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異世界奇行 ~ダーメニンゲンの詩~  作者: DIVER_RYU
第二集『天肆争奪戦』
50/61

第二二篇『改造闘士の三重奏曲』上

この物語を読む前に、自らについた操り糸は断ち切っておくことを勧めます。

 前腕を守る手甲に三つ、黄金色に輝く刃が並んでその身に眼前の敵を映している。しかし相手は、本来であれば敵対するはずのなかった存在であった。手甲の持ち主、コモドの隻眼は闘う前からヒクヒクと動いている。


「ケンちゃん……いやケン! 悪く思うなよ、でやァッ!!」


 ギンッ、という音を上げて刃がぶつかる。並んだ刃の間に、相手の持つ刀が挟まる形で競り合いが始まった。


「俺の鍛え直した刀で、最初に斬られるのが俺になっちまうとはな! とんだ皮肉だぜ!! ケンもそう思わねぇか!?」


 コモドは声をかけ続けた。だがケンは無反応のまま、刀でそのままグイと押し込んでくる。


「返事しろやッ!!」


 そうコモドが吼えた瞬間、彼の腹部を激痛が襲った。コモドの腹部を抉ったケンの左手には再びアダーが握られており、そのグリップにはノコギリ状の護拳が付けられている。即ち、接近戦においてナックルダスターのような使い方も可能なのだ。


「クソッ、本人以上に使いこなしてやがる。こりゃ本体に行きついても苦戦は必至だな……」


 血の流れ出る腹部を押さえながらコモドはターバンを外し、親指をピアスに付いた牙にぶつけて揺らぎを宿し、真っすぐにケンを見据える。


「術使えねぇヤツに触媒術使うのは気が引けるんだが、んな贅沢言ってらんねぇらしいな! 響牙術、ヴェレスネイカー!!」


 放たれたターバンの塊をケンは難なくかわし、コモドに斬り掛かろうとする。だがその瞬間であった。


「右腕ッ!!」


 ケンの刀を持つ手を指差し、コモドが叫ぶ。直後、相手の背後から伸びたターバンが右腕を縛り、止めた。するとケンはその腕を見ようともせず、左に持つアダーを口にあてようとする。


「口ィッ!!」


 右腕を縛ったターバンが、今度は口にも伸びて吹き矢の発射を阻止する。アダーを握ったままの左手で、ターバンを外そうとするケンだったが、彼が外そうとしていたのは口ではなく、耳であった。


「なるほど……そういうことか。両耳いけ!! 目もだッ!!」


 ターバンはケンの頭部に巻き付き、両耳と両目を瞬く間に塞いでいった。アダーを落とし、すぐさま左手で顔のあちこちを触りながら、ケンはある方を向く。その瞬間をコモドは見逃さなかった。


「そこだなッ!!」


 牙を再び弾き、発生した揺らぎ球を、コモドは建物の陰へと直接投げ付けた。すると、ケンはその場にバッタリと倒れ込むのであった。


「ケンちゃん! 大丈夫かッ!!」


 ターバンにかかった術を解除し、すぐさま外しながらコモドはケンに声をかける。目元を隠していたターバンを外してまぶたをこじ開け、眼帯に仕込まれた“眼”を使って視た。


「……んッ? まだ、術がかかって……」


 そう呟いた直後。ケンの持つ刀が真っすぐにコモド目掛けて突き出される。


「うッ!!」


 そう叫び、刀を握っているケンの腕を掴みながら、コモドはその場に倒れ伏すのであった。ケンが刀を引き抜くと、その刀身にはべっとりとコモドの血糊が付いている。


「うぁ……ああ……そん……な……」


 うめき声を上げながら、コモドはその場にがっくりと倒れ込むのであった。すると、建物の陰からゆっくりと拍手をする音が近付いて来る。


「ふふふっ……よく出来マシタ。術の当てられたフリが効いたようね」


 倒れたコモドの銀髪に、べっとりと赤い血が絡まっている。そんな彼を前にして、知ってか知らずかケンは腕をダラリと伸ばしたまま棒立ちしていた。その手に持つ刀から、ポトポトとコモドの血が滴り落ちている。


