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異世界奇行 ~ダーメニンゲンの詩~  作者: DIVER_RYU
第二集『天肆争奪戦』
43/61

第十八篇『竜の谷を脱出せよ』下

この物語を読む時には密集、密着、密室を避けてお願いいたします。

「コルウス先生!!」


 コモド達が竜の谷で苦戦を強いられているのとまさに同時刻。ペンタブルク総合病院には招かれざる客が訪れていたのであった。イスやテーブルで無理矢理築いたバリゲートの中に、複数の看護師や患者達が匿われている。


「ヒェッヒェッヒェッ!! いくらコルウス先生とは言え、これだけの患者を庇ってはマトモに戦えんみたいだなァ?」


 特徴的な笑い声が響く。病院の窓は無数のムカデによって埋め尽くされていた。


「卑劣な機械人形め……!! 今自分がやってることが分かっているのか!!」


 口から血を流し、壁を背にしたまま何とか立ち上がるコルウス。その足元には、首にメスが刺さって倒れたゴブリンが転がっている。


「素直に差し出さないからこうなるんだよォ……このビズトロン様の手を煩わせるんじゃないぜェ」


 賢明な読者諸君は記憶していることだろう。ビズトロンの操る絞殺ムカデは、一分足らずで人体の首をひき千切り、仮に脱出したとしても毒爪によって体が蝕まれることとなる。この機械人形は多数の人質を得たも同然なのである。


「せめてコモドさんがいてくれたなら……!!」

「へッ! アイツなら竜の谷でくたばってるだろうぜェ、ヒェッヒェッヒェッ!!」

「ふざけんじゃないわよデク人形ッ!!」


 火炎弾がビズトロンを襲う。だが片手で払い退けながらこの人形はなおも笑い声を上げていた。


「へぇ、オイラはこう見えてマジメな機械人形、なんだけどなァ?」

「……あのコモドが、暗黒組織あんたたちを潰すまで、無様に死ぬワケないでしょうが……!!」


 車イスの上から、絞り出すような声が響く。


「ラビアさん……無茶しちゃダメです……」


 その後ろには、肩で息をしながらゴブリンの首を片腕でへし折る、ウラルの姿があった。


「ウラルさん、あたしはコモドを見送るまで死ぬつもりなんてないのよ……あんただってそうなんでしょう!?」

「ええそうですけどね……あの数のムカデを“停める”のは大変なんですよ?」


 ゴブリンの残骸の山の上で睨み合う人形と人間達。その拮抗を崩し得る存在は今、竜の谷にいた。


「でやァ!!」

「ハァッ!!」


 牢獄紋によって築かれた結界。その内側からキズを付ける形で刻まれた数字に、ケンとミナージが得物を手に斬りかかる。ドーム状の結界に刻まれた数字型のキズから、ヒビが広がるのが見えた。


「次はあっちッスか?」


 二人が結界に刻み込まれた数字を探して走る中、ラマエルはシケイダーとアリファを一カ所に動かしていた。


「……この紋章が悪さをしておるみたいじゃな」


 アリファの様子を見たラマエルが口を開く。


「天導術、エルセラピア」


 そう唱えて翅から粉を少しぬぐい、アリファの翼に刻まれた不動紋にふりかける。たちまち紋章が消えていき、翼は再び動くようになった。更にシケイダーの方を見ると、同じように粉を額のキズに塗り込んだ。


「コモドは大丈夫かの……?」


 一方で牢獄紋の内部では、依然として激しいやりとりが続いていた。


「化鋼術、自在鎖!!」


 フックのついた鎖が次々にビアルの装甲から出現し、コモドに襲い掛かる。更には落ちていた針蜻蛉までもが鎖に変貌し、敵の足元をすくわんと迫り来る。


「響牙術、ヴィブロクラッカー!!」


 飛び退きつつも牙を弾き、着地と同時に青い揺らぎの宿った指を地面へと差し込む。打ち込まれた揺らぎが地面を裂いてビアルへと向かう。


「何の、化鋼術、飛来槍!!」

「響牙術、ヴィブロスラッシュ三段斬り!!」

 

 ヴィブロクラッカーによる衝撃波をかわしもせず、すぐさま術を返したビアル。それを見るや否や、コモドもまた手甲の刃を三つとも展開し、揺らぎの刃を三つ同時に放って返す。飛来槍を弾き返し、刃の一つがビアルに向かう。


