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異世界奇行 ~ダーメニンゲンの詩~  作者: DIVER_RYU
第一集『暗黒組織ブラックバアル』
35/61

第十五篇『狂気と矜持の狭間で』下

予防接種はお早目に!

「御変わりありませんか」


 ケン達のいる病室に、コルウスが入って来る。


「先生! コモドさん達は!?」

「嗚呼、何とかベッドから身を起こすまでにはなってます。それよりケンさん、そのケガが治ったら……」


 ファイルの中身を取り出し、ケンに手渡す。


「……予防接種? ワクチン?」

「おや、そちらではそう呼ぶのですか。まぁ、この国に生まれたなら十五歳までに打つヤツですけどね」


 紙に書かれた項目にペンで印を入れながら、ケンは尋ねる。


「風土病か何か、ですか?」

「まぁ、そんなとこですよ。それじゃ、書き終わったら渡して下さいね。顔のおケガ、見ていきますよ」


 顔に貼られた治癒符を剥がし、効果のなくなった薬草を取り除き、鮮やかな手際で脱脂綿に染ませた薬を塗っていくコルウス。スッパリと切り裂かれたはずの顔は既に肉が付き始めており、素早く縫い付けた縫合糸もあってかキズ跡すら残さずに完治出来そうである。


「アカリナさん達は?」

「あの二人ですか。奇跡的なまでにケガを負ってませんよ。キミに叩き折られた鎖骨以外ね」

「え、ゴーレムに全身を握り込まれても!?」

「ええ、コモドさんがどう命じたのかは分かりませんが、彼の愛機は骨一つ折らずに下ろしたようです。とんでもない技術ですよ、流石は一流の職人が作った一流のゴーレムです」

「しかしあの時はコモドさんの方が……」

「一流のゴーレムは、時に持ち主よりも優れた判断力を発揮します。コモドさんのゴーレムは某も使ってるから分かるんですよ」

「先生も、ゴーレムを……?」


 ケンの目には、ズボンのポケットにねじ込まれた黄金のサモナーが飛び込んで来たのであった。そこに封じられるは患者をまとめて搬送したコルウスの愛機、アンビュランナー。

 

「某の、人を助けることに特化した愛機ですよ。キミもコレで運ばせて頂きました」


 その晩のことである。辺りが夜に染まりゆくにつれ、ただでさえ少なくなっていたペンタブルクの町はより一層の静寂に包まれ一種の不気味さすら醸し出していた。そんな中でも白く浮き上がるラァワの屋敷に、コルウスは訪れていた。


「コモドの工具です。コレがあればあの子の脚も直せることでしょう」

「ありがとう御座います!」

「夕食はお済みかしら、もしよかったらお茶でもいかがです?」

「ありがたく、頂戴いたしますよ」


 茶を口に運びつつ、二人は話を始めた。


「ウラルさんの様子は?」

「今は安定しております。ですがトシがトシですからね、毒の影響がまだ残っておりまして」

「毒が抜けても、体の機能までは中々戻らないのね……」


 解毒は、ただ毒素を体から抜けば良いというモノではない。毒によって低下した身体機能を取り戻して初めてこの治療は完遂されるのだ。だがウラルの治癒力は低下していた。その原因こそ術の使用による生命力の低下である。


