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異世界奇行 ~ダーメニンゲンの詩~  作者: DIVER_RYU
第一集『暗黒組織ブラックバアル』
22/61

第十篇『人喰い蛇はかく語りき』下

この物語には猟奇的な描写が時折現れます。御注意下さい

「コモドったら遅いわねぇ」


 窓から月を眺めながら、ラァワが呟いた。


「きっと工事が遅れたか、もしくは宴が盛り上がっているんでしょう」


 ケンは何処か呑気であった。覚えたての文字を試すため、絵本の一つを読みながら。


「……そうなら良いのだけどね、何か妙な胸騒ぎがするのよ」


 そう言って、ラァワは自室に入っていくのであった。




「……ハッ!?」


 その夜、ウラルは突如目を覚ました。額には大量の汗をかき、左の手元はガタガタと震えている。


(何て夢だったんだ、アレは私の故郷の光景などではない! 何故ヤツが、今になって私の夢に出てくるんだ!?)


 明かりを点け、左手に手甲を握り締めるウラル。するとしばらくして、廊下から何やらざわめきが聞こえ始めた。徐々にその音が近付き、遂に扉が開く。担ぎ込まれた男は背中から血を流しており目をうっすらと開けたままぐったりとしている。そして運び込んで来た人物そのものに気が付いたウラルが声をかけるのであった。


「コモドさん!?」

「ああウラルさん、夜中に起こしてしまって申し訳ねぇです」


 コモドは息を切らしており、担ぎ込んだ男を病院の面々に任せるとウラルの方に近付き話し始める。


「いえ良いんです。夢見が悪くて起きてたんで、丁度良かったとこです。突拍子もない変な夢でしたよ」

「変な夢……?」

「あ、気にしないで下さいな。それよりあの方には一体何があったのです」

「通り魔だ、変なヤツにやられたんです。背中にざっくりとやられましてね。で、そいつは絶妙に姿を隠しながら、鎖を付けた鎌をこう、ブン回してですね」


 ターバンの端を手でびゅんびゅんやりながら、コモドが説明する。その内容を聞くや否やウラルの表情に変化が現れるのであった。それを見たコモドは質問を投げかけたのである。


「……その様子だと、ウラルさん何か知っていますね?」

「やっぱりそうだ……ヤツだ、ヤツが生き返ったんだ……いやそんなはずはない、あんな昔の死人が、目を覚まして誰かを襲うなど!!」

「ウラルさん?」

「そいつ、何か変わったことは言ってませんでしたか?」

「えぇーと……あッ! 言ってた、何か『殺す相手は無抵抗な程面白い』とか抜かしてましたぜ」

「何てことだ……私はまだ夢を見てるのか? いや、何で今になって夢に出たのか、ようやく分かりましたよ……」

「……さっき言ってた夢のことですか。詳しく、お聞かせ願ってもよろしいんで?」


 ウラルは一息つくと手甲を置き、ゆっくりと口を開き始めた。


「二五年も前のことです。私はある闘術士討伐の依頼を受けました。そやつの名はナビス・ダムセルバグ、通称吸血ナビスと呼ばれる男です」

「吸血ナビス……聞いたことがありますぜ、俺が初めて見た赤い筒はソイツのことでしたな……」

「ヤツは夜になると通行人を襲っては得物である鎌で斬り付け、キズ口から血を舐めるという猟奇殺人者で御座いました。闇に紛れ、抵抗出来なさそうな相手だけを狙って襲うというタチの悪いところがありましてですね、お陰で個別に討伐に向かった熟練の闘術士は相手にされず、かといって賞金に目が眩んだ若い闘術士は尽く犠牲になりました。複数人で囲んで追い詰めたこともあったそうですが……ヤツが単なる臆病者ではなく、あまりに狡猾な腕を持つ闘術士だったという事実だけが残りました。私が受けた討伐対象でもね、一番高額な賞金が掛けられてたんですよ」


