第十一篇『鮮血に染まるスミナ河』中
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静寂を破り、大きな水音を立ててその姿は現れた。かがり火と月に照らされたその姿は、まさに異形と呼べる機械人形の姿であった。黒い機体、せり上がった肩に緑の眼、だがその眼は透明なカバーの下にあり、コモドの顔が映っている。所々に入った緑のマダラと、腹部から脚にかけて銀のウロコを思わせる装甲が目立っている。
「機械人形……! しかしナビスじゃねぇな、ヤツは何処だ!!」
すると人形はまっすぐコモドを指差し、言い放つのであった。
「お前のすぐ、背後にいる」
「何だとォ!? ……うごォ!!」
コモドが振り返った、その直後。彼の左肩を何かが貫いた。自らをキズ付けた物体を目で追うと……
「ナビス!!」
「シャシャシャシャ!! コモド、オ前ノ考エモ浅ハカダナ!」
そう言うなりナビスはコモドを刺した関節針を格納する。そして先程までコモドの後ろにいたはずケンは口元を手で塞がれ、喉元に鎌をあてられた姿で囚われていた。
「くそォ……」
左肩から流れ出る血を押さえながらコモドがうめく。
「ゼーブルカラ聞イタゼ。オ前、オレヲ仕留メタ銭デ育ッタッテナ!」
「それがどうした!!」
「コレモ何カノ縁ダ。遊ンデヤル。ダガ追イ付ケルカナ? シャシャシャシャ!!」
そう言うなり、ナビスは鎌の柄でケンの鳩尾を突いて気絶させると、肩に担いで暗闇に消えて行くのであった。
「待てナビス!! ……くっ、足止めか」
コモドの手甲が、人形の放った一撃を受け止めていた。人形の手甲にあたる部分に、鉄板を何枚か重ねた扇子のような部位が存在する。それが展開することで、鋭い刃と変わっていたのだ。
「くそ……何とか、何とか抜け出す方法はねぇモンか……」
ふくらはぎと左肩から流れ出る血をターバンで無理矢理押さえつつ、コモドは構えをとった。同時に人形――イリーヴも構えをとる。嗚呼なんということだろう。この対峙する二人は今、十年ぶりの再会を果たしたかつての親友同士なのである。だが、どちらも、互いの素性を知らぬままに、刃を向け合うことになっているのだ!
「でやァッ!!」
「フンッ!!」
痛みを堪えて放たれるコモドの斬撃と、イリーヴの鋼の腕がぶつかり合う。今思えばあの時、ケンから刀を預かったのが迂闊であった。その刀を握った右手に否が応でも力が入る。この機械人形を破壊するか、さもなくば上手く逃げ出すかせねばならない。コモドの表情は焦りと苦痛で歪み切っていた。目元が終始、ヒク付いている。
打ち付けられていたはずの刀が宙を舞う。イリーヴの鋭く尖った指先が揃えられ、貫手が飛ぶ。寸での所でかわしたコモドはすぐさま相手の腕を取ると捻り上げ、腰を落としてイリーヴの体を宙に浮かせた。だが投げを決められたはずイリーヴの脚がすぐさま地面を叩き、重い機械人形とは思えぬ身軽さで一瞬にして元の位置に戻る。そして機械の腕がコモドの首に回された。
「ぐゥゥ……!!」
「生身の存在でよくやるモノだ、死神コモド」
「流石はブラックバアル製のオートメイトだぜ、俺の情報なら既に入れてあるみてぇだな」
激痛を堪えて強く握り込まれた左の拳に呼応して、コモドの手甲から刃が展開、同時に放たれた肘打ちがイリーヴの腹部を捉えた。しかしその刃を、相手は片手で掴み押さえている。キズを付けるまでは至らなかった。コモドはイリーヴの腕を掴んでいた右腕を一度前方に突き出すと、これ見よがしに刃を展開してもう一発の肘を当てようとした。だがイリーヴの掌打が彼の背中を押す。
「それを待っていた……!!」
その場から転がり、コモドはケンの持っていた刀を拾い上げると足元を狙って投げ付ける。コモドの同じく、右の脚をイリーヴは損傷した。バランスを崩しながらも、イリーヴは刀を外して投げ捨てる。