「こんな格上を仕留められるなんて……流石はあたくしの、サイレーヌの新しくて可愛いお気に入り……」


 姿を現したサイレーヌは、虚ろな目で佇むケンを抱き締め、その頬や頭を撫で始める。


「さ、そろそろ解除してあげるワネ。自分のやったことをしっかりと認識ナサイ……」


 倒れているコモドの方にケンの顔を向けさせ、耳元にその唇を近付けると囁き始める。


「ふふ……あたくしの導けるとこはここまで。目が覚めたら、前にあるモノをよぉく確認なさい……三、二ィ、一ィ、ゼ・ロ」

「……んはッ!? え、今の今まで夢!? てかここ何処!?」


 困惑するケン。すると右腕に握る重みに気付く。ビクビクしながら右腕に握るモノ、自らの刀に目をやると何と、見たこともないような赤に染まり切っている。


「え、え、僕誰かを斬っちゃったの!? え、誰を!? ……え、コモドさん?」


 眼前に倒れている存在、それは自分がこの世界に落ちた時、拾ってくれた恩人。だが倒れる彼の真下から、赤い液体が流れているのが確認出来る。


「まさか……さっきのさっきまで闘っていた相手って、コモドさん……!?」

「そうよ、あたくしの可愛い傀儡さん」

「誰ッ!?」


 振り返ったケンは遂に、自分を“導く”者の姿を見ることとなった。


「な、なな……化け物……!?」

「素直な子で嬉しいワ。だからこそ騙し甲斐も操り甲斐もあるというモノ……」

「騙して操り……!? じゃ、じゃあ僕は自分でコモドさんを……!?」

「そういうコト……あなたは自分で恩人を刺し殺したノヨ、その刀デネ。だからもう、ラァワの屋敷には帰れナイ……」

「そんな!?」

「今その男を抱えて屋敷に帰って御覧ナサイ……きっとあの魔女、怒り狂ってあなたを殺しに来るワネ……」

「僕に……そんなことを……!!」


 ケンは震えながらサイレーヌに向かって刀を構える。


「アラ、そんなコトして良いのカシラ? あなたは外道に堕ちたノヨ、その意味がお分かり?」

「弔い合戦だ、せめてコモドさんの仇をとってから死んでやるッ!!」

「ふふっ、勝てると思ってるなんておかしい子……仕方ないわね、“やめなさい”」


 特殊な発声でサイレーヌはケンに話し掛けた。するとまるで糸の切れた操り人形のように、ケンはその場に腕をダラリとしてうなだれるのであった。


「あなたはあたくしの可愛い可愛いコレクション……決して離さないワ、あたくしと共に来なさい……」

「……なるほどなるほど、囁響術しょうきょうじゅつの使い手か」

「ええソウヨ、あたくしの囁響術はどんな少年も逆らえナイ……待ッテ、今喋ったの誰カシラ?」


 ケンでも、自分のでもない第三者の声にサイレーヌは動揺した。咄嗟に倒れているコモドを見るものの、彼は倒れ込んだまま動かない。


「姿を現しナサイ……何処にいるのカシラ……出ていらっシャイ……!!」


 しかし誰も返事をすることはなく、姿を現す者もいなかった。


「出てこないのナラ……囁響術、ソナーカノーネ!!」


 そう唱え、口を開くと空気そのモノが歪む特殊な音波がサイレーヌの口から放たれる。その前方にあった建物は丸く削り取られ、川岸の冊までもが吹き飛んでゆく。


「さぁ出て来なサイ……物陰に隠れても無駄ヨ……!!」


 だが周囲は依然、静かなままである。


「ならばもう一発……」

「響牙術、ヴィブロクラッカー!!」

「うわッ!?」


 地面を走る亀裂が、飛ばされる砕けた石が、突然サイレーヌを襲う。


「響牙術ダト!! まさか……!!」

「その、まさかだぜ」


