奪われた日常1
統と香里奈のスクールライフです
統と香里奈が沼ノ森学園大学へ入学した年の7月である。
2人は学校の食堂で気だるそうに食事をしていた
「この学校に入学して3ヵ月だけど高校時代に比べてかなり緩くないか?」
統はうどんを頬張りながら言う
「高校時代も特別厳しかった訳でもないんだけどさ、なんか物足りないよね…」
香里奈はラーメンを頬張りながら言う。
「でもこの大学にはStG44とかMpi47とかがあって嫌いじゃないね、高校はH&Kかコルトの銃ばかりで味気がなかったじゃん?」
統は目を輝かせている。
「は?私はそんな古い銃よりそっちのが好みなんですけど!?」
香里奈は机を叩き声を上げた。
「それより、お前はいつもチャレンジラーメン油チョモランマとか名前だけでも胃もたれしそうなブツを毎日食ってるんだ?デブへの1歩だぞ。」
統は必死に話題を変えたが逆効果だ。
「はぁ?あんたの肉うどんもねぎが器からはみ出してるじゃないの!そんなのゲテモノよ!」
香里奈も言い返したが、2人のテーブルだけを見るともはや異質であり、通りすがりの生徒からは「おぞましい…」とすら聞こえる。
彼らが何故そんなに銃の話をしてるかというと、軍事学部の生徒だからである。
2人は高校時代は沼ノ森学園高校の軍事学科へ通学していたが、入った理由は軍へ入ったりPMSCや警備員になりたいのではない。
軍事趣味だから入学したのだった。
「あんたさ、最近になって機甲科の勉強なんかしてどうしちゃったの?」
香里奈は少し上目遣いでヒソヒソと聞く。
「なーに、俺が機甲科の勉強をしちゃいけないのか?」
統は手を頭の後ろで組み不満そうにする。
「悪いとは言ってないわよ、でもあんたは今まで普通科…つまり歩兵の勉強をしてたでしょ?なんで車両に乗ってるのよ。」
香里奈は意図を勘違いされないように説明した。
「考えてもみろよ?今俺らがやってる事は高校時代の比べて内容はどうだ?」
統は口元を緩ませている。
「ま、余裕だよね~」
香里奈もこう言うが2人が優秀な訳ではない、この大学がかなり授業を手抜きしてるのが真実である。
沼ノ森学園高校に通ってた頃の同級生は皆、国防軍やPMSCなどに就職していった。
2人が就職しないで大学へ来たのは「と り あ え ず、どこへ就職すら決まらんからエスカレーター式で大学へ行こう。」と考えたからである。
浅はかであったが今はそれで良かったと思ってる。
「なぁ、つまらん毎日だが今日は午後から実習だったよな」
統は問う。
「ええ、そうね。確かM16の分解とバトラーを使った訓練ね。これなら統も私も楽しめるわ」
香里奈は満面の笑みだ。
「お!悪くないね。」
統はニヤけながら返した。
「ま、あくまで授業だけどね。」
香里奈はそう付け足してやれやれと仕草をした。
「そうだ、今日の授業が終わったらゲーセンでもいこうぜ?久しぶりにアーケードゲームがしたいんだよね」
統は放課後の提案をし、香里奈が返答しようとした時に会話は突然遮られた。
「失礼します、朝霧統さんと山辺香里奈さんで間違いありませんか?」
黒いスーツを着た20代くらいの女性が2人の前に立っていた。
「そうですけど、どちら様ですか?」
統は即答した。自分達が急に呼ばれるなんて心当たりが無かった。
「申し遅れました、私は国防軍第57普通科連隊第1中隊長の篠原大尉です。」
黒いスーツの女性は落ち着いた様子で自己紹介をした。
「あの…国防軍の大尉さんがどうして私達に用が有るんですか?」
香里奈は額に脂汗をかき言ったが、それに対して統が
「もしかして、お前国防軍の装備でも盗んだのか?」
と言うと篠原は笑って返す。
「いえいえ、そんな話ではございませんよ。ここではあまり話せない内容なので場所を変えましょう。」
統も香里奈も意味が分からなかったが、どうやら篠原から敵意を感じなかったのでひとまず安心した。
「とりあえず、この飯を食べ終わってからでいいですか?」
香里奈は目の前にある油に満ちたラーメンを指差し言う。
「大丈夫ですよ、ごゆっくり…」
篠原はそう言い空いてた隣のテーブルに座った。
「先ほどから聞きたかったのですが、この量を食べれるのですか?若いっていいですねぇ…」
篠原は遠い目をして言った。
「篠原さんもまだ若いっすよ」と言いたかった統だったが、地雷臭がしたので黙る。
2人は食べ終わり、片付けを済ませると篠原に連れられて学長室へ行った。