第10話 英雄ユウト
ちょっと遅れました。申し訳ございません。
今回は短いです。長くなるよりかは、分割を選択しました。
目が覚めた。外は朝方なのか少し薄暗く、人通りも少ない。そんなに眠っていたのかと思った時、違和感を覚えた。
目が覚めたのはベットの上だったのだ。気絶する前は椅子に縛り付けられていたはずなので、おそらくはツカサが寝かせてくれたのだろう。
どうしてかは分からないが、許してくれ……ということなのだろうか。それとも、可哀想とでも思われたとかな。
俺を気絶させたツカサ本人は――俺が目覚めた時にはいなかった。
部屋にはツカサの荷物はなく、なんだか殺風景になってしまっていた。これだけで、ツカサがこの部屋から出ていったのが分かる。出て、行ってしまったようだ。
しかし、ツカサを探しに行くというのもおかしな話になってしまう。別に俺はツカサがいなければ何も出来ない男ではない。それに、探す当てがない。無暗やらたらに探し回っても疲れるだけだ。
もし次に出会った時、誠心誠意謝らせてもらえればそれでいい。今は、それだけでいい。
話は戻って、フローリアからのアドバイス「ノラさんに会いなさい」を決行しよう。これは最重要目標である。またあの怒りの女神に会いたくはない。今度こそ殺されてしまう。
俺はノラさんに会うために宿から外に出て情報を集めようとした。だが、その必要はなかった。
宿を出ようと部屋から出て1階に降りた時だった。この宿は1階が食堂になっているのだが、そこにまさかのノラさんがいたのだ。正確には、料理を運んでいた。つまりは、ここで働いていた、ということだ。
「あれ、ノラさん?」
「え? あ、あの時襲われていた方!」
どうやら俺のことを分かってくれたらしい。覚えていなくても別に良かったのだが、なんか嬉しい。
「あの、俺が逃げた後……その、大丈夫だったんですか?」
俺はノラさんにへっぴり腰になりながらも聞いてみた。気になった、というのもあったが、やっぱり知っておかなければならないと思ったからだ。逃げた身としては、自分が犠牲にしてしまったのだから目を背ける訳にはいかない。
俺の問いにノラさんはキョトンとした後、微笑んだ。
その微笑みはまるで、全てを許す女神のようだった。少なくとも、俺にはそう見えたな。
「お気になさらず。あれは私が逃げてと言ったんです。あなたが悪いのではないですよ」
「……その語尾、癖なんですか?」
「うぇ? あ、いや、違っ」
こんな時にあれだが、気になってしまったのだから仕方がない。
俺に指摘され、顔を赤くして目を逸らすノラさん。とても可愛いかったが、何だか申し訳なくなってしまった。
「すいません、変なとこ指摘しちゃって」
「いえいえ、この語尾は子供の頃からの癖なので気にしないでください……ですよ」
「そうですか。分かりました」
やはり癖は中々抜けるものじゃないんだと思いつつ、俺は本題を切り出した。
「ノラさん、実は俺探している人がいるんです」
「探している人、ですか?」
「はい。名前は、ユウト。聞き覚えはありませんか?」
俺がそう聞いた瞬間、ノラさんの表情が一気に暗くなってしまった。その顔は、何かを知っているように見えたが、とても聞ける状況ではない。暗く、悲しそうな顔をしている人に聞く程俺はデリカシーのない男ではないさ。
「ユウト……を、探しているんですか」
「は、はい」
「……付いて来て下さい」
暗い顔のままのノラさんに、店は放っておいていいのかと思いながら俺は付いて行った。宿を出て、道になり歩き、向かった先は……墓地だった。
その墓地には数多くの墓が立っており、朝方の暗い雰囲気がなんとも言えず怖い。
そんな見渡す限り墓だらけの中で、ノラさんはピタリとある墓の前で止まった。その墓にはこう書いてあった。
英雄ユウト ここに眠る
「ユウトはもう、死んでしまったのですよ。世界を救うために」
目の前が真っ白になった。同時に、これからどうすればいいのかも分からなくなってしまった。
だってそうだろ。探せと言われた人が、既に死んでいるなんて思わない。聞かされてもいなかったんだ。頭が混乱しそうだよ。
はぁ、フローリアさん……俺はどうすればいいんですか? 死んでいる人を探せと言った貴女の気持ちが理解できない。
俺がユウトさんの墓の前で呆然と立ち尽くしていると、背後に気配を感じた。それは決して良い気配ではなく、寒気のようなものが混じった負の気配。
振り返ろうとした瞬間、爆風が俺を襲った。その爆風の中、微かに声が聞こえた。
「目障りな英雄には、消えてもらおう」
次回、襲来




