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第14話 宣戦布告

 屋敷生活に慣れ始めた頃の話だ。

 俺はいつも通りミーナに紅茶を入れてもらい、それを飲みながら優雅に朝を迎える。紅茶は飲み慣れていないので当然、砂糖入れるさ。


 その後、ミーナの作った朝食をツカサやルハ達と食べ、自室に戻り休憩をする。俺が自室で待機している間は、ルンが屋敷内の掃除をしたり、ミーナが洗濯をしたりしている。


「今日は何をしようか」


 いつもは自室で本を読んでいたりする。仕事探しもしなければならないが、まずはこの世界のことについて知る必要があるからだ。本はツカサが買ってくれたり、ルハの持っていた本を借りたりして読んでいる。この恩は何かで返そう。


 仕事の探しの目処が立っている。もちろん、冒険者ギルドではない。冒険者にはならないと決めたからな。

 ツカサを通じて国王から手紙を送った時のことだ。別に国王と繋がれたらとは思っていなかった。あれは、エリアルとか言う騎士についての報告書を手伝ってほしいとツカサに頼まれたので、エリアルについて詳しく話したおまけみたいなものだった。

 俺のことを知り、国王は何を思ったのか俺に『エリアル討伐』の依頼をしてきた。それも、報奨金がバカ高い。受けるも受けないも自由とは書いてあったが、これは断れないだろう。断る勇気は俺にはない。


 結局の所、俺は使われる側の人間だったという事だ。


 そういえば、ミーナについて話してなかったか。

 ミーナはとても良くできた魔法人形で、俺の指示を忠実に守ってくれる。しかし、所々問題点はあり、感情的というか何というか、俺の指示に反抗的なのである。


 例えば俺が、


「ミーナ、買い物してきてくれる?」


 と言うとミーナは、


「ご主人様、私に頼り過ぎではありませんか? たまにはご自分で行ってきてください」


 と、拒否されてしまう。


 俺のことを思っての発現なのか、はたまた単純に行きたくなかっただけなのか。俺には分からない。

 だが、そこには明確な拒絶の意思(・・・・・)があるのは確かだ。人形と言えど、魔法によって動いているから、地球でのロボットと同類とは考えない方がよさそうだ。


 話が脱線したが、ミーナには意思があり心があるのは既に分かっている。話していても、偶にだが微笑んでくれたりするし、不機嫌にもなったりする。基本無表情なミーナだが、感情を表に出すこともしばしばあった。


 ちなみに、ミーナはあの不動産屋の店員さんが買ったそうだ。

『改築費が余ったので有効活用させていただきました』、と言われたが……こういうのは、一度俺に相談するべきじゃないか? ありがたいけれども。


 俺が物思いに耽っていると、扉を叩く音がした。それい続き、ミーナの声もする。


「ご主人様、少々よろしいでしょうか」


「あぁ、ミーナか。どうぞ、入って」


「失礼します」


 俺は扉に体を向け、部屋に入ってくるミーナを見つめた。ミーナが自ら部屋に来ることは大変珍しく、緊急の用事くらいでしか今までに来たことはない。

 そのため、俺は現在とっても緊張している。何が起こるか分からないから、変に意識してしまう。


「一体何の用だい?」


「実は、このようなお手紙が来ていたのですが……」


 そう言ってミーナが渡してきた手紙は、真っ黒の封筒の中に入っており、真っ白な紙にはこう書いてあった。



『スグミ ケイ、貴様を葬り去るのは簡単だ。

 しかし、それでは面白くない。そこで、チャンスをやろう。

 今日の午後、例の墓地で待っている。』



 ふむふむ、なるほどワカラン。つまりどういうことだ。チャンスとは一体何のチャンスなのか、そもそも誰からの手紙なのか。まったく分からん。


 しかし、例の墓地という単語は分かるぞ。俺がエリアルに襲われた場所だと思う。というか、墓地はそこくらいしか知らない。

 おや? そうなると、この手紙の差出人は「エリアル」ということになるかな? そうすると、チャンスというのは死ぬ前に足掻くチャンス? か、どうかは分からにけれども、行くしかない。


「ミーナ。この手紙のことは俺とお前だけの秘密だ。誰にも言うな。それも、聞かれても知らぬふりをしろ。言えません、とは言うなよ。知りません、というんだ。怪しまれるな。分かったな」


