27話 お兄ちゃんと一泊二日の温泉旅行【中編】
少し冷たい秋の風が頬をなでる。
俺と小雪は軽く昼飯を食べ、温泉街をぶらぶらし、射的などで遊んだあと。休憩がてら足湯に浸かっていた。
「あったかいねぇ……」
「おう……」
目をつむる。湯がこぽこぽと落ちる音と、遠くで鳥の鳴き声が聞こえた。
しかし、今の俺の脳内は、侘び寂びや情緒とは全くかけ離れたものに支配されていた。
そう、混浴だ。
この温泉旅行には、泊まる宿プラス専用のお風呂、つまり貸切露天風呂がついているのだ……!えっちだ……!
俺には限界まで駄々をこねまくる小雪だけれど、親にはあまり駄々をこねない。
今回の、温泉旅行に行きたいという小雪のお願いは、本当に珍しい。はじめてわがままを言ってもらえて親父や舞子さんは嬉しかったみたいで、かなり奮発したようだ。
この温泉旅行のパンフレットを確認した時から、混浴のふた文字が頭から離れない。どうしよう、兄妹で混浴ってどうなの?普通なの?いや普通じゃないよね?スケべだよね?
しかしながらこの温泉旅行を予約したのは小雪だ。小雪はもしや混浴をよしとしているのか?
今回は温泉だ。前回、家のお風呂での水着での入浴は通用しない。モラル的にダメ!お兄ちゃん許しません!
もし、混浴するのなら、正真正銘、裸の付き合いだ。
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
「……すこし、川柳をしたためようとしていただけだ、気にするな」
「へぇー川柳かぁ……」
小雪はなにやらむむっと唸っている。俺が適当に言い訳につかった川柳を真面目に受けとめて、自分も川柳をしたためようとしてくれているのかもしれない。
すまない小雪……!お兄ちゃん混浴のことしか考えてないよ……!
「……お兄ちゃん、足湯でいっしょに、きもちいね。どう?」
「かわいい!20000点!国宝級の川柳だ!!無形文化遺産に登録すべきだ!!」
俺が混浴で頭がおっぱいおっぱいしてい……間違えた。
頭がいっぱいいっぱいになっていたのに、小雪は川柳をしたためてくれるなんて……なんて優しい子なんだ。
「お兄ちゃんも川柳してよ」
「……混浴は、日本の綺麗な、文化だね」
「お兄ちゃんなにいってんの……?」
まずい!!したためてしまった!!
混浴のことを考えすぎて……!したためてしまったぁ…っ!!
「混浴……したいの?」
「ふぇっ……?」
頬を少し赤らめた小雪が、俺の袖をキュッと握りながら、ぽそぽそと喋る。
はい混浴したいです!!!めちゃくちゃ混浴したいです!!
とは、兄のプライド(笑)的にも、言うわけにはいかないので、なんとか堪える。
「こ……小雪がどうしても、お兄ちゃんといっしょにお風呂に入りたいっていうならいいぞ!お兄ちゃんはどっちでもいいけどな!どっちでもいいけどなぁ!!」
「……」
さぁどうする小雪!!どんなふうに断る!? 俺はそのすべてをことごとく論破してお前と混浴するぞ!!
負けられない戦い!それはいまだ!!!!
小雪は耳まで、顔を真っ赤にして、俺に腰をくっつけてくる。
「お兄ちゃんと……いっしょに……おふろはいりたい……です……」
「ふべらぁっ!!」
「お兄ちゃん!?」
ど真ん中ストレートッッ!!
あまりの可愛さに喀血してしまう。
なるほど、なんの小細工もなしに俺の心を貫いてくるとは、小雪、恐ろしい子っ!!
「こ……小雪がそこまでお兄ちゃんといっしょにお風呂に入りたいなら、仕方がないな!仕方がないな!いっしょに入ろう!!」
「お兄ちゃん足湯が真っ赤になるよ!早くでて!」
俺の喀血で足湯を汚しそうになる。足をふいて、足早に宿に戻る。
宿に戻る途中も、俺は小雪との混浴で頭がおっぱいだった。いや、いっぱいだった。
宿に戻ると、机の上には豪華絢爛な料理が並べられていた。海老やら鍋やら、た……高そうだな。
「ご飯たべたら……おふろ、入ろっか……」
「お……おう!そうだな!」
美味しいはずの料理も、なぜか味があまりよくわからない。
いつもは賑やかな食事のはずが、今日は静かだ。
俺と小雪は、顔を赤くして、箸を進める。
俺、妹と、いっしょにお風呂に入ります。
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