家の近くだ。
空き家があったな。あそこか。
「ねえ。学校が終わったら遊びに来る?」僕はソラを誘った。
ツトム君とミヨコちゃんも家へ呼ぶことにして学校の授業を受けた。
☆☆☆
「ちょっと待っててお菓子とジュースを持ってくるから」
僕はクラスメイトを部屋に呼び、台所へ向かった。
トレイにジュース4つとポテチを乗せて自分の部屋へと向かった。
あ。ドアを開けておくのを忘れてた。
僕はトレイを床に置こうとしてから…あ。しっぽがあるのを思い出した。
僕はネコのしっぽでドアノブを握り、両手にトレイを持ったままドアを開けた。
ある程度まで開けたら、足でドアを広げ部屋に入る。
「おまたせ」
部屋に入ってから器用にしっぽを使ってドアを閉める。
バタン。音がしてきちんとドアが閉まる。
「お。ネコの姿にも慣れたな」ツトム君は言う。
「いいなあその尻尾。便利だよね」ミヨコちゃんも言う。
「そうだね。僕はこのしっぽだから、お布団にするぐらいしかできないんだよ」
ソラはふっかふかの太いしっぽをゆらしながら言う。
「ねえ。この体なんだけど…君たちの種族にもこんな子いるの?」
僕はソラに聞いた。ネコのような耳としっぽ。それとミヨコちゃんのようなトリ。
そして最近までツトム君の頭に生えていたしましまの模様。
「うん。いるよ。地球にも似た動物がいるんだね。あ。先生なんだけど僕たちの住んでいる惑星にいる動物を元にしているんだけど、地球にはいないんだね。授業中に調べてた」
とソラは言った。
「だからか」
「そうなんだ」
「ねえ。そのしっぽ触っていい?」ミヨコちゃんがソラ君に言う。
「いいよ。ほら」ソラ君は自分のふっかふかのしっぽを前のほうに出す。
「僕も」
「僕も」
ミヨコちゃんがソラ君のしっぽをなでる。
僕も同じようになでる。
「ふっかふか」
「そうだね」
僕はその後、お気に入りの漫画をソラ君に見せた。
ソラ君は宇宙の技術のおかげで日本語も簡単に覚えたようだ。
まだ日本の文化には慣れていない。
「ねえ。この。タイムマシンって世の中にあるの?」
青い丸いネコ型ロボットが出てくる漫画を読んでソラ君は言った。
「いやないよ。このどこにでも行けるドアとかないよ」
「そうそう。あったらいいよね。あたしは中世の時代に行きたいな」
「僕は恐竜がいる時代」
「君のところにはあるの? こういったもの?」僕は漫画を見せた。
「えーとね。宇宙船はあるんだけどね。あ。通り抜ける輪っかみたいなものは使ってる。
ワープできるんだ。これだよ」
紐のようなものをポケットから取り出す。
それを僕の部屋の壁に貼る。
ちょうど人が通れるぐらいの大きさにして、ポケットから別のものを取り出してスイッチを押す。
すると、壁に穴が空き、見慣れた学校の廊下が映ったというか、壁の向こうが学校になっていた。
「なんだこれ。すげー」
「これがあったら遅刻しないね」
僕たちは壁の穴を通って学校へと行く。
学校についてから、紐を外すと入り口は無くなった。
もう一度紐を壁に貼ってスイッチを押すと再び僕の部屋へと通じた。
「すげー」
再び僕の部屋へと戻る。
「やっぱり、惑星の上ってのはいいね。ずっと宇宙船の中だったから…空気も違うね。自然を感じるよ」
ソラが言う。
「そうなの? ここは都会のほうだから空気も良くないと思うよ」
「うん」
「でもね違うよ。僕から言っておくけど、植物とか自然は大切にね。僕たちの惑星みたいに、植物が枯れちゃうようなことはしてほしくないんだよね」
と言った。
「そうなの?」
「うん。物を燃やしすぎたり。森林を伐採したり。自然を破壊したり…ダメだよ。と君たちに言ってもどうにもならないけどね。最低限ゴミを外にポイ捨てはしないとか。資源を無駄づかいしないようにするとかね」
「たしかにね。授業でも言ってたよ。どうすればいいのかな」
「そうだね。僕たちの持っている技術提供と。僕たちが過去に犯した過ちを地球の人に伝えて、政府とか国レベルでなんとかしてもらうしかないかな。このままだと地球温暖化だっけ。困ったことになるよ。海に近い都市が水没したりさ」
「えー。そうなの? 本当に水没するの?」
「うん。僕の惑星だと400年ぐらい前に水没する事件があったんだよ」
「どうなったの?」
「うん。わかってたから海に浮かぶように家を作ってた。地球の車のような乗り物はなくて、宇宙船ベースの車だったから道路はいらないし」
「宇宙船いいなあ」
ソラ君の地元のことも話した。
「今度、ソラ君の宇宙船もみたいな。あ。もしかして母船が行っちゃったら。宇宙へは行けないの?」
僕は聞いた。
「まあ。自家用の宇宙船はあるけどね。長期間の移動はできないんだ。移動距離や速度は限られているし。ワープできるのも。そうだね。ここから土星ぐらいの距離までだし…全然足りないよ」
「土星? あの輪っかがある惑星? ねえ近くで見たの?」
ツトム君は聞く。
「うん。見たよ。綺麗だったよ」
「いいなあ」
宇宙はまだこれからだ。
いつか連れて行ってもらおう。僕はそう思った。