「畏まりました」


「よし。じゃあ、俺は少し出かけてくる。この手紙は即刻処分。俺の所在を聞かれたら、仕事探しをしていると言っておいてくれ」


 手紙をミーナに渡し、最近買った胸当てとグリーヴを装備し、あの時は持って行かなかった短剣(made in 俺)を携えて部屋を出る。


「……ご主人様!」


 屋敷を出ようとしたところで、ミーナに呼び止められた。振り向くと、そこには心配そうな表情のミーナが手紙を胸の前で握りしめ俯いていた。


「何だ?」


「私は魔法人形ですが、やはり、ご主人様のことが心配です。失礼ながら、手紙の内容は透視で確認しました。あれは、確実に罠です。なので……」


「行くな、と?」


「差し出がましいようですが、そうです」


 とても言い難そうにミーナが俯いたままそう言ってくる。俺はそれを見て、何か気の利いたセリフを模索していた。

 俺だって、これは罠だと分かっていた。当たり前だ。これを罠だと思わないのは、ただのアホだ。しかし、それでも行かねばならない。葬り去るのは簡単ということは、俺だけでなく他の……あの場に居たツカサやノラさん、それにミーナやルハだって攻撃対象かもしれない。それを未然に防ぐためには、俺に宛てられたあの手紙の指示に従うしかないだろう。


 それにしても、ミーナにここまでハッキリと心配されたのは初めてで、どう反応していいか分からない。嬉しがるべきか、キザなセリフを吐くべきか。


「ミーナ」


「……はい」


「ありがとう。心配してくれて。でも、行かなきゃらないんだ。俺には役目がある。それも、重大な役目が。それこそ、神様に頼まれたくらいのな」


 実際に頼まれているので嘘ではない。

 人探しをしなければならないんだ。


「けれど、あのエリアルは明確な障害となりうる存在だ。俺はそれを排除しなければならない。だから、行かなきゃならないんだ」


 ユウト、という人物を探すためにこの世界に転生させられた。最初は乗り気ではなかったが、天罰を受けてからは多少なりともやる気は出た。

 だが、あんな奴に邪魔をされたのでは堪ったものじゃい。それに、捜索対象の墓を目の前で壊されたんだ。なんだか、無性に腹が立つ。他人の墓を壊すとは、罰当たりなヤツめ。


 勝算はない。だが、行く。


「分かりました。ですが、必ず帰ってきてくださいね。私は主がいなければ、存在意義を失ってしまいます」


「分かったよ。行ってきます」


「行ってらっしゃいませ」


 俺はミーナに見送られながら屋敷を後にした。目指すは墓地。エリアルのいる、墓地だ。


 墓地に向かう途中、ミーナの言っていた「透視」という言葉にやっと違和感を覚えた。魔法人形って多才なんだなぁ。






 in the 墓地


 墓地に着くと、既にそこにはエリアルがいた。自ら破壊したユウトさんの墓があった場所に、1人で立っていた。


 エリアルは俺に気が付くと、ゆっくりと俺の方を向いた。そして、ニヤッと笑いながら「早かったな」と呟いた。


「エリアル。お前の言う通りに来たぞ」


「ふん、早すぎるわ。だが、良い心がけだ」


 エリアルのニヤケ面は収まらない。見ているだけで腹が立つ。

 俺はエリアルを睨みつけながら話を続けた。


「何が目的だ」


「目的? 手紙にも書いただろう。チャンスをやると」


「だから、そのチャンスが何なのかを聞いている」


「せっかちな奴よ。そこまで知りたいならば教えてやろう」


 大剣を抜き、それを俺に突き付けエリアルは叫ぶ。


「ここで、俺と、一対一の決闘をしろ! お前が勝てばもう二度と手出しはしない。だが負ければ……死んでもらう!!」


 エルアルの言葉に、俺は一瞬思考が停止した。

 今、こいつは何と言ったんだ。決闘? それも、一対一だって?? そ、そんなの勝てるわけがないだろ。いい加減にしろ!


 しかし、戦わずして負けるのも癪だ。勝算はなくても、負ける確率が高くても、何もしないで死ぬことだけは、何もできずに人が死ぬのは嫌なんだ。


「いいだろう。その決闘、受けよう。今ここで、決着をつけようじゃないか!」


 短剣を抜きエリアルに突き付けながらそう叫ぶ。

 俺の言葉にエリアルの顔はさらにニヤケが増し、嬉しそうな声で話し始めた。


「素晴らしい。それでこそ男。さぁ、雌雄を決する時だぞ!」




 これにより、後に俺の中で語られる、絶望戦争の幕開けである。この先続いて行く戦いの火ぶたが、今、切って落とされた。

次回、vsエリアル

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