「一方的に名前を知られるのも気分が悪い、名を名乗れ!」
左肩に開けられたキズ口を右手で押さえ、コモドが問う。
「我はあくまで一介の機械人形、死にゆく者に名乗る名などない」
「随分と躾が良いじゃねぇかァ……!!」
コモドの手甲剣と、イリーヴの手首から生えた扇子状の刃。斬撃と斬撃がぶつかり合い、火花を散らす。イリーヴの体格はコモドの一九〇センチもの身長よりも遥かに大柄な二〇五センチ、接近戦に持ち込むとその異様な迫力に怯みそうにもなる。無表情なはずの機械の緑の眼、しかしそこには確かな殺意が宿っている。更に打ち込まれた左の手が激突、組み合い、両者の腕が拮抗する。次の瞬間、両者の放った左の蹴りが互いの脇腹を刺す。だが機械のヒトの差か、押さえてうずくまったのはコモドの方であった。
「クッ……このままでは……ッ!!」
機械人形相手に長期戦となっては、コモドの体力は続かない。更に早くケンを探し出さねば、何をされるか分かったモノではない。ピアスに付いた牙を指で弾き、青く輝く揺らぎを全面に出しながらコモドが構える。揺らぎを握り締めると手甲の刃に光は移り、そのままじりじりと間合いを測る。一方のイリーヴもまた広げた掌を顔面の前にかざすと、カバーの下で上を向いていた眼の角度が起き上がり、丸い眼がコモドに向く。
「響牙術、ヴィブロスラッシュ!!」
「機動法、バーレルアイザー!!」
振りかぶった姿勢から放たれる青い光の刃が宙を飛ぶ。一方で、イリーブの眼が光り、その光を受けた掌から尖った指先に力が走ると同時にコモドに向かって突き付けると、稲妻型の閃光が放たれた。ぶつかり合う両者の技が爆発、それが収まるのを待たずに両者は拳を振りかぶると内部に突っ込んだ。
煙が収まった時、互いに拳を振り切った姿がそこにあった。だが片やその拳は空を切り、もう片方の拳は相手の左頬をしっかりと捉えている。その顔からはかすった跡が焦げ目となり、煙を上げていた。やがてその場からよろめき、当てられた方の足腰が崩れ始める。倒れたのはイリーヴの方であった。
「うぐ……!!」
イリーヴは殴られた箇所から、次第に頭部を抑えてうめき声を出し始める。緑色の眼の点滅が今のダメージの程を表しているようにも見えた。そして眼を覆うカバー、その向こうにあるモノをコモドは見てしまった。血管が絡みつき、脈動する様子が見える、自らの頭にも持つあの器官を。
「脳味噌だと……造りモノか、それとも……アンタも改造されたのか?」
「何をふざけたことを! 我は生まれし時から一介の機械人形……機械……あれ……」
様子がおかしい。例え敵とは言え、機械人形の尋常ではない様子に気付いたコモドが手を差し伸べようとする。
「おいどうした!? 単なる故障には見えんぞ、一体何が起きてんだ!?」
「寄るなッ!! うぁぁ……何だ、何だ今の光景は、ヒトの顔は! 我に両親など存在せん、我は人形、我は機械人形……!!」
「おいッ!! しっかりしろ、俺が言うのも何だがしっかりしろッ!!」
「寄るな、寄るな死神コモド、お前は我に何をしたァ……!」
両手で頭部を抱えたまま、イリーヴは河の中に飛び込むと姿を消してしまった。それを見ながら、コモドは呟くのであった。
「何だったんだ……? アイツもナビスのように改造された存在なのか? それはそうとナビスのヤツは何処に行きやがった!?」
刀を拾い上げて布で包み直し、更に懐から治癒符を取り出すと右脚を見る。ターバンで無理矢理押さえていたキズ口から再び血が垂れ始めた。えんじ色のターバンには、血が染みたとしても違いなど分からない。ただ鉄とタンパク質の混じった匂いが鼻を突くことによってのみその事実を告げるのである。コモドは懐から薬包紙を取り出すとその中身をキズ口に振り掛け、治癒符を上から貼り付けた。その上から先程のターバンを固く巻き付ける。同じように左肩にも処置を施すと、
