仲間と仮初の姿
私立・赤羽大付属学院高等部。都内屈指の有名進学校にして生徒数二千名を超えるマンモス
校。進学校であるが、スポーツが盛んで全国大会出場をする部活動も数多く存在する。学年ご
とに学習棟が別れており、特別教室や総合実践室などの専用棟も存在する。生徒と教職員も寮
生活をしており、完全なセキュリティで生徒と教職員の安全を守っている。部活動では、専用
野球場。人工芝サッカーグラウンド。ラグビー場。テニスコート。ラクロスなど、屋外活動を
する部全てに専用グラウンド、屋内スポーツでは一つの部に一つの体育館が設置されている。
文化部でも同様に一つの部に一つの部活棟が存在する。
このように全てが規格外の高校に籍を置いている男は仲間と共にある文化部を拠点として使っ
ている。その文化部が『茶道部』である。
部活動内容としては「お茶の世界に関心を持つ」これは表面的だけであり、本当の目的は、
男のするべき『大きな事』の拠点ということだけである。
男は一番乗りに部室に入ったつもりだった。しかし、もうそこにはアキラと聖児がいた。
「なんだよ、ビリかよ」
男は残念そうに定位置のイスに座る。この男こそ主人公である。
大神 時人 十八歳。地面まである金色の長髪と真紅の瞳が特徴の問題児。「自分が最強」と
いう思考が常に頭にある。制服の背中部分に金で模った時計の刺繍が施されている。袖丈が半
分しかなく、着丈が異常に長く、ふくらはぎの部分まである超特徴的な制服を着ている。シャ
ツにも様々な刺繍が施されていて、時計やギリシア数字、ローマ数字などといったものまで刺
繍されている。とにかく外見が派手なので一目見たら忘れられない存在である。容姿端麗。博
学博識。スポーツ万能。非の打ち所のない人間である。
「時人、昨日の金はどうした?」
時人に最初に質問したのはアキラだった。
天王寺 アキラ 十八歳。時人の幼馴染。青白い髪とメガネで端麗な顔つき。武士の家系に生
まれ、幼い頃から剣術を学んでおり、剣道部部長。誰もが尊敬する生徒の模範として生徒会に
も在籍している。
「そうだぞ、時人。独り占めするなよ」
横槍を入れるのは聖児だ。
北条院 聖児 十八歳。幼馴染で時人と同じく問題児。赤色のオールバックで黒のメッシュを
いくつか入れている。ピアスやシルバーアクセサリー等も好み、大量につけている。制服を着
ておらず、いつも私服で学校に来ている。
この三人には学院側も頭が上がらない。それほど驚異的な存在である。
「大丈夫だ。ちゃんとここにある」
そう言って、時人はロッカーのひとつを開けた。その中はロッカーではなく、通路になってい
た。
「付いてこいよ」
アキラと聖児は言われるとおりにその通路を時人の後に続いて歩く。その通路の先は、大きな
部屋になっていた。天井も高く、奥行きもある。全てが黒を基調とした色になっており機械も
数多く設置されている。機械の光や不気味な音だけがこの部屋を支配していた。
「なんだこりゃ?」
「秘密基地だ」
聖児の質問に当然のように答える時人。見た目はたしかに秘密基地だ。部室から繋がっている
とはいえ、ここには目が行き届かないだろう。
「ここに、盗ってきた金やら宝石を保管する。そのほか様々なこともここで行う!」
「なるほど、確かに見つかりにくいな」
アキラは改めて時人が真剣なのを確信する。そして、部屋の中で動くものを発見した。
「誰かいるのか?時人」
「あぁ、水華だ」
時人が手招きで呼んだ女の子が姿を現した。
井伊奈月 水華 十八歳。 身長が142cmしかなく、子供のような外見をしている。肩ま
で伸びた茶髪で髪飾りを付けている。一言で彼女を表すと「天才」だ。とにかく時人でさえも
考えていることが理解できない。
「水華には、ここの管理をしてもらうことにした。俺たちのサポートと」
時人はそこで言葉を止め、あたりを見渡している。何かを探しているようだ。
「どうかしましたか?時人さん」
時人のすぐ後ろに女の人が立っていた。水華ではなく、別の女性だ。
「アネモネ、どこにいたんだよ」
「水華様の下着を・・・・・」
その言葉を遮るように水華がアネモネの顔面を殴る。しかし、アネモネの顔には傷ひとつ付い
ていない。
「要らんこと言うな!バカ!」
すっかり機嫌を損ねた水華。必死に誤るアネモネ。だが、アネモネの表情は変わらない。
アネモネ=ルィ=スカーレット=ヴァンドール 三歳。アネモネは水華の作ったヒューマノイ
ドである。水華が身の回りの世話をさせるために作ったらしい。しかし、高い身体能力や飛行
能力などどうでも良いオプションも付いている。表情の変化や感情表現が苦手らしい。
時人、アキラ、聖児、水華、アネモネの五人は元の部室に戻って今回の作戦について話を始
めた。今回のターゲットは全国的に有名な宝石店である。そこを狙うにあたって時人からある
提案があった。
「いいな、それ」
「乗った」
アキラも聖児も賛成している。水華はそのことはすでに知っている様子で何も言わない。
「でだ、今回は俺一人で行こうと思っている」
それから時人は楽しそうに考えた計画を話し始める。実に単純で、それでいて完全に安心でき
る作戦がそこにはあった。