「化鋼術、武装変幻……んなッ!?」


 ビアルラッシュによる防御が、遂に間に合わない時が来た。得物を杖代わりに突き立て、顔面を押さえうずくまる。


「もらった……」


 手甲同士を交差させ、内部のタルウィサイトを片方に移し、特大の刃を展開した手甲剣を携えコモドが迫る。その口元を片側だけニヤリと引き上げながら、いざ斬り掛かろうとしたまさにその時であった。


「機動法、ビアルアイザー!!」

「ぐはッ!?」


 コモドの右胸を何かが貫いた。凄まじい熱が彼の体を襲う。


「熱線銃だと、どこから出しやがった……んなッ!?」


 驚愕する赤銅色の隻眼に映ったモノ、それは顔の半分が剥がされ、内部の怪物が露呈したかのような異形の姿であった。破れた皮膚組織の下は鋼のウロコで覆れ、その眼窩の奥に緑の光を灯している。


「改造していたのか……自分の体までも!!」

「よくも拙者の顔にキズを! この皮膚は治すのに時間がかかるのだぞ!!」

「そんなドクロみてぇな顔を仕込んどいてよく言うぜ! 人間辞めたクセに未練がましいんだよ!!」


 内部でのやりとりが続くその頃、外部にて牢獄紋を破らんと走り続けるケンとミナージ。斧や銃弾による衝撃が徐々に、結界そのモノにヒビを入れてゆく。


「あと一カ所……!!」


 そう呟いて二人が破壊にかかろうとした、まさにその時であった。


「うげ、目が合った!?」


 何と内部で顔を押さえていたビアルの視線が、結界越しにハッキリとケンのそれと合ったのであった。


「……フン、小賢しいマネを!!」


 ビアルが次々に目を向ける。結界に刻まれた数字と、そこから蜘蛛の巣のように広がる亀裂にとうとう気付いてしまったのであった。


「へへッ、あと一カ所だぜ。残念だったな!!」

「それはこちらの台詞なり、来いブラックネメア!!」

「何だとォ!?」


 直後、ケン達の背後から轟音が響き渡った。爪を広げ、十五メートルもの黒き巨体が各々を見下ろしている。


「気付かれたッス!?」


「アレが……ゴーレムというモノか? しかし何故外に出ておるのじゃ?」

「アイツは敵のだよ! しかもただのゴーレムじゃない、特別製でメチャクチャ強いんだよォ……!!」

「しかしブラックネメアはゼーブルのモノのはずッスよ!?」


 近付いて来る巨体。生身で勝てる相手ではない、だが肝心なコモドは隔離されてしまっている。


「……ダムート・ラシートだ。僕も一枚持っている、所有権をいつでも変えられるようにしてあるんだよ」

「つまり事前に貸し出してた、ってことじゃな。まずい、こっち来るぞ!!」


 急襲するブラックネメアの足。散開する三人、その様子は牢獄紋からも見えていた。


「デレック! トキシックレイ!!」


 ビアルの手にしたゴーレムサモナーはコモドと同じく黄金に彩られている。カードを通されるや否やブラックネメアはその両手を地面に突き、背後から巨大なサソリを思わせる尾を展開、先端から発した紫色の細い光線がケンとミナージを一瞬にしてかすめた。


「ぎゃあッ!?」

「何だコレ……動けないッス……!?」

「ケンちゃん! ミナージ!! くそォ……牢獄紋の性質を利用したか」


 解説せねばなるまい。牢獄紋による結界は、術者自身の魔力は通せてもそれ以外の魔力は遮断するように出来ている。よってあらかじめ外に用意してあったブラックネメアを、後から呼びつけるという芸当も可能なのだ。一方でコモドは、ルクトライザーを呼ぼうモノなら一人で圧死するリスクを依然抱えたままである。術者であるビアルならただ一人結界から脱出することも容易いためである。


「トキシックレイは魔力の流れや神経伝達物質の移動を阻害する。クレイ式ゴーレムであれば五体バラバラにした上で泥による再生すらも不可能となる。どうだ、我が発明も素晴らしかろう」

