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ショータイム

未だカメラ映像の時間表示の謎を解き明かそうと孤軍奮闘している白鳥。ここを離れるつもり


はない。この謎を解くまでは。だが、その決心は以外にも簡単に破られた。それは田辺が急い


でドアを開けたことから始まった。


「白鳥警部。来て下さい!」


田辺は急いでいる様子だった。映像に集中している白鳥は田辺を見ずにこう言った。


「今、忙しいんだよ。後にしろ」


「その映像の犯人から犯行予告の手紙が来たんです」


「なんだと!」


すぐさま立ち上がり、田辺の後を付いていく。


「これです」


白鳥、田辺のほか五人の部下でその手紙を見る。手紙の内容はこうだった。


『私は東帝銀行強盗の犯人である。いまだ捕まえてくれない諸君らに感謝する。さて、この手


紙を出したのは他でもない。これは犯行予告状だ。明日の午後十時。東帝宝石店の宝石をすべ


て頂く。それだけだ。都内の警察官を総動員することを勧める。しかし、意味がないだろう。


これは劇だ。どれだけ私を楽しませることが出来るかというショーに過ぎない。君たちの活躍


に期待している、市民の安全を守る警察官諸君。


追伸 第二の予告 私は堂々と正面玄関から侵入する。そして、君たちの見ている前で宝石を


頂く。これは絶対だ。信じるか信じないかは君たちの自由だ』


内容は挑発的。しかし、東帝銀行の強盗犯と言うなら話は別だ。白鳥はすぐに明日のための準


備に取り掛かった。






 夜九時五十分。東帝宝石店の前には白鳥と田辺が厳重警備を敷いて待ち構えている。総動員


してこの宝石店を警備している警察官たち。あの予告状通り、銀行強盗と同一人物ならそれ相


応の警備だろう。


「まだ来ませんね、警部」


時間は刻一刻と迫っている。しかし、一向に来る気配は無い。再び、予告状の文面を思い出


す。『意味がない』『これは劇だ』など、どれも白鳥を挑発するには十分だった。その熱に押


されて本部もこれほどの警備を任せてくれている。それもあるが、東帝銀行の金を全て奪った犯人が相手だからでもある。絶対に捕まえる。白鳥の心にそれ以外はない。




「諸君、こんばんは」


そんな言葉がどこからか聞こえた。だが、その声の主はどこにも見当たらない。声だけが辺り


に響いている。まるで天から聞こえているような、集音機を使ったような声。


「これほどの警備。感謝する。私もうれしい限りだ」


「どこだ!姿を現せ!」


白鳥は拳銃を取り出し、周りに向け始めた。ちょうど真正面、白鳥はそこに違和感を覚えた。


何かが動いている。そこに拳銃を向け、照準を合わせる。暗い闇の中、何かが確かに動いてい


る、近づいている。


「さぁ、ショーの始まりだ」


その言葉の直後、白鳥の目の前に白金で薄気味悪い仮面が現れた。しかし、そこには仮面以外


に何もない。ただ、仮面が宙に浮いているだけだった。


「止まれ!おい、あそこにライトを当てろ!」


白鳥の指示で数個のライトがその仮面を捉えた。そこにはひとつの影があった。それは仮面を


かぶった影。黒いコートを羽織っており、黒いズボン、黒い靴。全てを黒で染めて、仮面だけ


が白金である。それゆえ仮面が浮かんでいるように見えたのだ。白鳥は感覚で分かっていた。


この仮面の男こそがあの予告状の差出人だ。少しの沈黙の後に仮面の男が動き出した。白鳥の


拳銃にも全く怯えることなく、徐々に近づく。それにつれて他の警察官も銃を構えて向け始め


る。


「冷静な判断だ。指揮官よ。お前がここの頭のようだな」


仮面は低い声で言い白鳥に向かって拍手を始めた。拳銃に怯えることなく、大人数に怯えるで


もなく、ただ、面白がっていたのだ、この仮面の男は。


 銃声が二回、夜の闇に響き渡った。刹那、白鳥は恐怖を感じた。それを感じたときには遅か


った。体が動かない。動かすことが出来ない。自分の意思とは違い、別の人間の体のようにま


ったく言うことを聞かない。それは仮面の男を除いた人間全員だった。遠くに見える通行人で


さえも止まっている。さらに驚くことに仮面の目の前で白鳥が打った銃弾が空中で止まってい


る。その仮面の男が銃弾に軽く触ると銃弾は地面に落ちた。


「ゆっくりと見物しているのだな。犯人が悠々と闊歩するのを」


仮面の男はゆっくりと宝石店の中へと向かった。すこしでも顔を覚えようにも体はおろか、顔


も瞳も動かすことが出来ない。



 数分後、黒い袋を抱えた仮面の男が出てきた。その中にはこの東帝宝石店全ての宝石が詰ま


っている。それを見ることしか出来なかった白鳥の心は怒りに染まっていた。


「さようなら、警官の諸君」


仮面の男はビルの間に姿を消した。その後、しばらくしてから体の自由が利くようになった。


そして、周囲5kmを警察官全員で仮面の男を捜した。パトカーを駆使しても空からヘリで探


しても見つからなかった。結局また、捕まえることは出来なかった。








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