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8話 頑張り屋さんな金髪ギャル






 「あ……ありのまま 今起こった事をはなすぜ……!」


 「おれは、リリィの前で山を登っていたと思ったら、いつのまにか落ちていた」


 「な……何を言っているのか、わからねーと思うが、おれも、何をされたのか、わからなかった…」


 「頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ」


 「もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ……!」




 「ねぇ、一応遭難してるんですけど。緊張感足りなくない?」


 「馬鹿だなリリィ、こういう時こそジョ◯ョネタだろ。緊張感バチバチに張り詰めたわ、今にもDIOのスタンド攻撃がだな」


 「はいはい、わかったから少し黙ってて」


 俺とリリィは今、崖下にいる。


 山登りを終え、集合場所であるロッジに帰ろうと下山している途中、足を滑らせて崖下に落ちてしまった。


 崖下に落ちそうになったリリィの手を反射的に掴んでしまった俺も、一緒に転落したと言った具合だ。


 幸いリリィには怪我はなかったのでよかった。せっかく小雪の前でカッコつけたのに、リリィが怪我をしてしまっていてはカッコがつかない。


 というわけで、


 しっかり立てたフラグを完璧に回収し、数多くのラノベ主人公よろしく、俺たちも絶賛遭難イベントの真っ最中だ。


 「その……さっきはありがと、助けてくれて」


 「おう、気にすんな」


 スマホの電波は圏外だけど、さっきまで崖上にいた小雪に大声で助けを呼んでくるよう頼んだので、時間が経てば救助隊がくるだろう。

 コユキエルはじめてのおつかい、遭難救助編だ。重いな。



 山を登った後、下山途中だったこともあって、日は傾きオレンジ色になっている。


 リリィは不安そうに俯いている。ここは俺のトーク力でリリィの不安を消し飛ばしてやるしかない。

 これは自論だが、人と仲良くなる為の一番効果的な方法は、相手の長所を見つけ、そして褒めることだと思う。


 女性が言われて嬉しいこと……俺が最も知っている女の子、小雪をモデルにして考える。小雪になくて、リリィにあるもの。小雪が言われて嬉しいこと……なるほど。



 ……答えはでた。


 

 「リリィはおっぱい大きいよな!」


 「死ね」


 リリィの右拳が俺の顔面をクリーンヒットする。

 リリィはどうやら、かくとうタイプらしい。

 小雪のフェアリータイプに続き、あくタイプである俺とは相性が悪い、こうかはばつぐんだ。


 「冗談だリリィ、だからその左拳をおさめてくれ」


 計算通り、リリィの不安を払拭することには成功したらしい。かわりに激昂しているけど。


 「さっきのは冗談じゃなくてセクハラっていうのよ」


 「それに関しては世の女性たちに一言物申したい」


 「……ほう。聞くだけ聞いてあげる、暇だし」



 全国の健全な男児達よ、この金髪ギャルに、我々が常日頃疑問に思っている事をぶつけよう。


 なーに大丈夫、スマホは圏外だ、まさに陸の孤島、おまわりさんはやってこない。



 「女の子がよく言う、うわ〜〇〇くん筋肉すご〜〜い触らせて〜!に一言物申したい」


 「声真似キモっ……」


 「……男女平等が尊ばれる昨今の日本において、この発言はセクハラにあたるのではないでしょうか?立場を逆にすれば、うわ〜〇〇ちゃんおっぱいすご〜〜い触らせて〜となる。立場が違うだけで、これは明らかなセクハラだ」


 「いや……確かに筋肉触らせてって言う女子はよく見るけど、別にそんな変な事じゃなくない?おっぱい触らせてはセクハラだけど」


 罠に引っかかったな。


 「リリィくん!!その考え方が!ジェンダーギャップ指数毎年度G7最下位国日本という悲しい結果を招いているのだよ!!」


 「……はぁ…」


 「男女平等、全ては平等にしなければならない。右の胸筋を触りたいのであれば、右のおっぱいを差し出さねばならないのです」


 「……」


 「逆説的に、右の胸筋を差し出せば、右のおっぱいを触らせてもらえるという事、俺はこの日本という国に新たな法を提案する」


 「……」


 「名付けて!ハンムラビパイオツ法典!! 女の子のおっぱいを触っても自らの胸筋を触らせれば罪に問われない!これこそ真の男女平等! ジェンダーギャップ指数アメリカ越えを狙う為の唯一の方法だ!!」


 ピコンと、スマホの音が聞こえる。リリィの足元を見ると、スマホのカメラとばっちり目があった。


 「しっかり録画したから」


 「えっ?」


 「私、読モやってるんだよね、女の子のフォロワーとかちょー多いから、雨川の意見をしっかりみんなに伝えてあげるよ」


 1万リツイートはかたいね、とリリィはニヤニヤ笑っている。


 「いくらだ?いくらほしい……?」


 いま俺の口座にはお小遣いをコツコツ貯めた20万がある。社会的に抹殺される前になんとかしなければ……!!


 「お金はいらないよ」


 「まさか……俺の体を!?」


 リリィ恐ろしい子……っ!そういえばリリィの俺を見る視線、なにやらいやらしい気がしていたんだ。カレーを作るときも俺の背中をみて目をキラキラさせていたような気がする!

 あれはもう俺に惚れていると言っても過言ではない気がする。


 「キモ」


 過言だった。



 「お金も雨川の体も、いらないよ。……そうだ、今度肉じゃが教えてよ」


 「そんなんでいいの?」


 「アタシん家、昔から親いなくて、私が弟達のご飯とか作ってるんだよね。だけどなかなかうまくいかなくて……弟達は我慢して食べてくれるんだけど、どうせなら美味しいご飯、食べてほしいじゃん?」


 育ち盛りだし、とけらけら笑うリリィ。

 高校生で読モやってたり、不器用なのに家事が手慣れていたり、いろいろな要素が頭の中でつながる。


 「リリィの弟達は何人くらいいるんだ?」


 「5人、親の事情で、血は繋がってない子もいるけど、大切な家族だよ」



 血は繋がってない……か、俺と小雪のような、親が単身赴任にしているような家庭じゃないらしい。


 これは俺の予想でしかないけれど



 リリィはずっと頑張ってきたんだ。弟達を守る為に。




 「今度お前の家いくわ」


 「え?」


 「パーティしようぜ。肉じゃがとか唐揚げとか作ってさ、ハンバーグやグラタンもいいな。 小雪も連れてくからさ、料理教えるついでにとびきり美味い飯、弟達に食わしてやるよ」


 リリィの目がすこしだけ、水気を帯びる。


 沈んでいく夕日に照らされた彼女の笑顔は、小雪に匹敵するくらい、綺麗で魅力的だった。




 「雨川のこと、はじめてかっこいいって思ったよ」





 助けはまだこない。





 リリィと二人だけの夜がはじまる。

次話は小雪ブチギレ展開、リリィと二人きりの夜編です!


そして!日間ランキング4位にランクインしました!これも、読んでいた読者様のおかげです、本当にありがとうございます!


僕なんかがおこがましいんですけど、できれば日間1位をとりたい!…調子にのってすみません笑


評価、感想、ブックマーク等をいただけるととても嬉しいです!どうぞよろしくお願いします!

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