「へぇ、中々考えるじゃねぇか。パクって良いかい?」


 コモドの右手が、遂に左腰のカードに伸びる。


「ほう、遂に呼ぶか。しかし仮にルクトライザーを呼んで脱出出来たとて、ブラックネメアには敵わんだろう?」

「……アンタだったら、刺し違えてでも倒す価値、ありそうだからな」


 取り出したカードを見つめながら、ぼそぼそと話す相手にビアルはイラ立ちを覚えていた。コイツは諦めたのか、諦めていないのか。


「狂ったか死神! 天肆の力で生き延びるのではなかったのか!」

「出来ることならそうしてぇよ、でもな……竜の谷なら、骨を埋めても良いと思えてきてな」

「そうか、諦めたか。しかし拙者と刺し違えたところで、誰がブラックバアルを倒すというのだ」


 ニヤりと口元を歪めつつも、ビアルの目元は笑みを浮かべていない。逃げ場を塞がれた相手がいかなる暴挙に出るか、経験を積んだ闘術士はある程度は把握しているためである。


「誰が? ビアルさんよ、てめぇの敵は何も俺だけじゃねぇ、ぜッ!!」

「何ッ!?」


 コモドは、カードをピアスについた牙に打ち付けて振動を宿らせると、不意をついて素早くビアルに向かって投げ付けた。勝利を確信した時にこそ、敗北は顔を覗かせる。しかし逆もまた然り、己を捨てた先に浮かぶ瀬を見出した者こそが有意義な逃亡を、場合によっては決定的な勝利を掴むことが出来るのである。手から離れたカードはビアルの背後から取り囲むような軌道を描き、そして!


「ぐあッ!! やってくれたな……!!」


 改造された目を捉えていた。深々と刺さったカードを投げ捨てるビアルであったが、ビアルアイザーは早速封じられることとなった。技名を唱えることないヴィブロスラッシュであったが、成果は十分過ぎるほどである。


「この国には、いや連邦には! 優れた闘術士がまだまだたくさんおるんだッ! てめぇらみてぇな、暗黒組織如きがいつまでものさばれると思うんじゃねぇぜッ!!」


 啖呵を切りつつ牙を弾き、揺らぎを手にしながらコモドは睨み付ける。


「響牙術……パルスインパルム!」

「拙者の内臓を狙うつもりか」

「おう、望み通りに、臓物料理にしてやるぜぇぇええ!!」


 揺らぎを灯した掌を腰だめに、背をかがめて一気に飛び掛かるコモド。一方のビアルもまた、手裏剣の一つを手に取ると大きく一歩踏み込んだ。


「武装変幻!!」


 至近距離を見計らい、ビアルラッシュが展開される。狙うはコモドのアバラから内臓にかけて。意趣返しといったところか、だがコモドの足はここで動きを変えた。急に左右を向く彼のつま先、稲妻を描くような軌道がビアルラッシュの先端を迷わせる。その一瞬のスキを、コモドは見逃さなかった。


「ハァッ!!」


 コモドが跳んだ。身体を捻り、両足を向けてビアルの得物を捉える。思わぬ一撃によろめく相手を、まるで階段でも駆け上がるかのような足によるダメ押しが襲う。肩を思い切り蹴り込まれ、膝をついたビアルの目に映ったのは、まっすぐに牢獄紋のキズに向かって宙を行くコモドの姿であった。衝撃が、牢獄紋の内部全体に響き渡る。一瞬にして結界全体に広がったヒビを見たビアルは苦々しい顔を浮かべ、呟くのであった。


「振動そのモノで無理矢理亀裂を広げたということか……!!」


 コモドの掌は、ラマエルがかつて利用した、針によって開けられた結界の小さな穴を捉えていた。あまりに大胆な策、敵を利用しての三角跳びでコモドは七つ目のキズを付けたのである。その様子は、ブラックネメアに追われる外の面々にも伝わることとなった。


