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1話

「っ!」


最初に私が感じたのは、瞼越しに目に突き刺さる『光』だった。


少し痛い。

けど心地いい痛みだ。小さい頃、起きてすぐ外へ遊びに行った時に走ったような、そんな感覚。

懐かしみながらゆっくり、目を開けてみる。


「……眩しいな」


一瞬目の前が真っ白に染まり、その後風景を写し出す。

街並みはまさに王道といったところ。街の中心には塔がそびえ立ち、快晴の空には緑や青の魔方陣が浮かび、幻想的な雰囲気を醸し出している。


でも、なにより私が驚いたのは、視認できる風景の広さだった。


「…………」


恐る恐る、顔に触れてみる。

指先がなぞるその確かな感触が、この視界の広さの理由を教えてくれた。


「……4年ぶり、か」


なんとなくそう呟いた瞬間、頭の中に鈴の音が響いてきた。


視界の端で、手紙のアイコンが点滅している。

つまり、メッセージが届いたということなのだろうか。


とりあえず、そのアイコンをタッチしてみる。

すると、ブン、という効果音と共にメッセージの画面が現れた。


「おお……」


読んでみると、運営からの歓迎メッセージだった。

世界の設定、操作方法やNPCの扱い等が書いてあった。


そこで初めて、『avil・anel 2』には前作とは違って大まかな物語があるということを知った。


この街は迷宮都市インドラと言って、街の真ん中にある塔型ダンジョンを中心に栄えた街だという。

このような迷宮都市が他にも7つあり、それを全て制覇する事が目的のゲームだ。もちろん、きちんとMMOの要素もあり、前作の『avil・anel』にストーリーがついたような作品になっている……と書いてあった。


「……じゃあまず、あれをクリアしろということか」


おそらく、攻略にはレベル上げ、レベル上げにはまず武器を調達しないといけないが……私のステータスはどういうものなんだろう。


「えっと……ステータスオープン」






リーナ


魔術師 lv1


HP150

MP420


筋力 2

敏捷 4

頑強 1

魔力 6

運 3


スキル 魔防上昇(小) 魔力上昇(小)


称号 放浪者






『avil・anel 2』のステータスは、以前のようなランクではなくポイント制だ。

レベルアップによるポイントをそれぞれのステータスに振り込み、表示されない隠しステータスが上がる。


スキルは一定の条件を満たすと習得する。分かっている中で一番簡単なのは『鑑定』で、30分間じっと何かを見続けること。


まだ習得条件が分かっていないものがほとんどなので、意外と運に左右されるかも知れない。



それと職業だが……数ある職業の中でも、この魔術師は結構不人気職だったりする。


このゲームは職業レベルを上げていくと、クラスアップといって職業が剣士→侍などという風に派生するのだが、面白いことにそのクラスアップ先はそれまでの行動やらが影響する上、とんでもない種類があるらしい。


それも踏まえて、魔術師のクラスアップが微妙なのだ。弱くはないらしい。

弱い強いではなく、つまらない。つまりは予想通り過ぎるということだ。


だけど、別に私は魔術師に面白さを求めてない。


ただ、使ってみたかった。


「……フォイア」


その言葉と共に、私の手のひらに小さな炎が生まれる。


「アニマ」


目の前に、透明な風の刃が生まれる。


「レビン」


指と指の間に、バチッと小さな雷が生まれる。


そう、私はゲーム内でしか使えない、魔法を使ってみたかった。

他の職業でも魔法は使えるが、覚えられる数が少ない。


剣士などは、覚えられる魔法の数は2個だが、魔術師は3個から始まってレベルが上がる毎に1増える。

魔法覚えただけ使い放題。


だからこの職業を選んだのだ。


「……っと、ここで油売ってる暇はないか」


元からあまり余裕が無い日にプレイを強行したため、時間がない。現実の時計は既に17:01を指している。

ああ、宿題やってない。明日も学校なのに。


他になにかないかと弄くっていると、スキルポイントが割り振り可能と出ている。その項目に触れてみると、右手付近にウィンドウが現れた。



スキルポイント3


筋力2

敏捷4

頑強1

魔力6

運3


スキル取得




スキルポイントは筋力などの基礎能力に振ればそのポイントだけ上がり、また、ポイントでスキルを取得することもできる。

スキルを取得するのもいいが、大概のスキルは行動で手にはいることもあるので基礎に振ることにする。


「とりあえず魔力……かな」


威力が上がるのはもちろん、魔力が一定以上になると使える、など、条件をクリアすることによって貰えるスキルもあるからだ。


例えば、ライトニングという中級光魔法を覚えたければ、一定以上の魔力でその魔導書を読まなくてはいけない、のような感じで。


聞いた話だと、エネミーを倒すことでも魔法を覚えることがあるらしい。


「仕様とかシステムは調べたけど、やってみてわかることも多い。そもそも、RPGとかばかりでMMO自体初めてやるからな…………っくしゅ!」


風が少し寒く感じてきた。寒さなんて感じるのか。


今気づいたが、この初期装備結構際どい。ぼろ布でできた、辛うじて服と言える上下のみだ。

プレイヤーは故郷を終われた放浪者で、ここに流れ着いたという設定とはいえ、そこらに穴が空いているし襟元もユルユル。どうも気になって仕方ない。


早急に装備を整える必要がある……のだけど、地理がよくわからない。

あ、掲示板に地図があった。


「武器屋は……なんだ。目の前じゃないか」


掲示板から右に視線を向けると、盾と槍……いや、矛か。そんなオブジェが店先に置いてある店が武器屋だろう。


今日の所は、武器を買って終わりだな。

店主であろう人物がNPCであることを確かめてから、武器屋へ歩を進めた。

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