 頭の切れる狂人程厄介な相手はいない。コモドの脳内では先日「お世話」になったゼーブルの姿が浮かんでいた。


「あの頃は俺も覚えがありますよ、暗くなったらすぐ帰るように母さんから言われてましたし」

「今のペンタブルクを見るとね、あの頃を思い出すんです。夜になった途端にヒトが消える、あの光景をね……」


 その舞台は魔女喰いの森。昼間も暗きこの危険地帯にウラルは潜入していた。野営を張り、胸には許可証を入れ、手持ちのアダーを磨いている。香炉の中身に火を着け、昇る煙で危険生物を除ける香りを出す。魔女喰いの森には無法者の潜伏地という一面があることと、ナビスの現れるペンタブルクの街から比較的近いという条件からウラルはこの地に足を運んだのであった。


「ヤツの得物は二丁の鎌。それも鎖で繋いで振り回し、無軌道かつ遠心力の利いた斬撃を伴った二段攻撃が持ち味でした。あの連撃を見切るのは至難の業で御座いましてね。あの時私は、ナビスの隠れ家をあらかた突き止めておりました。ですが……」


 野営の天幕を突き破り、一撃が投げ込まれる。咄嗟に防いだウラルの手甲であったが、同時に放たれた二撃目が明かりを消した。


『おれをやるためだけによくここまで突き止めたな、流石だぜ人喰いウラル。シャシャシャシャ……』

『吸血ナビスだな。観念しろ!』

『シャシャシャシャ!!』

『何が可笑しい?』


 明かりを消した鎌を引き戻し、手に持って斬り付けながらも不気味な笑いを浮かべ続けるナビスにウラルは問う。


『お前が探りを入れてることくらい知ってんだよ。そんでおれの住処に火でも着けるつもりだったんだろう?』

『それがどうした』

『だったらこうするまでさ。帯電術、交差放電!』


 二本の鎌の刃を合わせるや否や、その交差点からすさまじい電流と共に閃光が放たれた。思わず目を閉じ、右腕を押さえたウラルであったが、ナビスの姿は消えている。


『シャシャシャシャ!! 人喰いウラル、お前に良いことを教えてやる』

『なんだ!』

『明日の夜、この場所にもう一度来い。お前は気に入った、相手をしてやる』

『何故だ。私をナメているのなら今ここで勝負したらどうだ!!』

『焦るな、焦るな、勝負をするからには楽しまねば。シャシャシャシャ……』


 それだけ言い残して、ナビスはその日姿を消した。


「ヤツは帯電術の達人でもありました。なので逃げ足そのものも随分と早かっただけでなく、中には電撃で麻痺したところをじわじわと斬り刻まれた者もいるとか」

「帯電術か……素質さえあればあらゆる金属を触媒として使える術だと聞いたことがありますねぇ」

「ええ、しかしヤツの恐ろしさはそこだけではありませんでした」


 姿を消したナビスを、ウラルはその日探し出すことは叶わなかった。魔女喰いの森ならとうに抜け出したと考え、夜のペンタブルクを探し回ったのである。だがナビスはその日、何処からも悲鳴を上げさせることはなかった。結局その晩のウラルの行動は徒労に終わったのである。だが翌朝のことであった。諦めて自宅に戻ったウラルが扉を閉めようとしたその時、その手元に矢が飛んで来たのである。


『誰だ!?』


 手甲剣を展開して飛び出すも最早誰もおらず、仕方なく扉に刺さった矢だけを引き抜こうとした。だがその矢に巻き付けられた紙を見るや否や、ウラルの脳裏にはイヤな予感が走っていたのである。


『今すぐ役場に行ってみな。そこで情報だけ掴んだら魔女喰いの森まで来い。今夜は楽しもうぜ。ナビス・ダムセルバグ』


 役場へと走ったウラル。そこには青ざめた表情で待機する男女の姿があった。


『あの方たちは?』


 受付の役人に尋ねたウラル。すると先程の男女が彼の元に寄って来て、叫ぶのであった。


『お願いします!! 娘と息子を、助けて下さいッ!!』

『娘さんと息子さんが!? 一体、どういうことなのです!?』


 ここに来て、ウラルは遂にナビスの思惑を知ることとなった。昨晩、ナビスは誰も殺してはいなかった。その代わりにある姉弟を攫ったのである。夜が来るよりも早く、子供達と共に姿をくらましたのだ。そしてこの男女の家の扉にも矢文を送っていたのである。


