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異世界奇行 ~ダーメニンゲンの詩~  作者: DIVER_RYU
序集 『異世界奇行』
2/61

第一篇『独眼竜と転移少年の狂詩曲』下

ケンが辿り着いた場所、そこは見てはならぬ秘密があった……。

「ウッ……」


 ケンが次に目を覚ました時には、自転車ともども殺風景な部屋に放り込まれていた。


「目ェ覚ましたか、堂々あんちゃんよォ」


 その目の前には、恰幅の良い男がどっしりと座っている。さっきの二人もその背後で立っていた。


「話は全部聞いてるぜ、その変な輪っか付き魔動機で、地面突き破ってここに入ったんだってェ? えらく豪快なことするじゃねぇか、大人しそうな顔してよォ」

「ち、違う、アレで、自転車でそんなことは無理……」

「口ごたえには興味がねぇ!」


 縛られたままじたばたしようとするケンを、さっきの一人が蹴り転がした。


「こら、顔に傷が付いたらどうする、値段が下がっちまうだろうがァ!」


 恰幅の良い男がケンを掴み直し、なおかつねっとりと囁く。


「よォく聞けよォ。あんちゃんのようなひょろっこいヤツでもなァ、奴隷としては価値があるのさ。それも高く買うヤツがいてなァ。本来ならこの密造アジトを見ちまったヤツはあの世逝きだ、しかしアンタにゃあ価値がある。生かしておいてやる代わりに、イレザリアの金持ちに一生飼われるんだ、ありがたく思いなァ……」

「ぼ、僕を売るつもりだとォ!? 冗談じゃない、やめてくれ、ヒトがヒトを売り買いして良いと思ってんのか!?」

「良くねぇに決まってんじゃねぇか、だからこそ高値でも欲しがるヤツがいるのよォ。そしてオレは金が欲しい。それだけだァ!」

「うぅ、家に帰りたい……」

「泣くんだったら今のうちに泣きなァ、どうせ誰も助けには来ねェよォ、あんちゃんみたいなバカなんかぐあッ!?」


 男が光る何かに横殴りにされ、その場に倒れ込む。何が起きた分からないケンを置いて、二人の部下が飛んで来た方向に向く。


「だッ、誰だァ!!」


 恰幅の良い男が怒鳴りつけた方向に、いつの間に来たのか人影が立っている。スッと浮かび上がるその姿は、ケンから見ればもう満腹と言いたくなるような奇妙さであった。


(何だよコイツ!!)


 その手には深紅の手甲、ファーの付いた灰色のマントをまとい、頭というか頭部全体にえんじ色のターバンを巻きつけ、右目は眼帯で隠れている。眉毛は銀色で翼を開いた蝙蝠のような独特の形状をしており、ターバンの隙間からこれまた銀色の髪が一部垂れている。ターバンからわざと出している左耳には、何かの牙がぶら下がったピアスが目立っていた。


「知りたいか」


 その声は端正かつ渋い低音であり、ここにいるケンを含め、アジト側の勢力である三人と比べても異質なモノであった。このターバン男はピアスに付いた牙状の物体に右手を添え、人差し指を用いて弾いた。キィーン……と独特な音が響き、その指先に青白い波紋状の光が灯る。


響牙術きょうがじゅつ、ヴェレスネイカー!」


 ターバンに手をかけ、外すや否や一人に巻き付き締め上げる。えんじ色のターバンはまるで蛇のように動き、拘束すれども緩むことはない。そして投擲した本人がぐりっと首を回すと、頭の左側からファサリ、と銀髪の束が姿を現した。


(え、サイドテールの……おっさん!?)