「さてさて、使うか」
コモドはそう呟くとピアスの牙を弾いて揺らぎを出し、そのまま弾指を鳴らすことで揺らぎを散らせた。そして弾指によって立てられた人差し指を眼帯についた義眼にあてると、彼の視界には青い人影が鮮明に現れたのであった。
『申し訳ないけど、私は夜にお客様が来るから一緒には出られないわ。その代わりだけどケンちゃん、ちょっと足首を出してくれない?』
『え、こうですか?』
出発の直前のことである。ラァワが取り出したのは、魔女摂符の一つであった。それをケンの足首に巻き付けて貼るとコモドの方を向くのであった。
『そう。そしてコモド、式神符の使い方は分かってるわね』
『嗚呼。式神符は動いた跡を空中に残す、それを何かしらの術で魔力を空間に放出すれば軌跡を見ることが出来るようになる。ただし、魔力そのモノを見る方法でね』
ケンに説明するように、コモドはそう話していた。そして現在、コモドはまさに自らの話した方法でケンの行方を追うのであった。その一方でイリーヴは河から下水道へと入り込むと、頭を抱え悶絶したまま何度も何度もその機体を水に浸けては眼を覚まそうと試みるのであった。
「我は……我は……!?」
「うぅ……あ、あぁ……?」
ケンが目を覚ました。ぼやけた視界の中、目をこすろうとして身動きが利かないことに気付く。ガチャリ、という音が響いて彼は気付いた。自分が大の字型に拘束されていたことに。
「気分はいかがかな?」
低い声が響いた。同時にケンの表情が戦慄に染まる。声のした方に首を回し、向けると……
「ぜ、ぜぜ、ゼーブル!!」
「久しいな少年。いや、魔女集会の晩以来ならそこまででもなかったか」
あの赤い複眼が立っている。ケンの脳に、絶望が一気に押し寄せたのは言うまでもない。その首から下には裏地の赤いエリ付きのマントを着用しており、いかにも悪の親玉といった様相がよりケンの恐怖を煽り立てる。
「僕を、いや僕に何をするつもりだ!!」
「ほう、ハッキリとモノ申すようになったな。良い進歩だ」
「答えろッ! 大体ここにコモドさんが来たらお前なんか……」
「ほほう? 随分とあの男を信用しているようだな。だが!」
ゼーブルはポケットからカプセルを取り出し、光に透かして見せた。
「その信用は今日を限りに崩れ去る。他ならぬ貴様がその関係を破壊するのだ。このオルニソによってな」
中に蠢く奇怪な虫を見せつけられ、ケンの瞳孔が一気に収縮する。
「ぼ、僕にそれで何を……!?」
「今から貴様を我が意のままに動く傀儡としてくれる。このようにな」
そう言ってゼーブルの向いた先には、ゴブリンの顔面を思わせる仮面を付けた男――ガブルドが横たわっている。そこに手を向け、複眼を光らせるとゼーブルは唱えた。
「意識の底に眠る我がしもべよ。その身を起こし我が元まで出でよ」
よろよろと歩いてきたガブルドの額に、先程と似た虫が浮き出ているのが見える。皮膚の下に潜り込んでいるのだ。
「この者は額からオルニソを切除すれば元に戻る。だが貴様にはより有効な方法でコレを与えてやる」
そう言ってゼーブルは細い筆を取り出すと赤い染料に浸し、ケンの額に真一文字に線を描き込んだ。更に生え際まで筆は続き、グルリと一周すると過酷な運命を告げるのであった。
「今から貴様の頭蓋骨を切断し、絶対に取り出せぬだけでなく外から見ても分からぬ方法で、オルニソを植え付けてくれる」
「イヤだ、イヤだ……! やめろ……!」
「泣いても喚いても無駄なことだ。ガブルド!」
操られたガブルドの手がケンの頭部を左右から押さえ込み、無理矢理にでも正面を向かせようとする。一方でゼーブルの手には小さなタガネと金鎚が握られており、それを見たケンの顔は汗と涙でグシャグシャになり始めていた。
