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1話 近いようで遠い







 春風が頬をなでる。桜が満開の帰り道を幼馴染と歩く。


 「ユウ、桜、綺麗だね」


 「あぁ、そうだな」


 「こーいう日は、なんだか桜餅がたべたくなるね」


 「……そうだな」


 彼女は綺麗な黒髪に桜の花びらをくっつけて、ふわりと笑う。


 隣を歩いている低身長美少女は俺の幼馴染、白石小雪。


 成績優秀、運動神経抜群、おまけに超がつくほどの美少女だ。少しちっこくて、体が弱いけれど。


 俺はこのラノベのヒロインのような幼馴染に、12年もの間、想いをよせている。


 告白のチャンスは正直何度もあった……2人きりで行った花火大会、福引で当たって行った東京ネズミーランド、イルミネーションを見にいったクリスマスの帰り道。


 情けないことに、俺はそのチャンス全てフイにしてしまった。


 怖かったんだ、小雪と離れ離れになるのが……。告白して断られれば、今まで通りの関係ではいられない。


 朝、小雪を起こしにいったり。

 夜中、お互いの窓を行き来して親に内緒でゲームしたり。

 小雪が好きなローストビーフを作ってあげることだってできなくなる。


 告白が断られれば、小雪は気まずさのあまりきっと俺から距離をとるだろう。当然だ、今までが奇跡だったんだ。


 小野小町も裸足で逃げ出すような黒髪美少女と、ヤクザに間違われるほど目つきとガラの悪い男。まさに月とスッポン。水と油。


 けれど、そのどっちつかずの関係に俺は今日終止符を打つ。


 俺は小雪に告白する。12年の片想いに、終わりを告げる。


 フラれるのはわかっている。俺みたいなヤクザ紛いの男、小雪のような美少女が好きになるはずがない。


 ……でももう決めたんだ!小雪に対して、俺はもう嘘はつかないと!真正面からぶつかると決めたんだ!


 「どうしたのユウ、そんなしかめっ面して」


 「なっ!なんでもねぇよ! 」


 「ユウは昔っから考えすぎる癖がある、思いたったらすぐ行動。じゃないと幸せ逃しちゃうよ?」


 その通りだ、俺はいつも考えすぎて行動に移せない。思い立ったら即行動だ……!


 「……あのさ、小雪……今日の夜、暇か? 」


 「えっ……暇……だけど……!」


 小雪の頬が朱色に染まる。熱があるのかもしれない、きょうの晩御飯は滋養のつくものにしよう。


 「あの、その……っ大事な話あるから……俺の部屋に今晩来てくれないか……?」


 「……うん!絶対行く!!たとえ地球が滅びようともかけつけるよ!!」


 「地球が滅びそうな時は俺に言え、隕石なら金属バットで打ち返してやる」


 「へへっ!りょーかい!」


 誘って……しまった!!!もう後戻りはできない……!



 他愛のない話を小雪としていると、いつの間にか家についた。


 「なんでくっついてくるんだよ」


 「ユウ様お手製のプリンが食べたくて」


 「……台所で待ってろ」


 「はーい!」


玄関で靴を脱いで、小雪用のスリッパを出してやる。家をよく行き来するので小雪用の歯ブラシやらシャンプーやらタオルやらいろいろと俺の家に置いてあるのだ。



 「ユウ、早かったな」


 「今日は入学式だけだから午前中に終わるって言っただろ」


 親父がリビングから顔を覗かせる。出迎えなんて珍しいな。


 「おじさんおじゃましてまーす」


 「いらっしゃい小雪ちゃん、ちょうどいいところに来たな。ユウも小雪ちゃんも、リビングに来てくれ。大事な報告がある」



 大事な報告?まさかまた海外赴任が決まったのか?


 俺の親父は職業柄よく海外へ行く、去年までは2年間ブラジルに居た。俺の鍛え上げられた家事スキルは長年の一人暮らしによるものだ。


 親父の後をついて行くと、テーブルに小雪の母、舞子さんが座っていた


 どうやら海外赴任の話で間違いなさそうだ。親父が海外赴任している間、俺は舞子さんによくお世話になっている。お願いついでに食事でもと、呼んだのだろう。


小雪とテーブルにつく、親父が重たい口をようやく開いた。




「単刀直入に言う、俺と舞子さんは結婚することにした」




「「え?」」




 俺と小雪の声が重なる。



 「そして今度は仕事の関係で3年間のイギリス赴任も決まった、舞子さんとイギリスで一緒に住もうと思う。お前たちも一緒に連れて行こうか悩んだんだが、高校も決まったことだし、すぐ違う環境は不憫だと思ってな、この家は残しておくから兄妹仲良く使ってくれ。」




「「は?」」



 「これからは兄妹同士、仲良くするのよ、小雪」


 「えっ!ちょ!!ママどういうこと!仲良いとは思ってたけど結婚までは予想できなかったよ!?」



 「いくら小雪ちゃんがべっぴんさんだからってこれからは妹なんだからな、ユウ、お兄ちゃんらしく、小雪ちゃんを守ってやるんだぞ」


 「おいまてクソ親父…!なんでそんな大事なこともっと早く言わなかったんだよ……!!」


 「ほら小雪!新しいお兄ちゃんに挨拶しなさい!」



 「えっ……あっ……よ、よろしくね、お兄ちゃん」



 「よ……よろしく……じゃねぇよ!!クソ親父!ちゃんと説明しろ!!!」





 悪夢だ……。


 告白しようと思っていた幼馴染が……。




 妹に、なるなんて……!!

初投稿です…!毎日最低1話は投稿しようと思ってます!


評価、感想、ブックマーク等をいただけるととても嬉しいです!今後ともよろしくお願いします!

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