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時人と時彦

 部室にいる水華もマリアも眠っていた。そして、満身創痍の時人、聖児、アキラは気を失っていた。そこに男はいた。一人ひとり



の息を確かめる。全員無事である。しかし、アネモネは動こうとはしなかった。もう、動けないのである。



 男はアネモネに近寄り、頬を触った。



「すまない、時人が迷惑をかけてしまった」



男は涙を浮かべていた。あまりにも非力すぎる時人に対してだ。自分の仲間も守れない奴が自分の弟だと思うと情けなかった。しか



し、それももう終わる。



男はマリアに目がいった。やはり、時人の元を訪ねていた。男の予感は的中していた。昔の約束を守ってくれたのだ。今度はこちら



が約束を守る番だ。マリアの頭を数回撫でる。



「今までよく一人でがんばったな。もう大丈夫だ、時人が守ってくれる」



その声に反応したのか、マリアは目を覚ました。そして、目の前にいる男に対して涙を流したのだ。



「来てくれたのですね、トキ・・・・」



男はそれ以上しゃべれないように強引に口を塞いだ。人差し指を口に当てて。その仕草は時人と同じだった。



「さようなら」



その言葉で、マリアは再び眠りについた。男は手を大きく横に広げてこう言った。



「『眼よ、彼の者達のみの時を再び与え給え』」









 時人は目を覚ました。そこには、聖児・アキラ・アネモネ・水華・マリアの五人全員がいた。皆、心配そうに時人の様子を伺って



いたのだ。



「心配したぞ。大丈夫か?」



「あぁ、それより、敵は?」



「全員倒したぞ。もう安心しろ」



おかしい。聖児もアキラも傷が治っている。アネモネも完全に修復されている。



「お前ら、傷は?」



「何言ってんだよ。お前が俺たちの『時』を戻して治してくれたんだろ?」



違う。その『能力』は確かに存在する。しかし、時人にはできない。時人は否定した。しかし、声には出せなかった。ある一人の男



が脳裏に浮かんだからだ。それが確信へと変わったのはマリアの一言だった。



「違うわ!トキヒコが助けてくれたの!私見たのよ!」



「さっきから言ってるけど、誰だよ『トキヒコ』って」



「俺の、兄貴だ」



突然の告白だったが、時人の口からはそれ以外何も出なかった。














 遠い昔の記憶。まだ、『時の支配人』ではない頃の時人。そして、時彦。






 時彦は知っている。自分の使命を。「自分は影だ」それ以外の何者でもない。






 そして、時人が『時の支配人』だから。





 夢。いつも見るあのころの夢。時彦は分かっている。これからは俺の仕事。しかし、決して時人の前に出てはならない。自分はあ





くまでも「影」だから。




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