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2話 お兄ちゃんは妹に興奮したりしない






 雨川ユウの朝は早い。毎朝6時には起床する。


 まずは手始めに洗濯機を回し炊飯器のスイッチを入れる、今日の天気は快晴らしい、洗濯物日和だ。


 洗濯機が回っている間に、前日つけておいた洗い物を片付ける。2人分の食器なのですぐに終わる。


 次に、冷蔵庫の中身をチェックし、朝食、弁当、そして夕飯の献立を考え、メモする。特売日の確認も忘れない。今日は豆腐が安いらしい。夕飯は麻婆豆腐に決まりだな。


 洗濯機が回りきるまで時間が少し余れば軽く掃除をする、掃除機をつければ愛しの妹が起きてしまうので、市販の紙モップでフローリングを綺麗にする。


 練馬の虎と呼ばれたこの俺から逃れられるホコリはいない、一つ残らず綺麗にする。


 そうこうしているうちに洗濯機がリズミカルなメロディーを鳴らし始める。


 妹の……お……おパンツとブラジャーは……その、危険なので、俺の部屋に部屋干しする。


 俺の部屋の窓がちょうど日当たり良好で部屋干しでもよく乾くからだ。


 他意はない。興奮もしない。


 そう、なぜなら俺はお兄ちゃんだからだ。お兄ちゃんは妹のパンツなんかでは興奮しない。


よって妹のパンツを自分の部屋で部屋干ししてもいいのだ。


 洗濯物を干し終えるとそろそろ、頃合。妹、小雪を起こす時間だ。


 部屋に入る、柑橘系のアロマの匂いと小雪の匂いが混ざったなんとも芳しげふんげふん!!お兄ちゃんは妹の香りで興奮したりしない。これは寝坊助な妹を起こすという大義名分があってだな……!


 「お〜い!小雪〜起きろ〜!!」


 「……うぅん……もう食べられないよぉ……」


 テンプレ寝言を言う寝相の悪い半ケツ妹を眺める。体が弱く、すぐ風邪をひくくせに布団まで引っぺがして寝てしまうのだ。

 寝相が悪くても、いくら布団を蹴飛ばしていても、ギリギリ大事なところは見えない、あくまでパンツが少しだけ見える程度だ。計算され尽くされた脱ぎ方のようにも思える。


 けれど俺は興奮しない、半ケツ妹の縞パンだろうと興奮しない。なぜなら俺はお兄ちゃんだから。


 ずっと眺めていたいところだけれど、始業時間は刻一刻と迫っている。弁当も朝ごはんも作らなきゃならない。


 ここは速攻魔法を詠唱するしかない。


 「小雪〜飯の時間だぞ〜」


 「おはよう、ユウ。今日の朝ごはんは?」


 「今日の朝ごはんはフレンチトーストだ」


 「わかった、顔洗ってくる」


 さっきの、もう食べられないないよぉ〜。とかいう寝言はなんだったのか。


 小雪が朝の準備をしている間にフレンチトーストを焼く、昨日の夜に準備していたので焼いて盛り付けるだけだ。弁当も、おかずは昨日の残り物、サラダと米だけ弁当につめる。


 「ユウ、何か手伝おうか?」


 「もうできるから皿並べてくれ」


 「あーい」


 皿にフレンチトースト、サラダ、ミニトマトを盛り付け、完成。おっと、小雪用の牛乳も忘れず用意する。


 小雪の涙ぐましい努力をお兄ちゃんは応援したいのだ。たとえ水泡に帰したとしても。


 「「いただきます」」


 小動物の様に食べる小雪を眺める。



 昨日、12年間想いをよせていた幼馴染が妹になった。



 想いを伝えようと、決意していたけれど、妹になってしまったのであればしかたない。


 どうせ想いを伝えたとしてもフラれるのは目に見えている。


 だから俺は、小雪にとって、最良のお兄ちゃんになると決意を新たにした。



 別に小雪の側にいられるならお兄ちゃんでもいいというそんな甘い考えではない。あくまで不可抗力だ。

 小雪だって、昨日お兄ちゃんになったヤクザみたいな奴から告白されるのは嫌だろう。


 「ユウ、そういや昨日の大事な話ってなんだったの?」


 「ぬぇ……えっと……その」


 「なにか言いたいことがあったんでしょ、今言っても大丈夫だよ、私はいつでも大歓迎だから」


 小雪ぃ……!なんて優しいやつなんだ!

 普通ならこんな目付きもガラも悪い奴が突然お兄ちゃんになったら文句の一つ、嫌味の一つも言いたくなるはずなのに……!


 「ほらいいなよ、さらっと言っちゃいな。深く考えることないよ。ルートはもう決まってるんだから、王道パターンの選択肢を選ぶだけだよ。幼馴染ルート確定だよ」


 何やら小雪がよくわからないことを言っている。小雪は頭がいいからか、たまに俺が理解できないようなことをぽしょりと言うのだ。

 いや、小雪も動揺しているんだ。俺に気を使って、隠しているけれど……!すまねぇ!!


 ここで俺は小雪が待ち望んでいるであろう言葉を告げる。


 「気にすんな小雪!そして安心しろ!これからはお前のお兄ちゃんとして、全力を尽くすからな!!」


 たとえ小雪に想いをよせていようと、お兄ちゃんになったからには、小雪にもう、邪な感情を抱くわけにはいかない。


 お兄ちゃんとして、そう!お兄ちゃんとして!!これからは小雪を見守ろうと思う。


 「ぬぁぁ……なんでそうなるの…!?」


 「どうした小雪!お腹が痛いのか!?100メートル走11秒台のお兄ちゃんが病院までお姫様だっこしてやろうか!?」


 「いい!別に痛くないし!」


 「えっ……あ!お兄ちゃんと一緒にパンツ洗ったのが嫌だったのか!?安心しろ、ちゃんと小雪用のネットに入れて洗ったからな!」


 「うっさい!ユウなんてもう知らない!!」


 「ッ!?」



 小雪は足早に食器を片付けて部屋に閉じこもる。まずい、初日から喧嘩なんてお兄ちゃん失格だ。なにが悪かったんだ……!?

 まさか!小雪のブラジャーのサイズをこっそり確認してしまったことがバレたのか!?

 小雪!違うんだ!正確なサイズを知っていないといざという時(小雪が胸のサイズをカサ増しするためのパット作り)のサポートがだな…!


 っ……失った信頼を回復するにはその場その場の迅速な判断が要求される……ミスは許されない……!


ここは小雪が大好きな俺の特製プリンで大逆転を狙うしかない!!


 こゆき、と描かれたネームプレートがかけられた部屋の前に立つ。


 扉に手をかけて勢いよく開く。


 「小雪!!お兄ちゃんのお手製!天使のふわとろプリンのお出ましだぞ!!」


 「えっ……!」


 「なっ……!」



 小雪はセーラー服に着替える途中だった。つまり下着、生まれたままの姿にかなり近い状態だということだ。


 小雪が頬を朱に染める。かなり控え目ながらも女の子らしい柔らかさをかろうじて感じさせるバスト。キュッとしまった腰回り、小ぶりだけれど妖艶さを醸し出すヒップ。スラッと伸びた足はまるで、長野県、国宝松本城に降り積もる新雪のように綺麗だった。


 「いつまで見てんのよーーーっ!!!」


 「ごめーーん!!!!」


 目覚まし時計が後頭部に当たる。


 安心してくれ小雪。


 お兄ちゃんは妹に興奮しない、絶対に……!!

次話は波乱の学校編です!


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