「しかし某の専門は外科、内科に関しては、もうアレ以上は他の先生にお願いするしか……」

「ごめんなさい。でも、気になってしまいまして」

「嗚呼、良いんですよ。某も先生から聞いてますから。なんだって、姉の婚約者ですからね」


 茶請けの菓子をかじりつつ、言葉を続ける。


「それはそうと。こちらの書類もついでにお願い出来ますか」

「あらコレは……そうだったわね、ケンちゃんまだだったわね」


 コルウスの差し出した書類には『予防接種同意書』と書かれていた。


「サインすれば良いかしら?」

「ええ。邪竜怪虫の予防接種は義務ですからね。某の方で打たせてもらおうかと」

「邪竜ね……そういえば、コモドの発作、そろそろだけど大丈夫?」

「今のところ確認されてはおりませんが……何とか、この日までには治療を終えたいとこですね……」


 暦に打たれた、赤い丸を見ながらコルウスは呟いた。


「お薬持ってくるわ。ちょっと待ってて」




 コルウスがラァワの屋敷を訪れているのとほぼ、同時刻のことである。


「おいノギマー、向こうは大丈夫か?」


 その数十メートル先にて、顔も口も大きな男が物陰にいるもう一人の男に話しかける。


「大丈夫だ、ガシム。しかしオドーンさんの工房が潰されてからたまったモンじゃねぇよな」


 ノギマーと呼ばれた、面長で口の小さい男が答える。


「死神コモドさえ来なければな」

「コモドはまだ良いって、ゼーブル様に見つかってみろ。おれ達間違いなく粛清だよ」

「シッ、変なこと言うんじゃねぇって! 何処で誰が聞いてるか分かったモンじゃねぇんだぞ……」


 この男達、かつてはオドーンの工房で働いていた、落下したケンに吼えかかっていたあの二人である。ブラックバアルという組織の恐ろしさは末端にも知れ渡っていた。失敗した者は、逃げた者は、それこそ暗黒の向こうに抹消される。


「ヒェッヒェッヒェッ……」


 しかし非情にも、笑い声にも似た奇声が二人の元に響く。


「だ、だだ誰だ!?」


 物陰に縮こまる二人。だが次の瞬間、ノギマーの絶叫が響き渡った。


「ぎゃああああああ!?」

「あぁッ、ム、ムカデ!?」


 ノギマーの首には巨大なムカデが巻き付いており、その上でギチギチと締め上げていた。毒爪を開き、今まさに頚動脈に突き立て始めていた。


「ヒェッヒェッヒェッ! やっと見つけたぞお前らァ」

「探したぞ、オドーンの工房から生き延びておいて何故顔を見せんのだ」


 姿を現したのはビズトロン、その背後からビアルの声までもが響く。


「コ、コレには訳が……」

「制裁から逃れるため、か?」


 驚くほど冷たい声でビアルが問う。


「ゼーブル様からは逃れられない。本来なら今すぐ処刑するところだが、お前達には任せたい仕事が出来た」

「な、何だって……!?」

「ビズトロン、ガシムをこちらへ連れて来い」


 ビズトロンに片手で引っ張り出されるガシム。得物の先端でアゴの下を上げられ、ビアルと目が合った。


「死神コモドを討ちたいか」

「コモド!? や、やれるなら是非そうしてぇ、だがアイツはヤバ過ぎる!!」

「やれないというのか」

「無理だ、ノギマーと二人でかかってまともに触れることすら出来なかったんだぞ!」


 震える声でガシムは抗議する。


「良いかガシム。ノギマーの首に巻き付いているのは絞殺ムカデだ。ビズトロンの、いや操り手たる拙者の意思一つでノギマーの首は千切れ飛ぶ」

「ノ、ノギマーの首が……?」

「だがお前がこの仕事を引き受けたなら、あのムカデはノギマーから離れるだろう。どうだ? ノギマーを助け、更に上手くいけば二人とも幹部に昇格させてやらんこともないぞ。ゼーブル様には拙者が話をつけてやる」

