Ⅸ_スタメシア編 2
いよいよスタメシア共和国へ!
次の仲間、フェルゴを迎えに行く!
フェルゴに興味を持つカイ。しかし、スタメシア共和国へ行くのに、彼らはある問題に直面していた。
彼らは大きな問題にぶつかっていた。
「スノウは暑さに弱いから、これからは出せなくなるよ」
「私の空間魔法も使えない。魔法で飛んでいける距離でもないし」
「では、どうするというのだ」
次の仲間・フェルゴのいる島まで距離があるのだ。
スノウは暑さでダウンしているし、カルラも海の向こうの島に行ったことはないから空間魔法が使えない。
「もし、お困りですか?」
彼らに声をかけてきたのは宿屋の主人だった。
「この先の島に行きたいんですけど、どうやって行ったらいいのか分からなくて」
「お客様、それなら簡単です。船を使えばいいのですよ」
船、という方法を何故思い付かなかったのか。魔法を使わずとも、イメートを使わずとも、道具と人の力で使えるそれに。
「僕らずっと魔法が当たり前になっていたから思いつかなかったね」
「でも、船なんてどうやって調達する?」
「買うか、魔導士」
宿屋の主人は彼らの会話がなかなかおかしな方向にいくのを聞いて笑ってしまった。
「いえ、失礼。普通に船に乗せてもらえばいいのですよ」
これまた、彼らの頭になかったことだ。声を揃えて、あー、と三人は言った。そして、また主人に笑われた。
宿屋の主人にその島へ行く船と船乗りを紹介してもらった。
「あんた達三人だな。ただ、今日は客船じゃねーんだ。物資を運ぶ貨物船が今日は出るんだが、それでもいいなら乗せてくぜ」
「食べ物と寝るところがあれば、不満はないです」
乗せていってくれるだけ有りがたいのだから、わがままは言わないし、野宿をしていたのだから、それに比べればましだろう。
日焼けした船長はカルラをちらちら見ている。
「何か」
「いや、その」
そう言えば以前何かで海を行く船に女を乗せると沈没する、という言い伝えがある地域があると聞いたことがある。それを気にしているのだろうか。
「この船には女がいねーからなぁ」
「色々危ない、ということね。なら、カイ、ルリを出して」
カルラの指示に従い、ルリを召喚した。
「これで女は二人。しかも、ルリは水を操るし、料理もできる。それに、私は強いから心配いらない」
「嬢ちゃん、本当にいいんだな?」
「問題なし」
「オーケイ、船に乗りな」
こうして、船に乗り込むことができた。
カイは船乗り達の動きを見ていた。すると、何か布のようなものを垂らし始めた。
「それは何ですか?」
「帆だ。これで風をとらえて進むんだ」
「風を? この船を動かせるほどの強い風が吹くのですか?」
「当たり前だぜ! 風の力は集まれば大きな力になる。船乗りは海を制すと同時に風を制すと言われてるんだぜ。でないと、船は進まねーからな!」
と、元気に得意気に一人が答えた。
「僕にも、出来ることはありますか? せっかく乗せていただいたので」
そう叫ぶと、別の一人から声が帰ってきた。
「あんちゃん、魔法は? 風属性か水属性のどっちかでいいんだが」
「はい、使えます!」
「なら、ちょっと来い」
その人のところまで行くとその人は波か、風を使って船を港から出るまで動かしてほしい、と頼んできた。カイは風を使い、帆のところにピンポイントで風を当てて船を動かす方法を選択した。指示を聞きながらやってみる。
「おお! 良いじゃねえか! 初めてとは思えねぇぜ!」
とても誉められた。
エルバはというと、船の方にとても興味があり、船の構造について知るため、色々なところを見ていた。
「リーゲルトの水軍……作られるか?」
軍国出身なだけあって、新たな技術を投入しようと考えているようだ。
カルラとルリは船の家事をしていた。
「いやー、本当に助かります」
ルリの料理スキルが役立ってコックは新たなレパートリーを増やすことができたし、重い荷物はカルラの空間魔法のお陰で瞬時に移動させることができた。
初めての船旅は彼らにとって学ぶものが多かった。
二日間、船は海を行き、三日目の朝に目指す島国・スタメシア共和国が見えた。大小様々な島が集まっている。それは、昔、大陸から星を見ていた魔導士が海を特殊な望遠鏡で見ると、島があり、その明かりが小さな無数の星々に見えたことからこの名がついた。漁業と農業、そして最近は観光に力を入れている。
首都のある島に船をつける。航海の終わりだ。
「ありがとうございました」
礼を言って船員達と分かれ、仲間となる人を探す。
「そう言えば、どんな人なの?」
「フレイム・ダンサー、フェルゴ」
「フレイム・ダンサー?」
聞きなれない言葉にエルバは顔をしかめながら復唱する。
