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11話 手錠で手を繋いでいる妹がおトイレに行きたいと駄々をこねだした件





 崖から落ちて遭難したのち熊に追いかけられ、ぶっ倒れるという波乱が過ぎる宿泊研修を経て、俺は入院生活編へと突入していた。


 診察の結果、背中の傷はそれほど大したことはなく、1週間ほどで退院できるらしい。


 特別なことはなにひとつない穏やかな入院生活である。となりにいる手錠で繋がれた超絶黒髪美少女義妹をのぞけば……


 「お兄ちゃん、あ〜ん」


 「あ、あ〜ん」


 「おいしい?」


 「……あぁ、おいしいよ」


 今日の昼頃から、心配性が加速した義妹によって手錠をつけられ、こうして甲斐甲斐しく看病してもらっている。


 しかしかれこれ1時間くらいリンゴをたべている気がする。もうお兄ちゃんお腹破裂しそう。


 愛しの妹、小雪曰く、『私のエサだけでしか生きられないのは萌える』だそうだ。


 幼馴染から義妹にジョブチェンジしたのはいいものの、特殊スキル、【ヤンデレ】を取得していないかお兄ちゃんものすごく心配。だって普通の兄妹は手錠つけて一晩を共にしようとなんてしない。……しないよね?


 「小雪……やっぱり小雪は家に帰った方がいいんじゃないか……? だって、付き添いで泊まるなんてたぶん看護婦さんに怒られるぞ?」


 「大丈夫だよ、私ちいさいし、いざとなったら布団の中に隠れればなんとかなるよ。」


 たしかに、スリムでコンパクトな小雪は引っかかる突起が無い為、布団の中に隠れても、違和感はそんなにないだろう。


 「なにか失礼なこと考えなかった?」


 「いえ、なにも」


 「まぁいいや、トイレとか行きたくなったら言ってね。」


 ……流石の小雪もトイレに行くときは手錠を外してくれるみたいだ。というかこの手錠どこで買ったんだ?すごい重厚感あるんだけど。


 「トイレに私もついてくから」


 「えっ……?」


 「どうかしたの、お兄ちゃん?」


 私、何か変なこと言った?といわんばかりに小首をかしげる小雪。可愛いけども、可愛いけども、天使だけども、いやマジで可愛いなオイ。


 しかし、可愛くても超えてはいけないラインはあるのだ。


 節度ある兄妹生活推奨委員会会長(自称)である俺は見過ごすわけにはいかない。


 「小雪さん、流石にトイレは一人で行きたいかなって」


 「えっ、じゃあ手首切る?」


 ねぇ怖くない?やばくないこの妹?


 「なんで手首を切るという発想にいたるのかね、小雪くん?」


 「お兄ちゃん、質問を質問で返すようで悪いけど、兄妹が離れ離れになることを許容できる妹がいるんでしょうか?」

 