「本当なのか!? おれ達が幹部に……!?」

「どうだ。受けるのか?」


 しばらくして、ノギマーの首からはムカデが消えていた。


「よろしい。決行日はこの通りだ。この日なら確実にラァワの屋敷にいる。首尾よくやれよ?」

「は、ハァ!!」


 逃げるようにそそくさと去ってゆく二人を尻目に、ビズトロンがビアルに向き直る。


「ビアル様ァ、あそこに歩いてるヤツが見えやせんか?」

「ほう……? おやおやコレはコレは……どうするビズトロン、出たついでにちょっと遊んでくか?」


 彼らの視線の先に歩いていたモノ、それは白衣を翻しながら歩くコルウスの姿であった。ラァワ邸から工具箱を受け取り、病院への帰路についていたのだ。


「ヒェッヒェッヒェッ……コルウス先生、だなァ?」

「その声は……こないだのオートメイトか!?」


 工具箱を置き、コルウスは白衣の内ポケットに手を添えて構えた。


「某に今更何の用だ! 報復か!?」

「そんなモンじゃないんだなァ……遊ぼうぜ、オレ様とよォォオ!!」


 いきり立つビズトロンの背後から、ビアルがそっと姿を現した。口角がわずかに上がっている。


「申し訳ないがねコルウス先生。ウチの人形に随分と懐かれたようだな」

「ビアル! 操ってんのはそちらだろう!!」


 メスが飛ぶ。棒手裏剣が迎撃する。ガチャリという音が地面に落ちた直後、ビズトロンの爪は襲い掛かったのだった。


「ヒェアァァーーッ!!」


 背後に流れる川の水を一瞬だけ確認し、コルウスは手を水面にかざす。相手の爪が到達するまさに直前に、コルウスは掌に集められた水を前方にかざした。


「念水術、リップルウォール!」


 水で出来た盾が爪を受け止めた。派手な水音と共に突っ込んで来たビズトロンに対し、縫い針を手に構えたコルウスが迎え撃つ。


「念水術、シアナレスター!!」

「同じ手を二度は喰わんぞ! ヒェッヒェッヒェッ!!」


 水で出来た糸が、自らに絡むその前にビズトロンは何とその機体を分裂させた。


「何だと!?」

「行けェ、絞殺ムカデ!!」


 その号令に合わせ、胴体にあったムカデ達が一斉にコルウスに向かって跳んだ。


「面妖な……念水術、プレスラッシャー!!」


 糸と化していた水が一斉にコルウスの手に集まった、その直後。高圧の水流が手刀の先端から放たれ、ビズトロン自慢の絞殺ムカデは次々と真っ二つ、地に落ちた。


「ヒェッヒェッヒェッ……絞殺ムカデを無効化するとはやりやがるな」


 分裂した体が再び合体しつつ、ビズトロンは言葉を発していた。


「こっちもとっておきがあるんだぜェ……兄貴ィィ!!」

「兄貴だと……!?」


 ビズトロンの腹部にある。バックル状のパーツに刻まれたブラックバアルの紋が光を放つ。咄嗟の判断でメスを打つコルウス、だが放たれた刃は紋から飛び出した何かが弾き飛ばし、そして飛び掛かって来た。


「ガルルルォォォーーーン!!」

「グハッ!?」


 コルウスの頬を何かが張り倒す。更にその首に冷たい感触が走る。驚愕する彼の目線に映っていたモノ、それはビズトロンと共通する人型に、異なる虫の意匠を融合させたもう一体の機械人形の姿であった。赤いビズトロンとは対照的な、青紫の装甲に銀のラインが入っている。


「紹介してやろう。オレ様の兄貴、ヴィネガロンだ!!」

「ガルルォン!!」


 独特な咆哮のみを発する機械人形、ヴィネガロン。その左手のムチがコルウスの首を締め上げ、右手には巨大なハサミが待っている。両腕を武装化させたその姿は、ビズトロン以上の戦闘特化型であることを示していた。ムチの根元にあるウィンチが巻き上げられ、ズルズルと引きずられるコルウス。彼の首を捻じ切ろうと、右手のハサミがガチガチと音を鳴らしている。