「イヤぁあああああああああ!!」
「少々痛いが、すぐに楽になる」
タガネの刃先が当てられた。最早これまでか。両目をギュッとつぶったケン、恐怖に塗り潰されたその瞬間であった。
「ウッ!?」
金属の塊が床に落ちる音が響く。驚いたケンの目に映ったのは、金鎚が手から離れて押さえ込みある方向を見るゼーブルの姿であった。その押さえている手には青い揺らぎがかすかに見えている。ゼーブルの視線の向こう、そこには見覚えのある片方結びの銀髪が揺れる、あの姿が立っていた。
「コモド……! なんという早さで駆け付けおるか!!」
「コモドさん!!」
マントを翻しながら、コモドはまるで獲物を追うオオトカゲの如き勢いでゼーブルの元へと襲い掛かる。立ちはだかるゴブリン二体、だがその手斧を手甲で弾き飛ばすと、ゴブリンだったモノがその場に転がることとなった。
「コモドさん……!!」
「グゥゥオオオアアアア!!」
「ほう? ……これは面白そうだ」
コモドが突進する。手甲から生えた刃が襲い掛かる。ゼーブルはタガネをエリに仕込み、その場でかがめてかわすと手袋のついたまま正拳突きを繰り出した。十字に組まれた腕がそれを受け止めると、まさかの頭突きがゼーブルを襲う。衝撃を流しつつも後ろに下がったゼーブルであったが、更に追撃で蹴りが放たれる。小さな赤い宝石が、いくつか散らばるのが見えた。
「コモド、あの少年のためにそこまで怒り狂うか。アヤツは貴様の、一体何なのだ」
「ガァァァアアアア!!」
コモドの蹴りを放った脚から血が流れている。痛みなど感じていないのか。
「コモドさん……!?」
コモドの様子は、ケンの知っている彼とは少々異なるモノであった。彼は確かにケンを助けに来た、そのはずである。しかしケンのことは一瞥もすることなく、ただ目の前の敵を排除せんと挑みかかっているようにも見える。おまけにその口から放たれるモノは凄まじいダミ声の咆哮のみ、元々の低音と相まって恐怖すら抱かせる印象を与えていた。イリーヴの銛でキズ付いたはずの脚からは依然血が流れ続けており、あまりに痛々しい姿はケンですら思わず目を背けさせる程である。そして顔面には、刻み込まれたキズ跡が赤く充血して浮き上がり、凄まじい形相となっていた。
「ふふふ……ふはははははは!!」
遂に右の手袋を抜き払い、ゼーブルは毒手を構えた。
「見たぞ死神、その真の所以を……!!」
ゼーブルがマントを脱ぎ捨てた。その下には黒い革のツナギを着込んでおり、肩にかかったエポレットとサッシュが目立っている。尖った爪と掴みかかる手、迫る貫手と狙い打つ拳、刃と毒の応酬が始まった。互いにノーレンジに持ち込みつつも一歩も引かぬ壮絶な打ち合い、その度にコモドの左肩からダラダラと血が溢れてくる。キズが開いてる、まさにそのはずであるのにコモドの動きは衰えることがない。
「……キリがない。狂気には狂気で返すがやはり礼儀か」
その場から素早く間合いをとったゼーブル。エリから取り出したタガネを毒手に刺して押し込んだ。流れ出た血に毒が反応し、赤い煙が上がる。何処に窓があるかも分からない部屋の中で毒ガスを昇らせる、そんな様子にケンが叫んだ。
「コモドさん! コモドさん! 流石にまずいから早く助けて!!」
だが、よりにもよってその声に今反応したのは、赤い煙を手から上げているゼーブルの方であった。あの不気味なハエの顔がケンの方を向く。
「ならば貴様から先に片付けてくれる」
「ええっ、何でッ!?」
右手を振りかぶったゼーブル、無抵抗な相手に文字通りの猛毒を浴びせようとしたまさにその時であった。
「響牙術、ヴェレスネイカー!!」
「何ィ!?」
ゼーブルの腕に赤いターバンが巻き付けられる。動きを封じられたゼーブル、その向いた先に待っていたモノは、
「ケンちゃん、今助けるからな!!」
