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(羽川ミカサの孤独)
あたしは、羽川ミカサ。
猫に惚れて、ふられたおんな。
生まれてこのかた、
味わった
悲しみの数を数えられずに
イェーイ、と、
陽気に、生きるぜ、あーし達
って。
心ではVサイン、両手でアッピールして
イェーイ、と。
笑って、笑って、
おもしろ、おかしく、やって来た。
たまには、夜中、寂しさに負けて
ひとりうずうずするのですが、
そんなの、
健全な夢と希望を前面に押し出し、
無理矢理でも、笑顔つくって、
あっかるい笑顔つくって、
幸せなフリ、したりする?
だってホラ、
一度不幸な気持ちになったら、
なかなかハイなテンションに
戻れないでしょう?
しあわせ、しあわせ、って、
言い続けなければならない。
イェーイ、と、
心のなかでは、Vサインして、ね?
でも、そんなことしてもだめだった。
あたし、羽川ミカサの孤独は、
人に支えられないほど、暗く、重く、
もはや、生きて行くことさえ、
あざなえる縄の如し、されど
孤独と不幸と絶望の3本の黒い糸で
編み込んだ、漆黒の縄さえ
あたしを縛ることは出来ない。
勝手気儘なフリをして、
軽〜く、
人懐っこい陽気な笑顔を見せてあげるわ。
人には、通じるわよ、
あーし達、なにも悪いことしてないさ。
でも、猫、あたしが好きになったらなったで、
あたしに、飽きたとのたまって、
この部屋から出て行った、アイツ。
不幸を体現したかのような、黒猫の飼い主よ。
惚れたら、逃げられる。
あの猫の目を閉じて、誰も見ていないようだけど
それが、たとえ、神様の想いのとおりとしても、
惚れたら、負けちまう。
惚れたら、まけちまうんだ。
あたし、羽川ミカサ。
猫に惚れて、ふられた、おんなさ。
それでも、愛とか、恋とか、諦めない。
奇特な、おんなの子(子って?)
いま、まだ、神様を信じている
この街を猫街と名付けた、
自分に優しく、
他人に優しい、
寂しさだけ、大嫌いッ!って、
保存させられない大嫌いを、
あなたたちは、頭に刻みつけようとする
月の綺麗な、空から降り来る、
一滴二滴の清い涙雨を
見て見ないふりでやり過ごす予定調和。
罪を庇う、謎の優しさの、
最後のいちにち、神様、お願い。
あたしを、叱って。
狡いから。
あゝ、小雨降り来る今夜………
真っ正面なら、ひとりしずかな展望台、行こ?
行こ。