 最早言葉が上手く出ないケン、その隣でさっきまでケンに対し恐怖を植え付けていた男が、今度は自分が震えながら声を上げた。


「お、お前は、死神コモド!!」

「知ってるなら分かっているはずだぜ、この密売アジトは今日限りで店じまいだ」

「ふざけるな、やれッ!!」


 剣を持って一人が、ターバンをとった銀髪サイドテール男ことコモドに挑みかかる。力任せに振り下ろされた剣をわずかな動きでかわすとその身体に拳が刺さる。落ちた剣を足で払いのけると、そのついでとばかりに相手を蹴り飛ばしてケンの真横に転がした。アジトを仕切っていたと思われるあの恰幅の良いデブ男はいつの間にか消えている。


「ケガはねぇか、少年」


 近付いてきたコモドは、先程とはまるで違う優しい低声でケンに話しかけた。


「怖い目にあったな、縄を解くから背中向けてくれ」


 そう言いながらコモドは、剣も持たずに近付いて来る。ケンは言われたとおりに背中を向けた。するとコモドは右腕を伸ばすと、グッとその手を握り込む。すると何ということだろうか、手甲の肘に近い位置から、ニュイッと黄金色の刃が姿を現したのだった。そして器用に縄を切ると、刃はどういう仕組みなのか手甲に戻って行った。


「あ、ありがとうございます」

「どういたしまして、と言いたいとこだが礼を言うにはまだ早い。ここから脱出するぞ、出口はあっちだ」


 コモドは、自転車を何とそのまま担ぎ上げた。ケンと比べても遥かに大柄な体格の通りに、相当な筋力の持ち主らしい。いつの間にか回収したターバンをマントの内側に突っ込むと、ケンを連れてその場から走り出した。


「そういえば名前を聞いてなかったな少年! 俺はコモドってんだ、そっちは?」

「勢頭、剣介。一応、勢頭が苗字で剣介が名前です」

「苗字? あー、ファミリーネームのことかな。ならば剣介って名前なのか」

「そうです、大体ケンって呼ばれてます」

「じゃあ、俺もそうさせてもらおうか。そっちは好きに呼べば良いぞ」


 出口まで、妨害する者はなかった。さっきの男も追ってくる気配がない。安堵したケンはコモドに訪ねた。


「さっきのとこは一体何だったの?」

「あれはゴーレムの密造工場だ。小規模ではあったが、ここは奴隷商まで手を出していたらしくてな。この国から見れば何処までも見下げ果てた裏の住人どもの巣窟よ」

「ゴーレムの、密売?」

「そうだ。ケンちゃんも見ただろ、でっかい土の人形を」


 一瞬だけ『ちゃん付け』に驚きつつも、ケンはすぐに聞き直した。


「あれ、勝手に作っちゃダメなの?」

「許可がねぇと作れねぇし、ちゃんとした技術者や工場が用意出来ねぇとそも降りねぇ。しかしちょっと前から、ある技術でゴーレムを比較的容易に使えるようになってから、この密造ゴーレムが社会問題になってね。ああいう粗悪品がマトモに動くのは最初のうちだけさ。おっと長々と話してる場合じゃねぇんだった。俺はあのアジトを仕切ってたアイツを探さんといかんからね、君は何処かに隠れていなさい」


 ケンはコモドに頭を下げると、自転車を引いたまま隠れ場所を探した。コモドは先程の場所に一人戻っていく。


「ゴーレム、実在するのか……いや、ちょっと待って、ここって」


 辺りを見渡すケンであったが、その目に映るモノは広がる荒地、所々転がる岩、時々空を横切る、翼のついた竜。気が付いてしまった。ケンは今、どういう状況下に置かれているのか。


「ここは……日本じゃない? 僕は……異世界にいるッ!? んなバカな、な〇う小説でもあるまいし!!」

「何を大声出しておるのかねェ?」

「うわァッ!?」


 背後から響いた声に驚くケンに対し、声の主はフンと失笑を上げながら近付いた。


「まさかコモドを呼び込むとは思わなかったなァ。でも今はヤツと離れちまったァ。その意味が分かっておるよなァ?」

「コモドさァァーーん!! こっちだ、こっちにいるゥゥーーッ!!」

「無駄だよあんちゃん、アジトはやられちまったが君を売れば十分に建て直せる、さぁ来い!!」

「やんなこったァ!!」


 ケンは地を蹴り走り出した。この荒野を噛み、タイヤは回る。勢いに乗せて彼は自転車に乗った。ペダルを踏む足に力がこもる。必死の形相でケンは男から逃れようと自らを進めた。


