第5話 初の仕事は子供から…
どうも、私です。
毎日投稿が板について来たかな?
そんなことより、今回は金稼ぎ回…に、なる予定でした!
まぁ、内容は読んでください。
誤字脱字などの報告、気軽にしてください。すぐ直します。
ハイムと話した後、ツカサと仲直りし、ハイムとの話を掻い摘んで伝えた。
すると、ツカサが「実際にやってみよう!」と言い出したので、今現在俺は町を歩いています。
あれ、あまり状況が変わってない気がするが気のせいだろう。
ちなみに、アダマンタイトは袋に入れた。
え? 袋なんか持ってなかったろって? ふっ、俺の『想像魔法』に敵なし!
っと、話は戻り町を散策中。
「ツカサ、なんで付いて来るんだ?」
「ダメかい?」
「ダメではないけど、何で?」
「そりゃ、君が心配だからだよ。君との出会いが強烈すぎてね、不安になるんだ」
「それは、まぁ、分からなくもない」
獣に襲われていたところ見られてしまっているからな。また、同じようなことが起こらないわけではないだろうし、もし同じ目に合ったら生き残れる気がしない。
ツカサの優しさに俺は救われているんだな……もう二度とあんな目には遭いたくないよ。
「じゃあ、まずはどこに行こうか」
「んー、ここは手分けした方がいいんじゃないか? 依頼は二人バラバラで集めて、解決する時は一緒みたいな」
ツカサがそんな案を出して来た。
中々良い案だとは思うが、決定的な欠点がある。
「俺、この町の構造とか知らないんだけど」
「大丈夫。町の人に聞けば一発だって」
「そうかなぁ」
不安だ。不安しかない。
というか、お前。俺のことが心配で付いて来たっていう割に、あっさりと離れようとするんだな。
おじさん悲しいよ。今はお兄さんだけど。
「じゃ、ボクはこっちに行くから、ケイはそっちに行ってくれる?」
ツカサが指差す方向は俺のまだ知らぬ道。それを、罪の意識などさらさらない、純粋な瞳で見つめてくるのだから困ったものだ。
しかし、断る理由はさっき無理やり論破されてしまったので、大人しく行くしかない。
俺は、「仕方ない」と呟きながらツカサの指差す方へと歩き出した。人通りが多く、それでいてあまり広いとは言えない道。
後ろを振り向くと、既にツカサはいなくなっていた。行動が早いな。
歩き始めて数分間、特に異常ありません。
自分が何故ここにいるのかと、自問自答にも飽きて来た頃だった。
道を歩いていると、路地から飛び出して来た男の子とぶつかってしまった。俺は成人男性、衝撃はあったものの少したじろくだけだ。
だが、相手は子供なため、ぶつかったことで男の子は尻餅をついてしまう。
「大丈夫?」
俺は手を差し伸べながらそう言った。
悪いのはどっちか微妙なラインなため、叱ることもできない。
すると、男の子は一人で立ち上がり俺の足にしがみ付いて来た。
いきなりの事で何がなんだか分からなくなっている俺に、男の子は一言、「助けて」と叫んだ。
「助けて! 僕の、僕のお母さんが大変なんだ!!」
「え? ちょ、待って。何、助けてって何!?」
「お兄さん、助けてよ! 僕のお母さんが、お母さんが」
「落ち着くんだ。お母さんが、だけじゃ分からないよ」
男の子はしがみ付いた手で俺を揺すりながら叫び散らした。見たところ五歳か六歳ってところか。そんな子の力では倒れませんよ。
そんなことは関係なく。子供の叫び声は当たり前だが、周りの通行人にも丸聞こえだ。
先ほどから痛いほど視線を周囲から感じている。
つまり、何だか誤解を受けているような気がします。
俺は多少焦りながらも、事情を聴くため男の子の家へと案内してもらった。
まさか、初めての仕事相手が子供だなんて……面倒事にならなきゃいいけど。
「ここだよ」
男の子……少年にしよう。少年に案内された場所は、さっき少年が出て来た路地の奥の奥。薄暗く、言い方は悪いが、とても衛生的に最悪なごみ溜めのような場所だった。
「本当にこんな所に住んでいるのかい?」
「うん」
本当らしい。信じられない、こともないな。
地球でもホームレスはいたし、この世界にも貧困に困っている人は多いのだろう。国が少なからず手を差し伸べてくれる日本とは違って、この世界で生活保護なんて存在ないだろうし。
「そうか。あー、それで、そのお母さんが大変ってことを聞かせてもらえるか?」
「分かった。でも、その前に家に入って」
「家?」
「そうだよ。ここが家」