「流石は上級オートメイト……アレだけで終わるワケがないと、思っていたらやはり……!!」

「いかがかな、拙者自慢の機械兄弟は」


 したり顔で尋ねるビアル。


「念水……じゅッ!?」


 技名を唱えようとしたコルウスに、開かれたハサミから強烈な火炎が放たれた。


「ガハッ!? ゴホォ!?」


 その場から何とか転げ去ろうとしたコルウスだが、首に巻き付けられたムチが更に巻き上げられていく。引きずられる体に、ビズトロンが近付き声をかけた。


「どうだコルウス。詠唱なしのプレスラッシャーなどただの水鉄砲、兄貴のムチを断ち切れないだろうぜェ? ヒェッヒェッヒェッ」

「ガルルルルル」


 ヴィネガロンの唸り声も、何処か笑っているかのように聞こえる。


「我々の意に逆らう者は消す。例え腕利きの医師であってもな! 頼みのアンビュランナーも、今は使えぬようだな」


 ムチから解き放たれようと、掴むコルウスの手に血管が浮き出始める。


「そろそろ死んでもらおうかァ……兄貴、やっちまえ!!」


 コルウスの左手が密かに、ズボンの隠しポケットに差し込まれる。


「ガルルォォォ!!」


 ハサミのリーチまで届こうとするコルウスの首。喜び勇むような声を出し、ヴィネガロンがその凶器を振り上げた、まさにその時であった。 


「念水術……ルストリーマー!!」


 コルウスの左手に握られていたのは注射器であった。彼自身の魔力で一瞬にして集められた水、それをヴィネガロンのムチに振り掛ける。するとどうだろう、一瞬にして錆が浮き、ボロボロに朽ち果てていくではないか。


「ガル!? ガルル!!」

「兄貴ィ!? てめぇよくも兄貴に錆なんか付けやがったな!!」


 千切れたムチを首から外し、背後に飛び退くコルウス。ルストリーマー、それは集めた水に強力な腐食性を与える恐るべき技である。その威力たるや、数ミリリットルで防腐加工が当たり前に施されているであろうブラックバアルの上級オートメイトのパーツを一瞬で朽ち果てさせるほどであった。


「ゼェ……ゼェ……」

「ビズトクロー!!」


 息を荒げるコルウスに、激昂したビズトロンの爪が発射される。


「ガルルルォ!!」


 咆哮と共に、ヴィネガロンの開いたハサミから火炎放射が放たれた。その場から転がるコルウスだが、人形達の猛攻は止まらない。


「クッ……念水術、リップルウォール!!」


 咄嗟の判断で展開した術、その壁に阻まれビズトロン自慢の爪はコルウスに届く前に砕け散った。


「クソォオ!!」

「念水術、ルストリーマー!!」


 再び注射器に水を集めて術をかけると、爆風の間を縫って素早く投擲する。ガシャンと音を立て、硝子で出来た注射器はビズトロンの機体の上で砕け散る。ビズトロン自身の機体が、赤褐色に染まり朽ち始めた。


「アァッ!? おぉぉおれ様の体がッ!! イヤだ、朽ち果てるなんてイヤだァァアア!!」

「ガ、ガルル!? ガル! ガル!!」

「念水術……!!」


 息を整えながら唱え始めるコルウスの両手に今、コップ数杯分の水塊が作られようとしている。蓮華を思わせる手付きの中で、今にも弾け飛びそうな水球を腰だめに構え、叫ぶ。


「デュナムアッガー!!」


 撃ち出される高圧の水塊。ビズトロンとヴィネガロンの足元に着弾したまさにその時、強烈な爆発を起こして水塊は弾け飛んだ。辺り一面を白く曇らせてゆく。視界が晴れる頃には、コルウスの姿は何処にもないのであった。デュナムアッガーとは、集めた高圧の水を分子レベルで振動させて撃ち出し、着弾と同時に水蒸気爆発を引き起こす大技である。


「チッ、逃げたか。まァ良い」


 ビアルが呟いた。そこに、錆びた部位を押さえながら二体の人形が近付いて来る。


「ビアル様!! 助けて!!」

「その程度で慌てるでない。戻れヴィネガロン、そしてビズトロン!!」


 二体の人形を順番に格納し、ビアルはその場から立ち去るのであった。


「ハァァ……何とか着いた……」

「コルウス先生!」


 そこに近付いて来たのは、車椅子を動かすラビアであった。


「どうしちゃったのそんな黒コゲになって!?」

「ハハッ、ちょっと火遊びでね」

「そうなの……ってそれより!! 丁度良いとこに帰って来たわね!! コモドが、コモドの様子がおかしいのよ!!」

「何だって!?」


 慌ててラビアの車椅子を押しながらコルウスはコモドの病室に駆け込んだ。直後、コルウスの耳にはコモドの言葉にもならぬ声が、そして大きくきしむベッドの音が、同時に飛び込んで来たのであった。


