最終決戦
時彦が「並行支配」を解いた時には時人の目の前には時彦とヴァイスの姿はなかった。アキラと聖児の前に現われてこれまでの
経緯をすべて話した。もちろん、秘密以外のことをだ。
「マリアを守ってやってくれ。おれもできる限りのことはする。あと十日もない状況だ。
頼んだぞ。三人とも」
時彦は姿を消した。その後ろ姿は寂しそうだと時人は感じた。
帝は焦っていた。もう取り返しのつかない事態まで迫っていた。先日、ついにマリューセル家の遺産がマリアのものとなったとの
ニュースが流れた。残るデクテットも五人。半分失い、さらにアインであるヴァイスが死んだことは大きかった。
「もうよい、全て失敗だ。しかし、まだやることは残っている」
これから五人と帝はある凶行に出ることになった。
文化部の部室のニュースが流れていた。そのニュースは世界の常識を全て覆すような出来事だった。
『全国の警察官による殺人、強盗、誘拐などの連続事件勃発』
昨日の夜に起きたことだった。それは言葉では表せられない。凄惨な光景の数々だった。しかし、妙な事が起こっている。夜の内に
様々な犯行が行われた。しかし、朝方になると、その犯人たちは誰もが自分の容疑を否認している。全員が夜の記憶を無くしている
というものだった。その直後、時人は眩暈に襲われ倒れ込んでしまった。
目を開けると、時彦が椅子に腰かけているだけの光景の前にいた。
「すまない、時人。大事な事を言い忘れていた。お前の能力についてだ」
「兄さん。今、大変なことが」
「わかっている。しかし、お前の能力のほうも大事だ」
「・・・・・わかった、教えてくれ」
「お前はもうすぐ『時の眼』を開眼する。それがいつか分からないが、『支配』とともに開眼することになる。それと、この事件の
仕業はMARBLEにある。ここに行け」
時彦が時人の頭に手を添えて情報を伝える。自分の経験した時を分け与えることができるのだ。これは双子の独特の能力。そして、
元の世界へと時人は戻る。そして、時彦の教えてくれた場所へと仲間とともに行くことを決心する。
時彦の教えてくれた場所は都心の中央部にそびえ立つ警視庁本部。そこの眼前にいる四人。
「デクテットは五人。俺たち全員を合わせると一緒だ」
「一人足りてないぞ?」
「あと一人には当てがある。期待してくれ。全員、生きて帰ろう」
四人は中央で手を合わせて再び会うことを誓う。それぞれが別々の場所から頂上を目指し走り始める。