「なんでも今から七年前、齢十歳で島に押し寄せた海魔を火を使った躍りで退治したり、追い返したそう。信じられない話だけど」
確かに、十歳で島に押し寄せた海魔を撃退するなんて、普通では考えられないことだ。フェルゴ、一体どんな人なのだろうか。
「どこに行けば会えるの?」
「フェルゴの職業はダンサーだから、何かショーをする場所にいると思う。自宅は非公開」
キュリアの調べてくれた情報は少ないものだったが、これしかないのだから仕方ない。島の人間に聞くのがいいだろう。
「すいませーん、照り焼きチキンサンドとトロピカルカクテルサラダをそれぞれ3つください」
「カイ殿、自由すぎません?」
「カイ、ココヤシジュースも追加」
「魔導士まで!?」
とにかくまずは腹ごしらえだ。
島の人に聞いてみると、どうやら明日の離島公演のため本島には居ないらしい。まぁ、本来はもう少し遅く来る予定だったから、まだ仕事が残っているのだろう。明日の離島公演が終了し、明後日に本島でサヨナラ公演をして仲間に加わる予定だったのだから。
それまでここで滞在しつつ、北方の国と話をしているキュリア達からの連絡を待とう。
「早く会ってみたいな、フェルゴ」
炎のような赤い髪に特徴的なヘアスタイルをしているという。その髪型は燃える炎のような形だと島の人々は言うが、想像できない。しかし、奇抜な髪にダンサーという仕事はよく似合っていると思う。仕事はきっと派手な衣装なんかを着て激しく踊るのだろう。想像するだけで楽しく、熱くなりそうだ。
「ねぇ、カルラ姉。僕、フェルゴの躍りを見てみたいよ! きっととても胸が熱くなるような情熱的な躍りをするんだよ。仕事してる彼を見てみたい」
「でも、今は離島公演で本島にはまだ戻らないわよ」
「見に行こうよ、離島まで」
キラキラと波しぶきのようにきれいに光るカイの瞳にカルラは負けた。
「わかったわ。貴方は、エルバ?」
「私もフェルゴに興味がある」
早速三人は離島へ行く船を探し始めた。
連絡船を見つけ、それに乗ることになった。各島へ行くにはこの連絡船が国民の重要な交通網になっている。特にフェルゴのショーを見に来る人達が多いと、船が足りなくなるそうで、地元の漁師や空や海を行く大型のイメートを持つもの達の手も借りないといけなくなるほどの大盛況らしい。
降りてみると首都のある島と比べて民家が多い。しかし、小さな商店街があり、それなりに賑わっていた。
小さな子供達と子供達よりも大きな赤毛の青年が走り回っている。
「皆仲良しなんだね」
と、呑気に呟いたが、その青年の髪が赤毛でしかも炎のように特徴的なヘアスタイルをしていたのを二度見するとカイはあることに思い当たった。
「あれ、フェルゴかな?」
特徴が一致している。時折子供達もフェル兄ー、と呼ばれている。間違いないだろう。フェルゴだ。
「フェルゴ?」
カイの呼び掛けにフェルゴは顔をこちらに向けると子供達の輪から抜けた。
「アンタ達、誰だ?」
「僕はカイ。ウルガルド王国から来たんだ」
「あぁ、アンタ達が迎えに来たって奴等か。でも、迎えはまだ先のはずだが……さては、俺のショーを見に来たな?」
どうだ、当たりだろ?という視線を向けるフェルゴ。独特なキャラクターをお持ちのようだ、とカイは思った。
「う、うん。明日はどこで踊るの?」
「そこの浜辺さ。ほら、特設ステージが出来てるだろ? あそこで踊るんだぜ」
海の上に木で組まれた足場が出来ている。
「楽しみにしてろよ! そろそろ準備しに行くな。俺の自慢の躍り、ちゃーんと見とけよ!」
準備のために一端移動するフェルゴ。とても自信満々に言う彼にカイは明日のショーがとても楽しみになった。
IMATE世界あれこれそれ
◆スタメシア共和国
大小様々な島が集まっている。それは、昔、大陸から星を見ていた魔導士がふと海を特殊な望遠鏡で見ると、島があり、その明かりが小さな無数の星々に見えたことからこの名がついた。漁業と農業、そして最近は観光に力を入れている。リゾート地としても有名で、青い遠浅の海と白い砂浜、色とりどりの魚がいる、など、世界で訪れたいリゾートトップ5に入っている。特にフェルゴの炎を使ったショーで、かなりの人が訪れる。
◆フェルゴ
スタメシア共和国のダンサー。炎を使うためフレイム・ダンサーと呼ばれる。赤毛で炎のような髪型の青年。キメ顔にこだわる。テンションは高めで、小さな子供達とも一緒になって遊ぶ。あと、少しウザいかな、と思うときがある。
十年前に島に押し寄せた海魔達を自身の炎の舞で撃退したという話から、カイ達が島へ迎えに行く。
_________________
次回、炎のショー。浜辺の戦い。
急展開にご期待ください。