「ラマエル!! 今だァァーーッ!!」


 結界の亀裂から思い切り叫ぶコモド。その声に応え、彼女の触角が今、帯電する。


「天導術、エルバラック!!」


 小柄なラマエルの体が颯爽と結界の上に飛ぶと、薄緑色の電撃が触角から一気に放出される。その中で、コモドの手がついにカードをとり、唱えるのであった。


「エメト、ルクトライザー!!」

「……味なマネをしおって。止むを得ん、ブラックネメア!」


 一人牢獄紋を抜け出したビアルを、ブラックネメアの手が迎い入れる。肩に飛び乗って振り返ったビアルの目に映ったのは、ガラスのように砕け散る結界とそこから生えた巨大な拳であった。ゆっくりと身を起こし、砕けた結界をまるで砂でも払うかのように体から取り除き、ブラックネメアの方に顔を向けると目が灯る。その色を見たケンが驚愕の声を上げた。


「緑色……!?」

「天肆の影響ッスか?」

「うむ、おそらく。元の色は知らんが……」


 ボロボロになった結界を蹴り飛ばし、コモドがついに三人と合流する。ルクトライザーの青い目は緑色に染まっただけでなく、全身にまるで血管の如く緑に光る筋が走っていた。


「すげぇじゃねぇかラマエル! さっきから力が漲ってしょうがねぇんだよ、このサモナーからもビンビンに感じるぜ」

「わ、わらわにはそのつもりは……」

「君の可能性は、君が思うよりもうんと広くて明るいってことさ。……さぁいくぜ、ルクトライザー!!」

「色が変わったところで、所詮はクレイ式、恐れることはないぞブラックネメア!!」


 キッと睨み合う二体の巨人。長いようで短い沈黙が続いた次の瞬間、互いの拳が激突する。


「バカめ、砕け散ると分かっての鉄拳か! ……何ッ!?」


 いつかのようにルクトライザーの拳が粉砕される、ということはなかった。


「クレイ式の拳が何故ロック式とカチ合えるのだ!! どうなっている!!」

「俺の方が聞きたいね。どうなんですかね、ラマエル先生?」

「……ビアルよ、これこそそなたの恐れるわらわの力じゃ。存分に味わうが良い!!」

「そのノリの良さ、嫌いじゃねぇぜ。さぁ行くぞッ!」


 激突していた相手の拳を掴み、蹴りが入る。腹部を押さえて後ずさるブラックネメア。素早く手首を交差させることでコモドはルクトライザーの動きを自らに合わせると同時に、彼の眼帯に仕込まれた義眼がルクトライザーの視界を映し出す。


「バラバラにしてやる。ブラックネメア、トキシックレイ!!」

「ネシェク! ブレイカーテイル!!」


 背中から展開した、先端に三叉の刃を湛えた尾を使って、光線を受け止める。


「泥に還れ、ルクトライザー!!」

「その尻尾対決、もらったァア!!」

「何だと!?」


 次の瞬間、駆け出したルクトライザーの右腕が自らの尻尾を掴んで切り離し、長モノとして思い切り振りかぶるとブラックネメアの尾の先端、即ち光線の出どころ目掛けて重い一撃を叩き付けたのであった。砕け散ったブレイカーテイル、しかし光線は止まった。それだけではなく、泥にまみれた黒曜石の巨体がその場に膝を突く。


「どうした、ブラックネメア!!」

「そちらさんのトキシックレイによる魔力遮断効果をたっぷりと含ませた泥をな、しっかりと浴びせてやったのさ。ロック式にはマネ出来ねぇぜ?」


 その後でケン達の介抱していた、ラマエルがコモドに向かって口を開く。


「コモド、今のお主のゴーレムは、わらわの空間支配で無理矢理に強めている。特に今の光線は中々堪えるモノがあったようじゃ、いつまでもは持たぬぞ」


 ラマエルの言った通り、ルクトライザーの目の光が徐々に薄くなりつつある。


「分かった、スキを見て退散しよう。デレック!」


 取り出したカードに呪文を吹き込み、模様の浮き出たそれをサモナーに挿し込む。ルクトライザーの腹部にある紋章がいつもの青ではなく緑色に燃え上がり、同時にバチバチと電気を放ち始めていた。


