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ゆめのおはなし

作者: TSUBAKI@m5

静かで懐かしい。


ここはわたしのよくしるたてもの

さんかいだてのしょうがっこう



おおきなしょうこうぐちをはいったら、げたばこがある

よんじゅうにんくらすがふたつ

これでひとがくねん

だから、ぜんぶでひーふーみー…いや、にかけるろくで、にろくじゅうに!

ぜんぶでじゅううにくらす

よんひゃくはちじゅうにんぶんのげたばこ


みぎおくにはろうかがあって、つきあたりにかいだんがある

かいだんのみぎがわにはおれたろうかがつづいてる

こっちがきょうしつ

かどをまがればみぎがわに、きょうしつにはいるとびら

ろうかをすすむ

かいだんのとなりはトイレ

そのさきは窓があるひろいくうかん

つきあたりにはわたしのだいすきなちょっとしたひろばがある

ほんがたくさんあって、そふぁがあって、ちいさなとしょかんみたい


みぎのよっつのきょうしつのドアはあいていて、

まるでほうかごのようなのに、だれもいない

おもちゃのようにちいさなつくえとちいさないす


つらなるきょうしつのおわりでは、ろうかがみぎにおれる

そのつきあたりにはもうひとつきょうしつがあって、ひだりがわにはかいだんがある


このたてものはコのじがたで、かいだんにはさまれてる

いっかいはいちねんせい、にねんせい。

にかいはさんねんせい、よねんせい。

さんかいはごねんせい、ろくねんせい。


にかいにはわたりろうかもあるけど、にかいはとおりすぎてさんかいへ

くる、くる、くる


あぁ、ナニか、いる。

ナニか、くる。


この先の廊下にも

背後の階段にも、

二階にも、一階にも。


誰もいない放課後のような静かな空間が、緊迫した騒がしさにくるりと反転する。

次第にそうなるのではなく、もともとそうであった場所に放り込まれたように。


意識が覚醒し、恐怖で体が強張る。全身から噴き出す脂汗に、ここから逃げろと脳内で警鐘が鳴る。

逃げろ。一階の昇降口まで。とっさに脳内で逃走経路を確保する。

このまま三階の廊下を通り、反対側の階段を駆け下りる。


三階の気配は徘徊しているようで、階段付近なのか、今は遠い。


残る数段の階段を昇り、角からそっと顔を出す。

四足動物の緑色のしっぽとおしりが遠ざかっていくのが見えた。

ふわふわとした上向きの尾が重力とどんな契約を結んだのかは知らないが、

おしりに対しても、恐怖は消えない。


教室のドアは開いているようで、そこに逃げ込みながら行けば、見つからないはず。

ぽっけに入っているミルキーを口に放り込み、廊下へ出る。


ひとつめの教室に入る。

誰もいない静かな部屋。

なぜか机の上にはミルキーが載っている。

きゅっと縛った部分を丁寧に横に向けて、几帳面に置かれている。

並んだ机の間を歩きながら、ミルキーを一つ取り、口に放り込む。

とろけたミルキーと硬いミルキーを一緒に咀嚼する。


ふたつめ…はっ!

急に止まったナニカに怖気を感じ、二つ目の教室の、後方のドアに滑り込む。




わっ!!!!!

声、声、声

外から見た時には誰もいなかったじゃないか…


逃げてきた恐怖と驚きで頭がごちゃごちゃになる。


教室には全ての机に児童がいる。

教壇には先生が立ち、授業をしている。

入ってきた私のことなど気にも留めずに流れる彼らの時間。


一番後方で身を縮める。机の脚の間から前の扉が見える。

あぁ、くる。


緑色の四足動物が入ってくる。あれも脚の隙間から私を見つけ、来る。

机にかけられ通路をふさぐ、鞄やらなんやらを軽々としなやかな動きで飛び越えて。

目の前へ。


それは狛犬だった。大型犬ほどの大きさで、恐ろしい彫の顔に、犬らしい満面の笑みを浮かべている。


怖くはなかった。

朗らかな笑みが私の恐怖を溶かした。

狛犬は私の顔を舐め、口の中を舐め、溶けて一つになったミルキーを奪った。


狛犬は物欲しそうに私を見たが、もうミルキーは持っていない。


じっとりとした恐怖、今すぐにでも逃げ出したい。

そんな私を癒してくれた狛犬。ありがとう。


ほんとはこの後も夢が続いて、階段を下りていくんだ。

でも、もう怖くないんだよ。狛犬さんのおかげ。


不思議リスト

・三階を徘徊するミルキー好きな狛犬さん

・几帳面に置かれたミルキー

・二階と一階にいたであろうナニか

・中に入ると人がいる教室

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