『お宅のお子さんは預かった。返して欲しくば闘術士ウラル一人を魔女喰いの森まで寄越せ。ナビス・ダムセルバグ』

『なんて卑劣な……!!』


 ナビスは公平な勝負をとことん嫌う性分であることは重々承知のつもりであった。だが二つ名付きの闘術士を相手にするためには関係のない子供まで巻き込み利用する性根の悪さまでは、流石のウラルにも予想がつかなかったのである。


『申し訳ありませんッ!! あの時、私が捕り逃したばっかりに……!!』


 平謝りするウラルを姉弟の両親は止めた。今はそれよりも、ただ助けて欲しいとだけ言って。


「そこまで腐ったヤツだったのですかい」

「ヤツは自分が有利になれるケンカでなければ決して買わないところがあります。こういう点に関しては皮肉にも、闘術士として生きていくには最も適した性格をしていたんですよ」


 姉弟の顔写真を胸に、ウラルは再び魔女喰いの森へと向かう。早く探し出さねばあの子達は殺される。あのうっそうとした森の中、闇に紛れながら放たれる二段攻撃か、はたまた帯電術か。あの環境であれば罠すらも考えられる。ただでさえ難敵である上に戦い方が環境と噛み合っており、ウラルは果たして如何にして攻略するつもりなのか。


『この子とこの子の行方が知りたいのです。分かる限りで良い、魔女喰いの森が怪しいと踏んでいるのですが』


 ウラルが向かったのは、魔女ラァワの館であった。


『こちら女性がスクリィで十八歳。男の子の方がコルウス、十二歳です』

『スクリィにコルウスね。承知したわ、お茶でも飲んでてくれるかしら。コモドにも会って行かれたらどう?』

『今日はやめときますよ。今まで見た中でも厄介な相手なんだ、正直生きて帰れるかどうかも分からない』

『そうなの。……確かに、イヤな感じがビリビリと来るわね』


 数十分後。占いの結果を手に単身魔女喰いの森へと向かう、ウラルの姿があった。


『全てが見えたワケじゃないわ。だけど私が見る限り、あの子達は生きているわよ、でも罠がいくつも仕掛けられているわね』

『罠など、とうに見え透いていることで御座います!』

『いや、あの子の周りにこそ多く仕掛けられているのよ。ちょっと見てくれるかしら』


 ラァワの取り出した占眼符に、姉弟の姿が映っていた。だがその近くの床には槍が仕掛けられ、更に天井にも何か細工が見えている。


『恐らくだけど相手は、あの姉弟と合流して身動きの利かない時を狙って来るわね。この手の狡猾さにはどう対処すれば良いか……貴方になら問うまでもないわね』

『ええ。使えるモノは何でも使え、親であっても子であっても、時には敵そのモノも、今回に関しては人質すらも。ありがとう御座いますラァワ様、お陰で糸口が見えそうです』

『それは良かったわ。じゃ、仕事が終わったらコモドにも会いに来てくれる?』

『是非とも、そうさせてもらいますよ』


 占いの結果と共に預かった魔女摂符の束を握り締め、更にベルトに付いたケースに新たな弾倉を収納し、手甲から取り出した魔触媒、メドウサイトを流水によって清めた。ウラル自身も今までにここまで入念な準備をしたことがあっただろうかと思う程の慎重さが、緊張感と共に訪れる。


「占いの結果とヤツの襲撃してきた角度から照らし合わせましてね。住処の位置は概ね思った通りの場所でした」

「問題はむしろ、その後ですよね……」

「ええ」


 住処の入り口に降り立つウラル。メドウサイトを通して見てみただけでも、壁や床にびっしりと罠が仕掛けられている。あと一歩でも足を踏み入れれば落とし穴があり、しかも底には丁寧にも尖った石が仕掛けられている始末であった。壁には筒が仕掛けられており、足元のヒモに引っかかれば毒矢の出迎えを受けることとなる。