「全く、どういう魔動機かと思いきや。魔力じゃなくて筋力じゃねェか。すぐに追いつくぞあんなんよォ」


 男の手には、スマートフォン程の大きさの物体が握られている。懐からカードを取り出し、ニヤリと口角を上げると、


「エメト、セバジオン」


 呪文めいた言葉を呟くと、カードには模様が浮かぶ。そして、謎めいた物体に差し込んだ。


「よし、振り切ったか?」


 男が見えなくなったところで、ケンは振り向き呟いた。既に息は上がっている。恐らく彼の人生において、ここまで必死に自転車をこいだのは初めてのことだろう。


「ハァ、危ないとこだった。これ本が本なら、作者が作者なら僕ァ売られてたよ。良かったぁ、コイツがあって」


 自転車から降りて、ホッとした表情のまま歩き出すケン。くれぐれもナメないでいただこう、異世界モノというジャンルにおいてこんなに簡単にその世界の「文明の利器」から、自転車一つで逃げられることがあるだろうか。


「いやぁ、まさか今振り返ってアイツがすぐそこになってことがあ、あ、ああああああああッ!?」


 ケンはコントを思わせる展開と絶叫を伴って爆走した。彼の背後にあったのは何と巨大な手、それが地面から生えてこちらを捕らえんと襲い掛かって来る。


「まさか、ゴーレム!? そうか、アイツはゴーレムを造ってた、なら自分で持っててもおかしくない……!?」


 まさにその通りなのである。というか気付くのが少々遅かったようだ。


「うわあああああああああああああああああああ!! コモドすぁああああああああああああああああん!! こっち来てぇぇええええええええええええええええええええええええええええ!!」


 その一方で、追手の男はゴーレムの頭部に乗り込み、本体とは分離させて浮遊すると、手と共にケンを追っていた。


「おー、叫べ叫べ、逃がさねェけどなァ!」


 後ろを時々振り返りながら、どんどん加速させようとカチカチ言わせるケン。しかし非情にも自転車は既に最速のギアが入っており、最早頭打ちであった。そしてゴーレムの手はどんどん距離を詰めていく。


「もう、ダメか!!」


 諦めかけたその時である。


「響牙術、ヴィブロクラッカー!!」


 叫びと共に、地面に入った亀裂がゴーレムの巨大な手をそのまま打ち砕いた。


「何だとォ!?」


 驚く追手、その後方には、アジトを探っていたはずのコモドが、荒野の風に吹かれて立っていた。


「御自分のだけは、随分と御立派なのをお使いですな?」

「コモド、何故そこに!?」

「そこの少年が開けてくれた穴から近道して来たのさ。自分で開けた穴に助けられたな、ケンちゃんよォ!!」

「え、僕が!? てかあそこから!?」

「ぐぬぬぬ……やれセバジオン!!」


 男はゴーレムの頭部から飛び降りると、その頭部に荒野の土が次々に集まり、体を成していった。全長十メートルの土巨人、先程砕かれた手はいつの間にか戻っていた。


「叩き潰してやる!!」 


 振り下ろされる拳をかわし、コモドはその場から飛び上がった。ゴーレムの腕そのものに飛び乗り、駆け上がると腕を十字型に組み、振りかぶると手甲の肘に近い位置から軽く一メートルは超える大きさの刃を展開、ゴーレムの頭部に斬り付けた。


「な、なんつう身体能力……」


 ケンの眼前に舞い降りたコモドは刃を戻すと、振り返らぬままに言った。


「そいつを引いて、最低でもあと十歩は下がりなさい」

「は、はい」


 その言う通りにケンはそこから、十歩どころかもっと下がっていった。一方のコモドは懐から紙を取り出し、見せつけながら口を開いた。


国境くにざかいのオドーン! 貴様はゴーレム密造及び奴隷売買の重罪により、賞金首としてこのダーメニンゲン連邦政府より指名手配されている。大人しく投降すればそれで良し、抵抗するならば斬る!!」


