LⅩⅩⅧ 決戦編_10
『助太刀。後、悪天候の別視点』
または、降霊数え歌の真相と呪いについて。フェルゴ、3度目の絶望。
今回、ちょっと短いです。代わりにあとがきが長いです。
【side∶Seimei】
「星明様の一門は降霊術の使い手でしょうか?」
ミーナが星明に問いかける。
「如何にも。儂の世界では数多の異能使いがおった。我が一門は先祖代々、降霊術を受け継いできた家系でな」
降霊術。霊を使役し、それと交信して占いを行うというものだ。霊だけでなく死体を使うこともあり、術を使うには死と向き合うことが必要とされている。
星明の世界での降霊術は霊と契約し、彼らの得た記憶や考え方を膨大なデータとして蓄積し、それらを元に先の世を占い、時の権力者に助言を行ったり、この世界で言うところの魔力である生命力や法力・仙道などの力で術を行使したりする。霊の姿を多くの人間は見ることができないため、目に見えない攻撃や偵察、証拠を握ることなんてのもできる。
しかし、死者を使うのは実は邪法に近い。人の死を支配し、死後も現世へ縛り付け、術により干渉させるのだから、霊はいつまで経ってもあの世にも行けず、また転生ができない。よって、術の使用者は死後、人の姿を捨てることになる。霊達の苦しみを味わう呪いにより、人として死んだ数時間後、その体を苗床にした木が生えてくるのだ。
木になるくらい、と思うだろうが、この木は術者の魂が木の体を持って現世に現れたものである。魂が入った木はなんと感覚がある。視覚も、触覚も、聴覚も、嗅覚も、味覚も、痛覚も。なぜ、感覚があるのかと言えば、それは霊の痛みや苦しみを味わう呪いのためだ。
ヤズメが星明と初めて会った時、霊の数だけでなく彼の体からする匂いに反応した。この匂いは生前からも香るが、死後、木になってからは尚強く香る。それは動物達を集め、香りに釣られた彼らに葉も樹皮も食べられてしまう。葉や樹皮は人間で言うところの髪などの毛、爪、皮膚のようなものだ。それを生きたまま剥がされたり大量に抜かれたりしたらとても痛い。いや、痛いどころの話ではない。それと同じ感覚が木の状態でも起きているのだ。これが一回で済めばいいのだが、そんなことはない。木の自己修復機能が早く、数時間後にはまた元の状態に戻っており、また食害の痛みを味合わせるのだ。
「……そんな!」
恐ろしい呪いだ。ミーナが顔を青ざめさせる。
しかし、永遠にこの苦しみが続くわけではない。植物になっても動くことができなければ邪魔になることもある。木の除去をする際など、木が根本から切られたときと木が燃えた場合のみ、その魂は現世から開放される。最期に特大の痛みと苦しみを経て。
この一連の流れに話を聞き入っていた無属性魔導士達は恐れをなして体をブルブルと震わせている。近くの星明一派の顔を青ざめた顔で見る者もいる。当の星明一派の戦士はそんなことは承知しているとばかりに表情を変えない。術を習い始めた時から覚悟を決めていたからだ。碌な死に方をしないだろう、と言われた。それでも力を使うのはこの一門に生まれてしまった運命だ。それを皆が受け入れてここにいるのだ。
ここにいる無属性魔導士達は言わば先祖返りだと星明は聞いている。強大な力を扱うが故に迫害を受け、一つの国に流れ着いた者だと。中には迫害され続け、国から監視され飼い殺しにされ、一生自国から出られない者も居るというのだ。星明一派はそんな彼女達の生い立ちを憐れみ共感し、共にいることを許している。形は違えど彼女らと自分達は運命に翻弄される点で共通の仲間である。
きっと、一生を運命に縛られるあの方も彼女達を仲間と見て接してくださるだろう。
「運命とは、人を玩び繋げることが好きなものだな」
ふと星明は呟いた。
その時、丁度だ。城から紫の光の柱が発せられたのは。
「姫様っ!!」
それを叫んだのは一問の誰だったか。
見えぬ目でも、周囲の力が歪み、嫌な気配が瞬時に辺りに満ちたことは星明にもわかった。城の方を発生源としたその気配の方へ見えぬ目を向けた。
主の最悪と世界の災厄を誰もが想像してしまった。星明一派も無属性魔導士達も絶望の波に飲み込まれた。
「まだだ! 姫は無事だ!!」
ヤズメが叫んだ。城を見ていたヤズメだけが中で起きていたことを知っていた。だから事実を叫び知らせる。
「姫は最上部でカイ達といる! 姫は無事だ! 星明殿、貴様がしっかりしろ! 姫にまた会うのだろ!」