「アレは一朝一夕で準備できるモノではありません。以前からヤツは用意していたのでしょう、自分の住処を突き止めた者が現れた時のためにね」

「そんな慎重なヤツが何故、ウラルさん程の闘術士の挑戦を受けたのですか。俺だったら迷わず逃げちまうとこですよ」

「それは私も疑問に思ってました」


 攫われた姉弟を見つけるのに時間はかからなかった。ラァワに見せてもらったまんまの景色がそこにある。早速ウラルは床を選んで部屋に飛び込むと、床から飛び出す槍を折り、迫り来る吊り天井を術で止め、姉弟を縛る縄を切るとすぐにその場を出ようとした、直後のことである。彼の右脚に、暗闇から迫る鎌が掛けられた。


『シャシャシャシャ!! よくぞここまで来れたな!!』


 転倒させられただけでなく血を流す脚を庇いながら、それでもなお姉弟を後ろに下げつつウラルは鎖の飛んで来た方向を見る。


『さぁお二人さん、こっちへおいでぇ。そっちにいたらそのうち天井が落ちてきて、そこのおじちゃん共々ペッチャンコだよぉ? シャシャシャシャ!!』


 姉弟に対し手招きしながら嘲る様に笑うナビス。


『ナビス!! この子達は関係ないんだ、逃がしてやってくれ!!』

『そうはいかんなぁ。そんなことしたら、ただでさえお強い人喰いウラルが、思い切り闘えるようになっちゃうじゃないかシャシャシャシャ!!』

『黙れ外道! 闘術士としての矜持を捨てたくせに、何故私の挑戦は引き受けたのだ!!』

『単純なことよ人喰いウラル。お前に目を付けられたヤツは逃げられん。逆にここで消しておけば、おれは今まで通り自由に殺して回れるというワケだシャシャシャシャ!!』


 ナビスという人物の本質がここに現れていた。彼は逃走の可否も含めて相手の実力を見抜くだけの眼力を備えていたのである。そして迎え討つ方が良いと考えた相手はこの時のように、いかなる手段を以てでも排除しにかかるのである。勝つべき戦に勝ち、負ける戦はしない。その在り方は奇しくも傭兵に似た稼業である流しの闘術士に近く、なおかつ本職たるウラルよりも優れていた。


『お前は確か宝眼術の使い手だなぁー? となると天井を止めているのは邪眼彫塑、お前の生命が尽きるのが先か、それともここでおれに斬り刻まれて崩れ落ちるのが先か。……ジュルリ、好きな方を選ばせてやるぜぇぇええええ!!』


 この時ナビスは気付いていなかった。ウラルの裏で姉弟の弟の方、コルウスがそっと、折られた仕掛け槍に手を伸ばしていたことを。そしてその指示を、ウラルの後ろに隠した左手がしていたことを。


『どのみち怖いのはお前だけだ。死に晒せ、人喰いウラル!!』

『……とんだ計算違いをしていたな、ナビス!!』

『何ィ!?』


 次の瞬間、ウラルの左手から放たれた槍の一撃が、ナビスの肩を一瞬にして貫いた。怯んだその隙にウラルは相手の懐に飛び込むと素早く組み付き部屋に引き込むと、姉弟に向かって叫ぶのであった。


『今だ、走れッ!! 部屋から出るんだッ!!』


 巴投げの要領でナビスを部屋の奥へ投げ飛ばし、自らは一気に部屋の出口へと転がり込む。そして天井に向かって弾指を鳴らした。止まっていた吊り天井の時が今、動き出す。


『やってくれたなウラルゥゥゥウウウ!!』


 天井を見るや否や前傾姿勢のまま飛び掛かろうとするナビスに対し、ウラルは手甲剣を分離させると部屋の出口の先に先端を刺して槍で固定し、一気に鎖を縮めることで部屋から脱出した。そして振り向き様に鎌を剣によって叩き落し、更にアダーの筒に封印符をあてての一撃が膝を捉えた。脱出する寸前で、ナビスは下半身を吊り天井によって挟まれることとなったのである。