 恰幅の良い追手ことオドーン。その答えは、最早定番とも言えるモノであった。


「ふざけるなァ! 死神コモド、貴様こそここで死に晒せェ!!」


 斬られた頭が再生したゴーレム、セバジオンがコモドとケンを捉えて襲い掛かろうとする。腰を抜かしたケンを背に、コモドは羽織っているマントをここでついに脱いで投げた。その下に着ていたのは、えんじ色の胴着を思わせる服に、黄金色の竜の頭を思わせる装備が左肩にくくり付けられている。よく見るとコモドの手首と足首には、蛇を巻き付けたような輪が巻かれていた。左腰、ベルトについた箱状の装具からカードを一枚取り出し、コモドはその声を以て命を吹き込むのだった。


「見るが良い。コレが『ホンモノ』だ。エメト、ルクトライザー!!」


 呪文を受けたカードに模様が浮かび、竜の頭を思わせる物体にカードを挿入する。竜の目が青く光り、角を思わせるパーツが出現、そして彼の右腕を通じて青い光が迸る。腰を落とし、真っすぐにその拳を地面に突くと、瞬く間に地面に紋様が描かれ、魔方陣が完成するとなんと魔方陣が自ら動いてコモドの足元から離れ、迫り来るセバジオンの拳に向かって何と巨大な手が出現して受け止めた。


「え、一体、何が起きて……?」

「よーく見とけよ、これがホンモノのゴーレムさ……!!」


 相手の拳を受け止めたまま、コモドの呼び出したゴーレムが辺りの土を使って魔方陣から姿を現す。全長十メートル。その手にはコモドの腕輪足輪と同じデザインの飾りがつき、腹部にはバックルのような丸い光が灯る。胸の十字傷の奥には青いエネルギーが燃え、頭部には竜騎兵を思わせる竜の頭部の意匠が施されていた。受け止めた相手の手を握りつぶし、まるで大魔神を思わせる動きで拳で顔をぬぐうようにかざすと、その目に青い光が灯り瞳が映り出す。


「黄金のゴーレムサモナー……噂通り、やはり一流のゴーレム師か!!」

「言っただろう、ホンモノであると。これが俺の最高傑作、ルクトライザー!!」

「で、でかぁ……」


 コモドの言葉に合わせ、まるで歌舞伎かヒーローロボットのように見栄を切るルクトライザー。拳を天に突き上げ、相手のゴーレムに向かって睨みを利かせている。竜の兜にある目から、本体の目から青い炎が一閃する。


「やれセバジオン!!」


 砕かれた手を今度は剣の形に変えると、セバジオンは相手に斬り付ける。しかし肩にかけた刃が進まない。コモドの操るゴーレム、ルクトライザーはその攻撃を構うことすらなく、真っすぐにセバジオンを拳で突いた。なんと、肩ごと剣と化した腕が砕けていく。


「トアァーッ!!」


 コモドの鋭い跳び蹴りがオドーンを襲った。相手は懐から、ソードオフのショットガンを思わせる得物を取り出すとコモド目掛けて発砲する。放たれたのは火球であった。数発放たれた一撃のうち一つが今、ケンに向かって飛来する。


「わぁっ!!」


 しかしコモドはケンの前に躍り出ると、火球をなんと拳一つで打ち消し、そのまま銀髪をなびかせて突っ込みすれ違い様に手甲から刃を展開した。咄嗟に得物で防いだオドーン、しかし得物はそのまま使いモノにならなくなった。スッパリと真っ二つになって地面に散ったのである。


「くそォ!!」


 叫び声を上げて剣を抜き、襲い掛かるオドーンに対しコモドはもう片方の手甲からも刃を出し、構えをとる。その一方でルクトライザーは、セバジオンに裏拳を見舞っていた。その当たった部位から、青い光が漏れる。それを見たコモドが気が付いた。