「コバルトブレイザーではないな……新たな命名が必要か」

「わらわのエルバラックが混ざっておるみたいじゃの。一部名前に入れてみてはどうじゃ?」

「それでいこう、採用だ。ゴーレムアーツ、バラックブレイザー!!」


 放たれた緑色の電撃火球は、最早プラズマ球とも呼ぶべき現象と化していた。両の掌を前に、ブラックネメアはその強烈な一撃を掴み取ろうとする。


「ブラックネメア! たかが火の弾一つ、投げ返すが良い!!」


 両手がなんとバラックブレイザーを受け止めた。緑の閃光に照らされる黒曜石の機体、しかし掌ごと徐々に押されるその足元を見て、コモドは更なる一言を発するのであった。


「ルクトライザー、もう一発やってやれ!!」


 その指示通りに二発目の攻撃が、受け止められようとしている球に放たれた。大爆発に隠れるブラックネメアの巨体、素早く身を隠し爆発をやり過ごしたビアルがその後目にしたのは、まんまと姿を消したコモド達一行と、両手が溶け崩れてうなだれるブラックネメアの姿であった。


「チッ、逃げおおせたか。だがもう手遅れだ……!!」




「皆、大丈夫か」


 地面を滑るように走る、ルクトライザーの巨大な手。その掌の上でコモドは各々に声をかけていた。シケイダーとアリファは二体とも横たわり、ケンとミナージは指に引っかかる様にして掴まっている。手の後ろから付いて行く形で、ラマエルは羽を広げて飛翔するのであった。


「しかしこんなことも出来るんじゃのう。手だけが走るのはいささか滑稽じゃが……」

「嗚呼、こうすれば少ない魔力で動かせる。クレイ式ならではのやり方だぜ。乗らなくて良かったのかよ」

「わらわは、泥の上に直接座るのがちょっと、な」

「ケツが汚れるのは承知の上だ、そろそろ病院だぜ! ……ってアレ? 母さん!?」


 コモドの視界に入ったモノ、それは魔力による翼を展開してこちらにまっすぐ飛んで来る、ラァワの姿であった。


「コモド! 良かった、戻って来たのね」

「その方がそなたの母君か? 随分と若いような……」

「あなたが噂の天肆様ね。話は後よ、コレを見てちょうだい」


 彼女の掌に置かれていたのは、占眼符を下敷きにして置かれた水晶玉であった。そこに映っていた景色とは。


「何だコレ!? 病院の窓がムカデまみれじゃねぇか!?」

「コレまさか……ビズトロンの絞殺ムカデ!? ビアルめ、本当にやりやがってたのか!!」

「中はッ!? 中はどうなってるんですかラァワさん!!」


 水晶玉に手がかざされる。すると院内の様子が映し出された。


「ラビアさんに……父さん!?」

「相手は患者を人質に籠城するつもりよ。一人でも多くの戦力が必要ね。……来てくれるかしら?」

「もちろんだッ!!」


 威勢の良い返事の後、急行するコモド達一行。水晶玉が示していた光景がそのまま、病院の建物そのモノに広がっていた。


 威勢の良い返事の後、急行するコモド達一行。水晶玉が示していた光景がそのまま、病院の建物そのモノに広がっていた。


「改めて見るとなんて数のムカデなんだ……ん、何か青く光ってるけど、アレは?」

「青い光……ムカデが動いてないッスね……え、まさか、父さん!?」

「……ウラルさんの蛇眼彫塑か! まずい、アレだけの魔力を放出し続けたら危険だぜ!!」


 コモドの一声で、すぐにでも駆け出そうとした、まさにその時であった。


「待て! 死の匂いがする……それもすぐ近くじゃ!」

「死の匂い、なのにすぐ近く? どういうことかしら……」


 ラマエルの発言を受け、ラァワは占眼符を取り出し辺りを視た、まさにその時であった。


「ぎゃあッ!? 地面から手が!!」


 ケンの足首を掴む、鋭い爪を湛えた手。それを見たミナージがすぐさま撃ち抜き、ラァワが視た結果を改めて口に出すのであった。


「なるほど、死の匂いとはよく言ったモノね。オークまみれよ、この辺りの、地面の下!!」


 その発言を受けてか、はたまた獲物の匂いを嗅ぎ付けてか。次々に地面から身を起こすオーク達。傾きかけた太陽の下、この日二度目の暗黒組織との対決が今、始まろうとしていた。


~次篇予告~

ビアルの仕掛けた卑劣な罠、

それはコモド達の不在を狙った奇襲であった。

何故、暗黒組織は病院を襲ったのか?

次篇『急げ恐怖の百足病棟へ』 お楽しみに

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