 サイレーヌが振り返ったそこにいたのは、ケンを抱えたまま地面に手をつける、腹部を刺されて倒れたはずのコモドの姿であった。


「何故ダ!? 何故生きてイル!! 確かにあの時、刃先が体を……」

「そちらの角度からじゃ分からなかったらしいな! 俺は刺さったフリをしていたのさ!!」


 解説せねばならない。ケンが刀を突き出した時、コモドは術者の“位置”を既に特定していた。その位置から刺さったように見えるようにして、コモドは刀を脇に挟み込んでいたのである。


「なればその血は一体……!?」

「へっ、こういうことさ……」


 コモドの二の腕から血が流れている。何と彼は、以前にマードッグによって斬られていたキズを、わざと突き出された刃で広げ直すことで出血させ、そのまま刃に塗り付けていたのである。直後、懐紙から取り出した治癒符を貼り付け、上から素早くターバンを巻き付ける。


「じゃ、じゃあ何故、あたくしの位置が読めたノダ……!?」

「長年のカンだと言っておく。操られているヤツってのは、操り手に分かるように動くモンだからな」

「おのれ、オノレ……!!」


 ケンをターバンで拘束した時、彼は自らの右腕を確認することはなかった。だが耳と目を覆ったその時、ケンはある方向に顔を動かしながらターバンを取ろうとしていたのである。この行為を使って、なんとコモドはサイレーヌの位置を特定していたのだ。


「サイレーヌと言ったな! お前さんもヘルベンダー達の仲間か!!」

「いかにも、あたくしはブラックバアル、ビアル様直属の改造闘士部隊が一人!!」

「改造闘士部隊……なるほど、ラマエルの言っていた三人目はてめぇだな」


 コモドはサイレーヌに向かって構えをとった。だが、そのサイレーヌは余裕そうな表情を崩さない。


「囁響術、ヒュプノスレイヴ。“起きなさい、ケン”」


 するとケンの腕が伸び、コモドの首を掴みかかる。


「もう一度操ろう、というワケだな?」

「ええ、命乞いするなら今のうちヨ」


 コモドの指には、牙を弾いて出した揺らぎが灯っていた。


「目ェ覚ましな、ケン!!」


 そう言ってコモドは、ケンの眼前で揺らぎの灯った指を鳴らし、凄まじい音によってケンを覚醒させる。


「うわッ!? え、コモドさん、生きてる……!?」

「オウ、俺は死なねぇよ、暗黒組織を潰すまではな!!」

「あたくしの囁響術を破ッタ……!? 一体どうやって!?」

「響牙術さ。振動をかき消すには振動をぶつけんのが手っ取り早いってこった!!」

「そんな原始的で乱暴なやり方であたくしの術を……!?」


 動揺するサイレーヌに対し、コモドはケンを地面に降ろし、指をバキボキと鳴らしながら迫る。


「そして今から、俺は極めて原始的で乱暴なやり方でお前さんにアレコレ尋ねようと思っててね。聞かせてもらおうか、ブラックバアル改造闘士部隊、そのメンバーと改造内容、そして使用術をなッ!!」

「ならばあたくしも……原始的で乱暴なやり方で跳ね退けさせてもらおうカッ!!」


 そう言って、サイレーヌは羽団扇に似た形の剣を取り出しコモドに突き付ける。しかし突き付けられた先にあった表情は、口の片側だけを急な角度で引き上げる、恐ろしく迫力に溢れた笑顔であった。


「そう来ねぇと、なァ?」




「魔眼閃光!!」

「エルバラック!!」


 カタックの両目から放たれる赤い光線、そしてラマエルの触角から放たれる緑の電撃が同時に放たれる。コモドがケンを取り戻そうと奮闘していた頃、殿しんがりを買って出ていたカタックとラマエル、そして召喚されたシケイダーは改造闘士二人を相手に激闘を繰り広げていた。


