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豪火の雀

聖児は鮫島と互角の勝負を繰り広げられていた。お互いが一歩も引かない状況であった。



「さすが、クロノスの仲間だな。一筋縄ではいかないか」



「なぜ、俺たちの場所がわかった?」



その質問に鮫島はニヤリと笑った。



「俺の、もう一つの『能力』だ」



もう一つの能力。つまり、『双道極地』という能力。



『双道極地』二つの能力を併用している異能者。主に攻撃系と補助系に分かれている。



「もう一つの能力は『追痕』だ。傷を見る事で、その傷を付けた本人の居場所がわかる。まぁ、死体を放置してれば簡単に見つけら



れる」



聖児は死体を燃やした。ということはアキラか時人だろう。厄介な能力を持っている敵がいる。聖児の中に焦りが出てきた。こいつ



等はマリアのことを知っている。どうやってか分からないが、部室が危ない。早めに鮫島を倒すことを考える。



肩に鋭く、激痛が走る。鮫島の爪により肩の肉がえぐられた。肩を抑えるが流れる血は容赦を知らない。



「あんまり俺を嘗めるなよ。その気になれば一瞬で殺すぞ?」



聖児の顔はむしろ笑顔だった。ありがたい。久しぶりに本気で戦える。その思いが肩の痛みを感じさせなくなった。聖児はえぐれた



肩の部分を自分の炎で焼きはじめる。さらなる激痛が聖児を襲う。



 この痛みは自分への戒めだ。今まで足りなかった勝利への飢えと渇きを取り戻すため。この戦いで昔の自分を思い出す。



「クレイジーだな。ますます気に入ったぜ!」



聖児は目を瞑り神経を集中させる。昔から得意だったあの技をするために。鮫島が徐々に近づいてくるが、眼は開けない。集中を高



める。



 鮫島はこの一撃で聖児を仕留めるつもりでいた。両手に全精力を集めて一気に切りつける。しかし、その爪撃は空を切っただけに



過ぎなかった。聖児の姿が見当たらない。消えたように跡形もない。まさか逃げたのだろうか?



「どこだ!出て来い」



「お前の後ろだ」



振り向いた鮫島は目を疑った。聖児は体に火を纏っており、両腕からは翼が生えていた。そして、尾羽のようなものまで生えてい



る。



「火装。雀焔の舞」



体を沈めて腕を大きく広げる。翼が燃え上がるように揺れている。一瞬、それに見惚れてしまった鮫島。それが勝敗を分けた。素早



く動いた聖児は鮫島の頭を鷲掴みにしてそのまま地面に叩きつける。その後、聖児は大きく羽ばたき空へと飛びあがる。鮫島を掴ん



だまま。ある程度上昇したところで滞空して手を前へ突き出す。鮫島は力なく人形のように動かなくなっている。もう死んでいるか



もしれない。しかし、聖児には関係なかった。鮫島の体を一気に燃やし空へと投げ捨てる。燃えた鮫島は声を上げることもなく、



徐々に黒くなっていった。地面に近づくにつれ、燃えた体は灰へと化していく。地に着くことなく灰は風に流されてしまった。




 聖児は雀焔を解放した。その直後、片膝をつく。体への負担が痛みへと変わっていった。慣れない変形炎。立ち上がることなく、



その場に倒れ込んでしまう。静かに目を閉じて。




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