 「いや……いるんじゃないでしょうか」


 「いいえ、いません。お兄ちゃんは間違っています。謝ってください。」


 「えっ……えっ……?」


 「謝りなさい」


 「ごっ……ごめんなさい」


 「よく謝れたわね、よしよし」


 小雪が俺の頭を頑張って撫でている。身長差的にもすこし厳しいのだろう。うん、可愛いしいっか。まぁ兄妹ってそんなもんなんだろう。


 「目を離すとすぐ崖から落ちて遭難して背中に枝が刺さったまま熊に襲われる兄を放っておけません」


 「いや〜解説の小雪さん、濃い宿泊研修でしたね〜」


 「はい、雨川選手にはラフプレー、もとい浮気が目立ちます。レッドカードが出ないよう気をつけてほしいですね」


 「……ちなみにレッドカードがでるとどうなるんですか……?」


 「12月24日を待たずして強制フライング義妹エンドですね。素晴らしいですね。」


 「なるほど……。」


 「まったく、雨川選手のヘタレっぷりに我慢しているんだから心配かけないでほしいですね。女の子を半年も待たせようとするなんてとんでもない鬼畜ヘタレラノベ主人公です」


 「……以上、解説の小雪さんからでした。」


 どうやら相当心配をかけてしまったらしい。心配する気持ちがブーストして一時的に過保護でちょっぴり攻撃的になりすぎているだけなんだろう。そうだと信じたい。




 小雪と茶番劇を繰り広げている間に陽が傾きはじめる。時間が経つのが早い。このごろ小雪とゆっくり過ごせなかったから余計に早く感じるのかもしれない。


 「ユウお兄ちゃん、体を拭く時間ですよ〜」


 「……お兄ちゃん、自分で拭けるから大丈夫だぜ?」


 「ユウお兄ちゃん、体を拭く時間ですよ〜」


 「んっ? 小雪さん?」


 「ユウお兄ちゃん、体を拭く時間ですよ〜」

 

 ド○クエの王様よりたち悪い無限ループ攻撃。レッドカードはまだ出したくないので仕方なくいうことを聞こう。


 「じゃあお願いしようかな」


 「は〜い、じゃあパジャマ半分脱がしますね〜」


 「ひゃん!やさしくてね……!」


 手錠をつけているので、パジャマをはだけさせて、隙間から濡れタオルをいれる。これ服脱いで拭くよりエロくね?


 「あっ……おにいちゃんのかたくておっきぃ……」


 「胸筋がですよね?小雪さん?」


 「まったく、後半戦が楽しみです」


 「下半身は自分で拭くよ?」


 小雪は手際よく上半身を拭いていく、こころなしか下半身にだんだん濡れタオルが近づいている気がする。


 らめぇ!ディフェンスライン超えないで!オフサイドになっちゃう!!


 「もう逃げられへんで!あんちゃん!」


 「なんで関西弁になってんだよ!」


 「ついつい楽しくて、ほら、最近一緒にいれる時間少なかったでしょ?あの金髪のせいで。」


 「リリィはいい奴だから仲良くしてやってくれよ。俺の高校はじめての友達なんだから」


 「向こうが人のものを盗ろうとしなければ仲良くできるよ」


 「そんなことしないだろ?」


 リリィは見た目金髪ギャルだけど物を盗むような悪い奴じゃないハズだ。


 「はーいおズボンぬぎぬぎしましょうね〜〜」


 「おズボンぬぎぬぎしません!節度ある兄妹生活推奨委員会会長の雨川ユウは許しません!」


 「お兄ちゃん、だめ?」


 超絶美少女ポケモン!コユキエルの小首をかしげる攻撃!こうかはばつぐんだ!!


 「だ……だめだ!」


 ギリギリ耐える。ほんとよく耐えれるよな。もうやめようかな、何も考えないで楽になりたい。


 「あともうひと押しね」


 心読まれてね?



 結局、ズボンの中に自分で手を入れて拭いた。隣で小雪が頬を赤らめながら見ていた。どういうプレイだよ。悪くないとおもっちゃった自分が怖いよ。






 夜がふける。巡回していた看護師さんをなんとかやりすごし、俺たちは同じベッドで横になっている。


 ドキドキして寝られる気がしない。


 「お兄ちゃん」


 「どうした?」


 「……落ち着いて聞いてほしいの」


 何やら深刻そうな声音で小雪がゆっくりしゃべる。もしかしたらなにか学校生活やそのほかで悩み事があるかもしれない。


 こういうのだよ!こういう相談にのってこそのお兄ちゃんだよ!


 ここ最近全然お兄ちゃんらしいことしてないので、ここはお兄ちゃんポイントを稼ぐ絶好のチャンス。逃すわけにはいかない!


 「……俺はどんなことがあっても小雪の味方だ、安心して、なんでも話してくれ。」


 「あのね……」


 「おう……」




 「おトイレに行きたいの……」



 「えっ……?」




 国民的アニメのナレーションが脳内再生される。



 後半へ続く。






次話はおトイレ編、後編です!


日間ランキング1位を目標に今後は最低1日2話投稿をすることにしました!評価、感想、ブックマーク等をいただけるととても嬉しいです!どうぞよろしくお願いします!

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