わたくしは、猫! 名前はないも同然。
どうせ、明治の大文豪の影響なんだろうけど、
ふざけるにもほどがあるわ。
私が男ならまだいいわよ、
ちょっとはユーモアのセンスも
感じられるのかもしれないわ。
まぁ、古くささは否めないけどね?
でも、あたし、女だよ!
ナイナイナイナイ、ないってばッ!
どんなセンスしてんだろうね?
てかどんなあたましてんだろ、
勝ち割って脳みそ見てやりたいわよ。
ないって、ナイナイ。
皆んな、私に名前を聞いてみて?
いちどだけなら答えてあげるよ。
ハイ、あなたのお名前は?
───吾輩。
ね?私が何を言ってたかわかったでしょ?
ど〜んな神経してたら、
こ〜んなかわいい黒猫ちゃんに、よ?
わ、吾輩って!
もちろん呼ばれても答えてあげない。
知らんぷり知らんぷり。
知らんぷりで通してるんだけど、
さすがに空腹だけには負けちゃう時もある。
「吾輩吾輩、ご飯だよー。」
そん時はしょうがないから
そん時だけは大目にみてやるわ。
なんかこのままズルズルと
この女主人の罠にハメられていくようで怖い話。
このくそ女の名前?
どうでもいいじゃないそんなこと
どうせ私の名前に比べたら
どんな名前も
女の子らしくて素敵な名前に決まってるんだ。