「……発作か!!」


 既に看護師が何人か入っている。そしてコモドの様子はというと。


「ァァア……何処……だ……イヤだ……怖い……痛い……」


 何やら苦痛や恐怖を訴える言葉を大きな声でうめきながら、大量の脂汗を流して苦しむ姿を見せていた。顔中にキズ痕を浮かべ、額に血管が浮き上がり、両手で体のあちこちを押さえながら、陸に上げられた魚のようにビクビクと跳ねていた。体のあちこちに爪を立て、赤いミミズ腫れが体中に浮き上がっている。


「薬もらって来て良かった……頭おさえて!!」

「はい!!」


 痙攣と汗の止まらぬコモドを数人の看護師が押さえつける。その一方でコルウスは工具箱に入れて行った薬包紙を取り出し、中身を取り出し始める。タブレット状の白い錠剤が中に入っていた。


「口開けて!!」

「はいッ!!」


 コルウスは流れるような指示で看護師を動かし、錠剤をコモドの舌の裏に貼り付け、素早く閉ざす。薬効成分を砂糖に練り込み固めて作ったこの特殊な錠剤は、舌の裏で溶かすことでも摂取出来るよう工夫されていた。


「ゥゥウ……アァァァ……」

「ハァァァ……ラァワ様から受け取っておいて正解でしたよ……」


 徐々に、コモドの様子が沈静化していくのが見えた。だが防音の行き届いているこの病室の接尾であっても、あまりに大きな声、そして物音は隣の部屋には聞こえていたらしい。


「コモド……さん?」


 様子を見に来たケンが、病室の扉の前で腰を抜かしているのをコルウスは目撃したのであった。


「ケンさん……コモドさんのことについて、貴方にもお伝えしなければならないことがあります」

「……分かりました」




「そうか、オドーンの工房の生き残りがいたのか」

「はい。始末も兼ねて、例の仕事を任せることに致しました」


 ビアルが、ゼーブルに報告を入れる。


「例の仕事……オートメイトだけで済ませようとしていた、アレか」

「ええ。新月の晩に、コモドにぶつけてみようかと。そうすれば、拙者が出る必要はなくなりまする」

「そうかそうか……ビアルよ、よく考えたなふはははははは!!」


 高笑いを上げるゼーブル。その仮面の下に、凄まじく邪悪な笑みが浮かんでいるのは想像に難くない。


「ただ殺すよりも良い方法ではないか。ラァワの屋敷も破壊出来よう。更にコモドが、あの状態で町に解き放たれてしまえば……」

「面白いことになりましょうぞ……あのラァワですら、泣き叫びながら絶望する顔が浮かびまする……」


 彼らの話すその背後で、数体のゴブリンによってビズトロンとヴィネガロンの兄弟人形は修理されるのであった。朽ち果てたパーツは外され、防腐加工を丹念にかけ直している。


「ルストリーマー対策が要るな……医者如きに敗れる人形など上級オートメイトの恥、鉄クズ同然と知れ。良いなお前達」


 横たわる二体に向かい、ビアルの冷たい声が響く。


「例の生き残りを使うとなれば、ビズトロン達は監視役として出す方が良いだろう。ゴブリンの用意をしておくのだ」

「ハッ!」


 彼らの企むことは一体何か。その日、コモドに一体何が起こるのか。コルウスの口からケンに明かされる、コモドの秘密とは何なのか。新月の夜の闇は、一体何を引き起こすというのであろうか。


~次篇予告~

新月の晩、灯りなくさば闇の中、コモドの体に異変が起こる

そんな中現れる刺客達、彼の運命やいかに

次篇『新月の闇が戦慄を呼ぶ』をお楽しみ下さい

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