「ガァァウ!!」


 マードッグの咆哮と同時に、全身に展開していた刃が分離、回転しながら三人を襲う。


「天導術、エルアイギス!」

「させませんヨォ!」


 展開した繭につかさず、毒の封入されたカプセルがヘルベンダーによって投げられ、溶解すると共に焼け落ちる。


「止むを得ないわね……!!」


 次々に襲い掛かるマードッグの刃を、これまた手にした刃で次々に叩き返すカタックとシケイダー。


「ふぅん、流石はゼーブル様のお兄様だけあってやりますネェ……ですガ!!」


 そう言ってヘルベンダーは地面に向かって張り手を繰り出した。


「うわッ!?」


 文字通りの力業、ヘルベンダーの一撃は局地的な地震を引き起こしていた。


「ワタシの強化改造された一撃はいかがですかネェ!! 体に直接叩き込まれれば愉快なことが起きますヨォ!!」

「ガガウ! ガウ!!」


 更に揺らされた地面から飛び出したマードッグが、叩き落された刃をいう刃を全て回収してカタックに直接斬り掛かる。それに気付いたカタックは手にした十文字槍を突き出し牽制する。


「読めたわ。詠唱こそないけど、アンタは潜遁術せんとんじゅつの使い手ね?」

「ガァーウ……」

「石畳だろうと建物の中だろうと、自在に潜ってかわして斬り掛かる……なるほど攻撃を当てられないワケね」

「ガウ……ガッガッガッガッガ!!」


 大笑いするような声を上げるマードッグ。それに気付いたヘルベンダーが一言付け加えた。


「ふぇっふぇっふぇ、マードッグは『分かったから何だ』と言ってますネェ!!」


 直後、マードッグはその場の地面に“潜り”始めた。すると影が、地面の上をスルスルと這うようにしてカタックに向かうのが見える。


「随分と自信がおありのようね。分かったわ……宝眼術我流、紅蓮剣ぐれんけん!!」


 右手に持った刀の峰を左腕に乗せるように構えると、その両目を赤く光らせる。刀の波紋がその目に呼応するかのように光を放ち、赤い光刃剣となった。背を屈め、刃先を地面につけ、カタックは目を閉じる。


「……そこッ!! 紅蓮剣、鬼火返おにびがえし!!」


 目が再び開いたその時、背後から飛びかかるマードッグに目掛け、地面に付いた刃を素早く切り上げる。すると地を這う赤い斬撃が出現、炎の軌跡を残しながら彼に襲い掛かる。咄嗟に腕に生えた刃で防ごうとしたマードッグ、だがカタックは短刀と鞘で出来た十文字槍の鞘尻を足の甲に置くと、そのままマードッグの頭部目掛けて蹴り込んだ。直後、頭部に得物を生やして地に落ちる、マードッグの姿があった。


「やった……!!」

「あらぁ、マードッグ大丈夫ですカァ?」


 ラマエルとシケイダー、二人と対峙していたヘルベンダーがマードッグに駆け寄る。


「ガウガウ……」

「なぁんだ、コレなら大丈夫ですネェ」

「え……?」


 渾身の一撃だったにも関わらず、まさかの一言に驚くカタック。ヘルベンダーは槍を引き抜いて捨てると、カプセルの一つを取り出して振り返る。


「カタックにラマエルと言いましたネェ。今日のところはほんのお茶目なアイサツ、また会えると良いですネェ!!」


 そう言ってカプセルをその場に叩き付け、大量の煙を発生させるとそのまま姿を消すのであった。


「普通なら今ので致命傷よ。流石に身体改造してたらワケが違うわね……」

「どうすれば良いのかのう……。それよりもシケイダー、大義であった、戻れ」


 シケイダーを髪飾りに戻すと、ラマエルはカタックに話し掛ける。


「コモドとケンが心配じゃ。参るぞ!」

「ええ、行きましょう」


 その頃、コモドの様子はというと。


「クソ……思った通りの強敵だな」


 サイレーヌの持つ剣は三つに分かれた刃で出来ており、間で相手の刃を挟み込めるように出来ている。コモドの放った斬撃が今まさにそこに囚われ、固定されてしまっていた。それだけではなく、つかさずコモドが放った蹴りまでもがついでに捌かれてしまっていた。


