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時の支配人

大きな屋敷。マリアは時彦と共に庭園を歩いていた。晴彦がここに来てからマリアには笑顔が戻っていた。マリアは遺産相続の話




が出てくる前にも不可解な事故により、何度もケガをしていた。しかし、晴彦をディガードに雇ってから事故は起こるものの、ケガ




などは一つもせずに今日まで無事でいられている。




「ありがとうね、トキヒコ」




「いえ、お嬢様の命を守るのが仕事ですから」




これからもずっと一緒にいて自分を守ってくれるとマリアは思っていた。しかし、別れは突然訪れた。それは父の容体がおかしくな




った頃だった。その頃になるとマリアは命を狙われる事は少なくなっていた。




「どうしてなの?なんで一緒にいてくれないの?」




玄関先でマリアは時彦との別れを惜しんでいた。




「申し訳ありません。ですが、もうあなたは大丈夫です。一人でも生きていけます」




「ですが・・・・・」




「もし、貴方の身に再び危険が迫ればこの男の元を訪ねてください。きっと貴方を助けてくれます」




時彦はマリアに一枚のメモを渡した。それには時人に関する情報が記載されていた。




「それでは、失礼します」




時彦はその後、マリューセル家を後にした。それから二度と、表の世界に時彦が姿を見せることはなかった。




 これがマリアの体験した時彦との出来事。時人にとってはとても大事な事だった。











 あれから一週間が過ぎた。学校の大破は予想以上に大きく、一時休校となった。部室棟は爆発から逃れており、時人たちは以前と




変わりなく使用している。マリアの遺産相続まで三十日を切っている。時人の様子がおかしかった。何を聞いても上の空で急に黙り




こんだりもしている。




 時人は兄、時彦のことを考えていた。会ったことも、話したこともない兄。時人はある場所へと赴くことにした。








 扉を開けると、いつものように一人の老人以外誰もいなかった。席に座り、注文をする。




「何の用かな?」




「兄貴のことを教えてくれないか」




老人は少し間をおき、ため息をひとつ。そして、店の奥へと消えていった。何分か経った後に一冊のファイルを持ってきた。それを




時人に向け広げて見せた。




「これが時彦じゃよ」




その写真に映っていた男は時人そっくりだった。本人でも見間違えるほどに。無言で写真を見ている時人に老人は言った。




「お前たちは双子じゃ」




「どういうことだよ。アンタ、俺は独り身だって。それが『時の支配人』宿命だと言ったじゃないか」




「少し、お前たちについて話してやろう」











 異能と呼ばれる中で最強の能力「時間支配」を操る一族。『時の支配人』彼らは世界に必ず、一人しか存在してはならない。一人




の『時の支配人』が子供を産んだならば、それで先代の役目は終わる。自らの時を消滅させ、この世にいたことの痕跡をすべて消




す。そして、残された子供は『時の住処』と呼ばれる代々、幼少時代の『時の支配人』を八つに成るまで育てられる。そして、成人




になり、子供を産めば、そこで人生を終える。それが『時の支配人』の掟である。




 しかし、ある特例のケースがある。それが双子の場合である。時人と時彦。彼らは初めての特例であった。その内容とは、どちら




か一方を「影」として、能力を剥奪し「陽」となるもう一方の『時の支配人』の支えになる事だった。




 生後間もない時人と時彦。兄の時彦、弟の時人。先代は特例に従い、兄の時彦を「影」に選んだ。そして、二人を『時の住処』へ




と預けた。ただ、二人は会うことなく八つになるまで育てたのだ。




そこである異変が起こったのだ。時彦の剥奪されたはずの能力が甦った。しかし、時彦は「影」である。それは絶対に変わらない。




時彦はあくまでも時人を守るために存在する。それが時彦の心の中にあるのだ。








 老人は話し終えた後にあることを伝えた。




「時彦は『時の眼』を開眼しておる。それも二つの支配とともに」




時の眼。『時の支配人』の能力を十二分に発揮する眼。通常の「時間支配」とは次元の違う四つの「支配」がある。それに一つでも




開眼したものは無類の強さを誇ると言われている能力。









 暗闇のさらに奥深くにある時彦の居場所。そこで空を見上げる時彦。そろそろ時人も目覚めるであろう。その時が来るまで少し暇



つぶしを考えた。





 時彦が向かったのはある男の元だった。その男は時人の命を狙おうと高等部の近くまで来ていた。




「ここにクロノスはいないぞ」




「誰だ?」




「お前を殺しに来た」




男はデクテット。 ノイン・リッターの和田博人。能力はなし。先程まで存在していた和田の能力は時彦によって消されていた。能




力だけではなく自分の記憶までも消した。




 これが「時の眼」の四つの「支配」のひとつ、「忘却支配」時を指定し、そこの起こった出来事を全て忘れ去る。




「お前はもう、自分が誰で何をするためにここに来たのかを忘れている。一生思い出すことはない。じゃあな」




時彦は廃人当然の和田をそのまま放置し、再び暗闇へと消えた。






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