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頂点に君臨する者

 男は苛立ちを隠せないでいた。いつも吸っている葉巻も全く手を付けていない。指で机を叩きながら考え事をしている。




男の前には残りのデクテットが揃っていた。そこには逢瀬と四法院の姿もある。




「お前らの誰でも良い。マリアを殺してこい」




逢瀬は耳を疑った。最初は拉致してこいとの命令だったはずがなぜ殺さなければならない。




「お言葉ですが、拉致してくれば良いのではないでしょうか?」




「逢瀬、お前が言えた立場かな?」




逢瀬は黙るしかなかった。任務を失敗したうえ、生きて帰ってきたことはデクテットとしても恥ずべき行動だった。




「解散しろ。そして、すぐにでも殺しに行け」




一人になった男の部屋に一本の電話が入る。




「帝、マリアはまだ死んでないの?もう時間がないわよ」




「わかっている。今、手配した。安心しろ、絶対に殺してみせる」




「期待しているわよ」




男は電話を置いた。扉に目を向けると逢瀬がいた。




「何をしている。早く行け」




「やはり、殺さなければいけないのでしょうか?」




「そうだ、これ以上生かしておくと我らにとって害になる」




逢瀬は空気を固めて、男に向けて放った。それは頬をかすめて壁にひびを入れた。




「何の真似だ」




「俺はこの仕事に誇りを持っています。それを女性を殺すことで汚したくはない」




「闘うというのか?」




「あぁ、お前を殺す」




逢瀬は帝に眼の前まで徐々に近づく。帝は動こうとはしない。




「『お前は俺を攻撃することはできない』」




「できるさ」




殴りかかろうとした逢瀬は違和感を覚えた。腕が上がらない。それどころか空気をうまく操ることもできない。その逢瀬の腹を殴る




帝。




「『お前は吹き飛ぶ』」




体の意志ではなく勝手に後ろの壁へと叩きつけられる。まるで、帝の言ったままに体が行動している。




「お前の能力では俺を殺すことはできない。わかったか?」




今は空気を練れる。空気を固めようとすれば空気がなぜか逃げていく。自分の能力なのに言う事を聞かない。帝が傍まで近寄ってき




ていて殴りかかったが、辛うじて避ける事ができた。空気を後ろに向けて放ち、自分の体を飛ばした。




「厄介な能力だな。『お前は自分の体を守ることができない』」




帝が近づき、蹴りを入れた。それが見事に体に当たった。今度は空気を練ることもできなくなった。段々とわかってきた帝の能力。



しかし、すでに遅かった。




「『お前はこれを避ける事はできない』」




帝の手にしたものは拳銃だった。そして、逢瀬の心臓めがけて銃弾を放った。逢瀬は何もできなかった。空気を練ることも逃げるこ




ともできずに銃弾が体にめり込むのを見る事しかできなかった。そして、目の前が真っ暗になった。




 帝はもう動かなくなった逢瀬を見て笑った。大きく口をあけ、甲高い笑い声をあげながら。自分に適う者などいない。たとえクロ




ノスだとしても。この「能力」こそ最強だ。




沙羅帝。能力は『言霊』言ったことがそのまま現実に起こる。










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