「あそこか」


 オドーンの剣を持った腕を掴んで投げ飛ばし、間合いを取るとカードを取り出した。


「ネグロフ!」


 竜を象った、黄金のゴーレムサモナーにカードを入れるとその角からルクトライザーに光の球が送られる。その目が鋭い光を放つのを確認すると、コモドは両腕の輪を交差させた。するとルクトライザーも同じように腕を交差させる。そしてコモドが動くのに合わせて右手を引くと、その腕輪に該当する箇所がギュイィンと高速で回転し、青い炎が噴き出した。


「必殺、ゴーレムアーツ、フィストボンバー!!」


 突き出された拳が分離! 発射された一撃は炎をまとい、真っすぐにセバジオンの光が漏れた位置を撃ち抜いた。


「ロボットアニメかよ!?」


 風穴を開けられ、中の光が全て燃え尽きると、セバジオンの巨体は文字通り土塊となり崩れ落ちていく。


「あぁっ、セバジオン!?」


 そのスキを突いて、コモドはオドーンの懐に貫手を深く突っ込んだ。腹を押さえてうずくまる相手に、コモドはいつの間にか奪い取ったゴーレムサモナーを見せつける。


「没収だ。上手く作り直せば安全に運用できるが、貴様には無理だろう」

「くそォ……せめて、こうなったらァ、てめェからぶっ殺してやらァァァアアアアアアアアアア!!」

「うわ、こっち来んな!! 来るなァア!!」


 剣を拾い上げ、何とコモドではなくケンを狙って突っ込んでくるオドーン。とっさに手で顔を覆いうずくまるケン。


「全く、俺を無視するなよ……響牙術!」


 無防備にも背中を向けた相手にコモドは飽くまで冷静に、ピアスを弾いた。指先に宿った揺らぐ光をそのまま握りつぶすように力を込めると、光は手甲に付いた刃に移った。


「必殺、ヴィブロスラッシュ!!」


 振り向きざまに振るった手甲の刃から、振動を伴った輝く魔力の刃が放たれ、スキだらけのオドーンの背中を逆袈裟懸けにバッサリと刻み込んだ。ケンを斬ろうと襲ったオドーンの口から大量の血が噴き出し、得物を落とすとそのままバタンと倒れ込む。終始腰を抜かしたままのケンは、今度はガタガタと震えていた。目の前で、自分を殺そうとしたとはいえ、人命の灯火が消える瞬間を目撃してしまったのだから。


「無事かい、ケンちゃんよう」

「あ、あ、あ……」


 何も言えぬまま、ケンはその場で事切れた。コモドはすぐにケンの脈、息を確認する。気絶しただけらしい。


「参ったなこりゃ、ケンちゃんって一体何処のどういう身分なんだよ。大体こんな、腰に上着を巻く風習なんざ見たことねぇぜ。まぁ良い、ウチで介抱してやるか」


 頭部を切り取ったオドーンの死体をゴーレムの出た跡に入れると、ルクトライザーに手招きしてその場に近付ける。


「メト、ルクトライザー!」


 コモドはゴーレムサモナーに付いている竜のヒゲに値する部位を引いた。するとルクトライザーの胸の割れ目から青い光が離れ、サモナーそのものに戻っていく。本体たるエネルギー体を失ったルクトライザーは崩れ、荒野の土に還る形で姿を消し、同時にオドーンの遺体を埋めた。


「御苦労さん、ゆっくり休んでね」


 愛機が無事に還ったことを確認すると、コモドはマントを拾ってケンの体を包んで担ぎ上げ、肩に乗せると今度は自転車を見つめた。車体を起こし、ケンがやっていたようにグリップに手をかけ、押してみる。そして布に包んだオドーンの首をカゴに放り込むと、そのまま帰路に付くのであった。


「面白いことになりそうだぜ。なぁ、ルクター?」


 左耳についた牙にそう語りかけながら、コモドはその場を後にするのであった。


~次篇予告~


やぁ、コモドだぜ。成り行きでこの見知らぬ少年、ケンちゃんを拾っちまったんだ。さてさて、これから一体どうなるんだろうねぇ?

次篇『ウェルカムトゥようこそ異世界へ』でまた会おう!

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