尚も城を見続け状況を報告するヤズメに星明はハッとする。無事に生きていれば姫に再び会える。ならば、姫から一派を預かる彼のやることは一つだ。それを思い出して命令する。
「皆の者、退避する!! ミーナ殿、我が一派を頼む!」
「は、はいっ!!」
無属性魔導士達は共に組んでいた星明一派を大陸に転移させる。星明以外の者が転移した終了した時、彼らの元へ大きな烏が重症の男を運んできたのはほぼ同時だった。
「この方、闇の道化師の服を」
「星明様、マスターが!! マスターが!!」
「……その声、リベリオ殿の烏か? ミーナ殿、彼奴は味方だ。すぐに治療を」
「わかりました!」
どうやら、リベリオのシナリオ通りに事が動かなくなったらしい。星明はリベリオの治療が終わると、来るように言われていたキュリアという女魔導士のいる本隊へ合流することを伝えた。
再び城へ見えぬ目を向ける。真っ暗の眼前には何も映らないがそれでもこの事態を睨まざるをえなかった。そして、彼らはその場から本隊へと転移した。
【side:Fergo】
「オイオイオイオイ! 一体何が起こってんだぁ!?」
精霊軍達は光の柱が立ち上る直前から不審な禍々しい魔力が城の地下から発せられていたのに気づいていた。目の前の敵に阻まれて近づくことも確認することもできなかったが、光の柱ができた瞬間、敵も味方も関係なく動きを止めて城に視線を奪われた。
今から燃やすまいとしていた敵に向けていた炎を引っ込め、代わりにその胸ぐらを掴み掲げる。
「オイ、何が起こったか答えろ。返答によっちゃ見逃してやるからよォ」
トカゲのような黄色の精霊の目に睨まれた敵の若い男は悲鳴を上げながら答えた。
「おおお恐らく! 先日採取した渡り者の血を魔王に与えて起動させたものと! それだけでも短時間なら動くことが可能だと仮説が出ていました故ぇ!!」
「短時間たぁどんくらいだぁ!!」
「ひええええ!! お、恐らく1時間だとぉ! 贄本体を入れられれば1日から3日は動きます故、1時間のうちに贄を魔王が取り込むまで我々が足止めしろとぉ!!」
「マジかよ……」
魔王が贄を取り込んでも人の活動限界時間を超えて動くことはないだろう、とガナック博士は見ていた。もって3日程、その間に強大な力を持って世界を破壊し尽くす。しかし、今、魔王は動き出した。血液だけで1時間。その間に魔王が贄を得れば世界が終わる。言い換えれば1時間の内に贄を奪取しこの島で魔王を抑え込めれば世界は救われる。
しかし、贄の候補達の内の3人が城にいるのだ。本命のカイの兄だけでなく、囚われていたサヤ姫とカイまでもが。
「兄ちゃん……」
フェルゴの生涯3度目の大きな絶望が襲ってきた。いつの間にか手から力が抜けており、先程まで掴んでいた敵はどこかへと逃げてしまっていた。
戦場の敵はこれから始まるのが世界の再生と新世界の創造だと喜んで歓声を上げていたが、フェルゴはそんな様子など目に入らず、ここではないどこかにいるような面持ちで、ただ呆然と戦場を眺めることしかできなかった。
IMATE世界あれそれこれ
◆星明一派
IMATEの世界とは違う世界から来た渡り者たち。サヤ姫のとある目的のために護衛として渡来。渡り者を集めていた闇の道化師により半ば拉致される形で彼らの本拠地マガズミへ。サヤ姫の能力が闇の道化師達の悲願をぶっ壊すものであったため、彼らの城へ幽閉される。主を奪われた星明達は城の麓で姫の帰りを待ちつつ修行に励んでいた。
星明一派は死者の霊魂を操る技を使い、主を守り、勝利に貢献してきたが、霊魂を操るという外法とも言える技には呪いが付きもので、彼らの死後に魂は木となり、操った霊魂の痛みや苦しみをその身に半永久的に受ける。
尚、星明一派の術を使う者達はこの呪いを承知で力を使っている。
霊を操る際は数え歌のように霊の力を引き出したり、力を与えたり、形質を変化させたりする。
以下、考えたけれども、本編で入れられなかった歌詞たち。
「百に届かなし、百々悲しき語り部は」
「千で千々に果てなく戦闘」
「万で満ちる万事の審判」
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次回、『魔王は贄を望ム』
とうとう魔王との戦闘開始です。魔王はだいたいガンダムやニルヴァーシュくらいを想定してるんですが、これ、戦ってるのはほとんど人間なんですよね。書いてる自分が言うのもあれですが、カイ君達、勝てるのかって不安になります。勝たせてみせますけどね!