『おのれ……何故だぁ……』

『無抵抗な相手を狙い、安らかな夜を奪った報いだ。吸血ナビス、神妙にしろ!!』


 封印符を額に貼り付けられ、ナビスはあえなく御用となった。こうしてペンタブルクの夜には再び安らぎが約束されることとなったのである。


「ナビスはその後五年で刑死しました。それから二十年、ほとんど忘れかけていたのですがね……」

「夢に出た、と」

「ええ。今になってあのイヤな笑い声を、あんなにもハッキリと聞くなんて思ってもいませんでしたよ。そして言うんです、『おれは蘇った、久々に旨い血が舐めたい』とね」

「コモドさん、そしてウラルさん。クムバさんなら無事ですよ」


 そこに、医師であるコルウスが近付いて来る。


「……考えたくもありませんね、ヤツが再び現れるなんて」

「ええ、かっ攫われた立場としては特にそうでしょう」


 気が付けば朝陽が窓から差し込んでいる。


「あの時助けてもらったことが、今の某の始まりですから。それともう一つ。来てますよ、ウラルさんにとっても始まりとなった、大切な人がね」


 扉が開き、一人の女性が訪れている。その顔を見るなり、ウラルの顔に笑顔が戻るのであった。


「スクリィ……!」

「ウラル、あなたの好きなお菓子持って来たわよ。よろしかったら、コモドさんもいかが?」

「あ、じゃ、いただきます」


 喪失と再生。あざなえる縄の如く訪れる喜びと悲しみが、ウラルという男の数奇な人生を如実に表していた。故郷を失い悪夢に苛まれる青きウラルは、それでもなお険しき闘いの道に軌跡を描き続け、いつしか人喰いとして恐れられる存在に成り果ててもなお彼は求め続けた。安らかな眠りと、心穏やかな夜を。菓子を口に入れ、窓の外を見つめるウラルの青い目には、再び活力が戻り始めているのであった。




「……ふぅ、コレは予想が付かなかったわね」


 ラァワは呟いた。蝋燭だけで照らされた部屋、机に並べられた五つの占眼符。その一つをめくり、弾指を鳴らすと虚像が浮かび上がる。そこには脇腹から鎖を伸ばし、鎌を振り回しながら暴れる男の姿であった。瞬く間に船頭を一人斬り刻み、そこに訪れた男の背中にも一撃を刺すと、更に一撃を加えようとして、飛び退いた。そこにもう一人、赤いターバンを巻いた男が飛び込んで来たからである。


「コモド、その男は……ヒトであり、怪物よ」


 そう呟くや否や虚像の出た占眼符を回収し、出掛ける準備だけをすると部屋を出るのであった。


「ケンちゃん、朝早くだけど出掛けるわよ」


 破壊と冒涜。儀式を穢され象徴を壊され、まさに暗黒をもたらされた現在のインクシュタットに、再び賑わう時は訪れるのか。ブラックバアルの暗黒は社会の陰から溢れ出し、今や世間そのモノに広がってしまっていた。そこに暮らす者達は、このような状況に陥ってもなおただ静かに過ごし続けるしかないのであろうか。かつてケンに対しラァワの告げた『元ある世界に帰る法 ただ生ける道のみ』という文言が重くのしかかる。彼は生き延びることが出来るのか、そしてどう闘い貫くべきなのであろうか。


~次篇予告~


シャァァァ……鎖ニ繋ガレタ、切レ味鋭イ刃ガ旋回スル……!!

通リスガリノ頚動脈ニ、刃ガ絡ミ鮮血ガ宙ヲ舞ウ……!!

次篇『鮮血に染まるスミナ河』 シャシャシャシャシャ!!

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