「あたくしの改造感覚に、追いつけぬ斬撃などありはシナイ。所詮改造してない生身の闘術士の攻撃など、このサイレーヌには止まって見えるノダ!!」

「止まって見えるだと……言ってくれるじゃねぇかッ!!」


 すぐさまコモドは牙を弾くとそのまま揺らぎを握り潰して刃に込めさせ、その場で放つ。


「響牙術、ヴィブロスラッシュ!!」 


 至近距離で飛ばされた振動の斬撃。同時に刃を引いてその場から逃れようとするコモド。だが飛ばしたはずの斬撃が見当たらない、そればかりか相手の身体に、切り傷がない。


「ヴィブロスラッシュを……どこにやった?」

「フフフ……ここヨ」


 サイレーヌが指差したのは喉を切り開いて埋め込まれた機械、そこになんと青い揺らぎが留まっている。


「響牙術など、あたくしの前では無力。ヴィブロスラッシュ返し!!」

「うげッ!?」


 サイレーヌの口の中が青く光り出す。彼女は何と、喉の機械を使って吸収したコモドの術技を、口から直接放ってコモドにぶつけようと目論んだ。それに気付いたコモドは素早く牙を弾き、マントに宿らせ素早く翻す。返されたヴィブロスラッシュは打ち消された。しかし自らの使用術に徹底した対策を取られたことに、コモドは戦慄する。だが脅威は目の前にいる存在ばかりではなかった。構えを直そうとしたまさにその時、彼の右の掌に鋭い痛みが走る。


「痛ぇッ!? コイツはまさか……」


 彼の右手には鉄のフックが貫いており、その根元から鎖が伸び、辿った先に立っていた者、それは。


「ビアル……!!」

「死神コモド、我が自慢の改造闘士部隊はいかがだね?」


 腕輪から伸びた鎖を巻き取りながら、ビアルは姿を現した。


「ビアル様、自らおいでになられたのは何故デス?」

「撤退だ。マードッグが負傷した。カタックとラマエルがこちらに向かっている。紋章術、転送紋てんそうもん!」


 ビアルがそう唱えると、サイレーヌのバックルに刻まれた紋章が光り始める。


「あら残念……また会いましょう、あたくしの可愛いケン……」


 そう言った後、彼女は姿を消すのであった。


「死神コモドよ。イリーヴに会いたくはないか?」

「何だと? 今何て言いやがった?」

「イリーヴの居場所を知りたくはないか?」

「……知ってるんだな、どうせ罠だろうが聞かせてもらうぜ」


 手に刺さった真っ赤なフックを、無理矢理引き抜きながらコモドが尋ねる。


「流石だ死神コモド、察しが良い。よく聞け、魔女喰いの森へ来るが良い」

「魔女喰いの森だと!? とんだ所に隠しやがったな!!」

「臆病風に吹かれるならば! 貴様に残された時間、座して死を待つが良い。最も、死神コモドにそんな選択肢など有り得んだろうがな……!!」


 そう言い残し、ビアルは姿を消すのであった。


「魔女喰いの森……魔女さえ屠る、戦慄の地……!!」


 そう呟くコモドの表情は厳しいモノであった。魔女喰いの森、そこはインクシュタットに住む人物にとって、隣り合った死と恐怖を意味する場所である。死神の異名、限られた時間、誘い込まれた場所、今のコモドの脳裏には「死」の概念が何処までも強く絡みついていた。


「待ってろよ……ブラック……バア……ル……」


 その闘志とは裏腹に、血を流し過ぎたコモドはその場に倒れ込んでしまうのであった。


改造闘士の名前はいずれも、水棲有尾類からとられております。

ヘルベンダーはそのまま、サイレーヌはサイレン、マードッグはマッドパピーから

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