突然の宣告
警察署では緊急会議が行われていた。事態は最悪の方向へと向かっていた。今朝の一面はこの記事がどの新聞も独占していた。
『都市部の全銀行で爆発火災発生』
昨夜、最初の爆発は午後七時。突然の大爆発が起こった。それに続くかのように次々と連続して爆発が起こる。その数およそ十。
すべての銀行が爆発火災により全壊している。会議室には白鳥を始めとする上層部の者達が集まっている。皆、事の重大さに気付い
ているようで誰も喋ろうとしない。その沈黙のなか、ドアが開き、一人の男が入ってくる。
「お待たせしました。MARBLEの逢瀬と申します」
逢瀬は今回の事件について話し始めた。
「この連続爆発はあの男の、クロノスの仕業です。十もの銀行を全焼するのに、三十分も掛か
っていない。」
クロノスとは時人の呼び名のことである。『時の神』にちなみ名付けられた。
「そして、もうひとつ。この件は、我らMARBLEに任せて欲しく、参りました」
「どういうことだ!」
白鳥が怒声を上げる。しかし、逢瀬は冷静に答える。
「貴方達の手では負えない、ということです」
その言葉に反論するものはいなかった。白鳥も黙っていた。
「クロノスがここまで行うとは予定外でした。すべてを我らに任せてくれませんか?これが詳
しい資料です」
逢瀬の出した紙には今後、警察署における全ての権限をMARBLEに委託する、といった内容である。
「ふざけるな!こんな事が許されるか!」
白鳥は机の資料をばら撒き、逢瀬の胸倉を掴み、壁へと叩き付けた。逢瀬は動じずにいる。
「貴方達凡人が手に負える相手ではない。それは貴方が一番分かっているのでは?」
そうである。クロノスの件は責任者である白鳥が一番よく分かっているのだ。自分達ではどうすることも出来ないのを。
「では、これにて失礼します。よい返事を期待していますよ」
彼らに残された道はひとつしかなかった。
逢瀬はある男の前にいた。
「そうか、よくやった逢瀬よ。ご苦労だった」
「して、クロノスはどう致しましょうか?」
男は考えているように手を回したり、首を鳴らしたりしている。
「私が行きましょうか?」
「いや、デクテットのお前が行くことはない」
「分かりました」
「そうだな、こいつ等を行かせよう」
男は逢瀬に四人の名簿を渡した。どれも実力は中の中である。
「当て馬ですか?」
「まぁ、そういう、ことだな」
男はそのまま眠りについた。逢瀬はその名簿を取り、その場を去った。