血で濡れた服を脱ぎ捨て、拘束する鎖を外すコモドの姿であった。ケンの頭部を押さえていたガブルドを払いのけ、ケンの四肢を開放すると手術台から下ろし、ゼーブルの方をじっと睨みつけている。
「死神コモド……次に会う時を楽しみにしておるぞ……!!」
ゼーブルは、ガブルドをその場から回収するや否や弾指を鳴らし、複数の赤紫の炎となって飛び去るのであった。
「ケンちゃんすまねぇ、遅くなっちまったな……!!」
「コモドさん、そんな……それより早く脱出しないと!」
ケンの手をとり、その場から走るコモド。先程のアジトからは広い地下通路が繋がっており、その中央に細い水路が見える。アジトは下水道から繋がっていたようだ。だが部屋を出てしばらくすると、あの耳につく不気味かつ特徴的な笑い声が響き渡るのであった。
「シャシャシャシャシャ!! コモド、ココカラ生キテ帰サンゾ!!」
「その声はナビスか!!」
同時に背後に分厚い扉が落ちる。更に出入口に続く道までも塞がれ、天井が開くとあの痩身が鎌を二つ手にして舞い降りる。
「二人マトメテ斬リ刻ンデヤル。シャシャシャシャシャ!!」
「ケンちゃん……刀、離すんじゃねぇぞ……!!」
「はいッ!!」
まるで舌なめずりでもするかのように、ナビスの口からは節のついた巨大な針が、デロリと垂れ下がっては戻って行く。
「良イカコモド、アノ扉ヲ開ケル方法ハ、ワズカ二ツ。オレガ開ケルカ、オレガ死ヌカダ!」
「御親切にどうも、思ってた以上に口が軽いな。お前さん捨て駒にされた自覚はあんのかい?」
「ソレガドウシタ。ソンナコトヨリ、オ前サエ消エレバ、オレハマタ好キニ斬ッテ殺シテ回レルンダァ!! 死ネェ!!」
狂気と狂気の思わぬ利害の一致をコモドは見た。ゼーブルが見出した怪物は、死してもなお怪物のままであった。死すれば仏、などという理屈はこの世界には存在しないのである!
「シャシャシャシャシャ!!」
両手に握られた鎖を、手首を使って回し始める。先端の鎌が旋回し、徐々にその姿が見えなくなってゆく。コレを二段構えで放つのが彼の持ち味である、と話していたウラルの言葉を思い出しつつコモドは構えをとった。しかし同時に彼自身が見たあの一撃がよぎる。口から放たれる折り畳み式の巨大な針、今やナビスの売りはこの針すらも含めた三段攻撃へと進化していたのだ。ただしそれだけがナビスの手ではない。鎌の動きが、止まった。
「帯電術、交差放電!!」
合わせられた鎌の刃から、放射状の赤い電撃が放たれる。咄嗟にマントで防いだコモド、背後にケンを置いて庇おうとする。それを見たナビスは術を解くと、今度はその場から跳躍する。壁を蹴り、あっと言う間に背後へと回り込んだ相手にケンが刃を向けた、その時であった。
「バカメ! 交差放電ヲ喰ラウガイイ!!」
よりにもよって交差させた鎌をわざとケンの持つ刃にあてて術を発動したのである。
「ぐわあああああああああああああああああああ!!」
「ケンちゃん!?」
得物から直に電撃を流されたケンを助けるべく、コモドはマントを脱ぐと背後からケンの体に回し、ナビスの元から引き離した。モロに電撃を喰らったケンは痙攣しており、その手は硬直して刀を離そうにも離すことが出来ない状態であった。相手はこうなることを見越してこの方法で交差放電を使ったのである。
「ナビス、てめぇ……!!」
「見タカ、オレノ腕前ヲ。オ前モ、カクノ如クナルノダ!!」
ケンを壁際に寝かせてマントを被せると、コモドはナビスの方を向いた。風の吹かぬ閉ざされた地下道で、怒気による揺らぎがその銀髪を揺らしている。
「巨悪によって蘇った悪霊め。お前の自由も今日限りだ!」
「ソンナ台詞、生前飽キル程聞イタゼ。皆殺シテヤッタガナァ!!」
「凶悪通り魔ナビス! その首、もらい受けるぞッ!!」
やっと書けましたイリーヴ及びゼーブルとの直接対決……!!




