奪われた日常2
篠原に連れられた2人は後戻りできなくなります。
学長室の中へ入ると、自分達が呼ばれた理由を学長から単刀直入に言われた
「事情により国防軍は1人でも多く人員を求めています、つまり既にこの学校の卒業基準に近い君達に国防軍へ入って欲しいのです。」
2人は言われた内容の意図が分からなかった。
「2人がウチの中隊に入ってもいいって約束してくれるなら…そうね、マスター・サージャントの階級をあげるわ。」
篠原は軽く告げたが、マスター・サージャントとは曹長の事である、下士官の中でもトップの階級だ。
「私達はまだ大学1年生ですよ!?もし国防軍へ行けば中退になりますから、高卒の階級としては適任では無いのでは?」
香里奈は焦りと共に声を上げた。
「そこなんですよね、実は2人を卒業扱いにしようと思うのです。」
学長は無茶苦茶な事を言う。
「そんな事して大丈夫なんですか?後で大卒を取り消すとか言われたら、俺達も困るのですが。」
統は冷静に返す。
「2人は優秀さを認められて国防軍へ引き抜かれた、それだけで卒業認定するには足りると思いますよ?」
学長はニッコリと笑い言う。
「本当は大卒待遇としての採用なのですが、特例なので少尉では無く曹長としての採用である事はご理解下さい。」
篠原は少し申し訳なさそうに言った。
「急に人員不足っておかしくないですか?今って平時ですよね?」
統はこの話の不自然さに噛み付いた
「私の第57連隊は新設なので足りないんですよね。」
篠原は恥ずかしそうにする。
「なら、別の駐屯地から回してもらったり新規採用の枠を増やせば良いのではないですか?そんなに急いである程度の練度がある人を確保したいって事は、何か理由があるのは間違いないですよね?」
統は篠原の発言を全く信じずに問い詰めるのだった。
「なるほど、察しがいいですね。なら覚悟を決めて聞いてもらいましょう。」
篠原は2人へ向き直り、鞄に入ってた資料を確認しながら説明を始めた。
「今年の4月から欧州連合とアジア同盟が周辺地域へ侵攻を始めたのは2人もご存知ですね?」
今の篠原は先ほどとはまるで雰囲気が変わっていた。
「もちろん。」
統は頷く。
「その2ヶ月後にステイツから国防軍に武器の供与が決定したのは何故だと思いますか?」
篠原はしたり顔だ。
「ニュースでも言ってましたよね?日本とステイツの友好関係を深めたり、日本が国防費が予算不足だからって…」
香里奈は得意気に話したが一瞬で否定される。
「残念ながらそれは表向きですね、2人には本当の事を教えますからこの資料を見てください。」
篠原はそう言うと、2人に数十ページの紙を渡した。
「これ嘘ですよね?流石にこじつけではないですか?」
統は戦慄した、その紙には「欧州連合の工作員から押収した兵器と回収場所」と書かれていたのだ。
「こっちはアジア同盟版よ…」
香里奈は統に向けて紙をチラチラと振った。
「欧州連合とアジア同盟は手を組んで日本へ侵攻する計画を立てています。しかも、資料を見て分かる通り、既にかなりの量の兵器が工作員によって持ち込まれていると認識して間違いないと思います。」
篠原は淡々と言い切った。
「工作員が既に国内へ兵器を持ち込んでるって事は、日本へ侵攻する本隊と一緒にやらかすっね間違いないですよね?工作員のアジトは見つからなかったんですか?」
統は聞き返した。
「本当なら大量に兵器を持ち込めばアジトも見つかると思いますよね?でも、まだ見つかってませんよ。」
篠原は悔しそうにしていた。
「状況が状況ですからね…俺は腹を括りますよ。」
統は篠原から渡された資料を丸めて地面に叩きつけた。
「私も聞いたからにはやりますよ、国防軍に志願させてください!」
香里奈は豪快に資料を破り捨てた。
「あの…お2人の気持ちは嬉しいのです、嬉しいのですがそれは一応極秘資料なのでしっかりと処分して頂けますか?」
篠原は怒りを抑えて言った。
「ごめんなさい…」
2人は一緒に頭を下げた。
こうしてめでたく2人は大学の卒業認定を受け、国防軍へ入隊するのであった。
いかがでしょうか?
以上で入隊までの流れは終わりです
統と香里奈の学園生活はいずれ別に書こうと思います