少年がそう言って開いたのは扉、ではなく布で出来たカーテンだった。いや、俺がカーテンだと思っていただけで、それは扉変わりのものだったようだ。
少年はカーテンを潜り中へと入って行ってしまう。俺はその後ろを恐る恐る付いて行く。
カーテンを潜り終え中に入ると、まず目に入ってくるのはボロボロの室内。なんとも、暮らしてるのか疑問を持つ程度にはボロっとしている。
他にも、家具が古く、壊れているものばかりだ。ベットもあるが、薄汚い布がかぶさっているだけのボロい木製の台でしかない。
俺がベットに目を向けた時だ。そこに誰かが寝そべっているのが分かった。そして、それが少年の母親なのだということも。
母親は眠っているようで、静かに寝息を立てている。
だが、生きているのか? 頬は痩せこけ、あまりにも、その、小柄過ぎるのではないだろうか。
「お兄さん?」
「あ、あぁ。ごめん、ボーっとしていた。何だい?」
仕事一筋だった前世、その時からでは考えられもしなかった景色に脳がパンクしてしまった。言い訳にするつもりはないが、あの時は仕事しか頭になかった。というよりも、仕事するしかなかった。
しかし、今目の前にあるのは現実だ。紛いもない、本物なんだな。貧困とは、ここまで……。
「お母さん、病気なんだ。それで、お薬が必要なんだけど、お金がないんだ。だから、その」
「金を貸せ、と?」
「……うん」
「本当に借りるだけでいいのか? 借りるってことは同時に、返さなきゃいけないんだぞ? それを、お前は分かっているのか」
「分かってる。でも、今すぐ必要なんだ! お金、絶対僕が大人になったら返すから! 何倍にだってして、返して見せるから!!」
何て言うのかな、この感じ。とても、とても居心地が悪い。胸のあたりが、ムカムカしてくる。
子供に金を貸してくれ、と言われること自体が嫌な気持ちになるのに、その上いつか返すから、なんて……なんでだろう、イライラするよ。
少年の言葉を聞いていると、自然と両手で拳をつくり、握りしめている自分がいた。何故かは分からなかった。自分でも理解できなかった。けれど、少年にこんなこと、言われてムカっと、イラっとしたことは確かだ。
「おい小僧、お前、大人になったら金が稼げるようになると思うなよ」
「え?」
「世の中なぁ、そんなに甘くないだよ! 世界には働きたくても働けない人がごまんといる。そんな奴らを押しのけて、お前は仕事を手に入れられるのか!? 言っておくが、冒険者なんて言うんじゃないぞ。あれは命の価値をはき違えた馬鹿のなる職業だ。分かってるのか!?」
「え、あ……」
急に声を荒げた俺に、少年は困惑した表情を向けてきた。こうなるのも無理はない。相手は子供、大人が怒った姿など、恐怖でしかないだろう。
あぁ、俺はなんでこんな子供に本気で怒っているのだろうか。俺はもっと落ち着いて、いや、死んだように生きていたはずなのにな。
女神に出会って、異世界に転生して、勇者と出会って、貧困に苦しむ子供に出会った。
はぁ、ここまでが急展開過ぎて頭回らねぇ。
けど、思ったんだ。この世界で、こんな世界で、俺は確かに心の底から思ったんだ。
この子を、助けてあげたいと。対価なんていらない。名誉も名声もいらいない。
ただ、単純に救いたいと、そう、思ったんだ。
「少年、名は」
「あ……ジュハ、です」
「ジュハ、よく聞け」
俺は膝を折り、ジュハと同じ目線で、ジュハの肩に手を置いた。そして、落ち着いた口調で話す。
「今の俺には、お前の母さんを助けてやれる程の金がない。手持ちではなく、金がないんだ。ここまでは分かるな?」
「……はい」
「だがな、俺はお前の母さんを助ける。約束しよう。お前が自分の身を犠牲にせんと俺に頼んだ、『母親を助けて』というお願い。しっかり聞き届けたからな。任せておけ」
「ほ、ほんとに?」
「当り前だ。ジュハ、この言葉をよく覚えておくんだぞ。男に二言はない。分かったな!」
「ッ……うん!」
ジュハの瞳がキラリと光る。しかし、表情は満面の笑みだ。
良い返事をもらったし、さっそく行きますか。金を稼ぐ方法ってのは一つじゃない。何でもかんでも冒険者じゃつまらないからな。
まずはツカサと合流だ。久々の仕事だが、なんだかいい気分だ。
俺はジュハをその場に残し、ツカサを探すべく走った。ジュハの母を探すという依頼、絶対に完遂してみせると心に誓って。
次回、ケイが汚職に手を染める? いや、汚職ではない。ギリギリアウトな方法なだけだ!