ⅬⅩⅩⅤ 決戦編_7
『降霊数え歌』
グロ注意なやつです!
最後、後書きにとても簡単に内容をまとめてみました。
【side∶Seimei’s】
「今だ!」
「武器をとれ! 我々も遅れるな!」
男達の声に星明は顔を上げる。傍らにはミーナがおり、心配そうに星明の体を支えて、立ち上がるのを補助する。
無属性魔導士隊はこの島に残る最後の渡り者の集団と行動を共にしていた。彼らが捕らえられることなく大陸へ移動させるためであるが、彼らは移動する前に戦うことを選んだ。本当は自分達の手でサヤ姫を救出したかったが贄にされた時のこと、された場合、小さな姫を踏み潰すかなんかで殺してしまうのでは、という危険からそれを断念した。
しかし、今までの仕打ちは忘れない。姫に何年も会えず、また姫が牢の中に閉じ込められていた屈辱と怒りは、十分すぎるほどに彼らを復讐へと駆り立てた。一発、きつく痛いのをお見舞いしてやらねば気が済まぬ、やられたら倍返し以上のお礼参りをせねば、という気合いだ。
「一つ火遊び一遊べ」
歌が唱和される。前方がカッと明るくなり、炎が上がる。しかし、その炎は大地から立ち上るように燃えるのではなく、空中を踊るように縦横無尽に飛び回って燃えているのだ。
人魂、という星明の世界の星明の国での霊の形の一種なのだそうだ。この世界の火属性の魔法でも、縦横無尽に空中を飛び回る火の玉の魔法はない。爆発させたり、火を生き物のように操ることはあれど、玉の状態で操る魔法はない。ミーナら無属性魔導士達はその光景に興味と恐れを抱きながらも星明一派の一人一人に貼り付きサポートをする。
「二つ分かれて仏魔出ん」
二度目の唱和。人魂は人形となる。上半身が二つに分かれて一方には神々しく優しい顔立ちをした人物が、もう一方には恐ろしく醜い魔物の人型の生き物になる。
それがこちらに向かってくる闇の道化師を悪魔が火を吹いて襲い、仏は手にした錫杖で叩きにかかる。
闇の道化師も対処はするが、攻撃のバリエーションが予測できないため防戦一方になる。
「三つ見続け惨状を」
先程とは別の男達が唱和する。
まだ残っていた人魂が大地へ飛び込んだかと思うと、青い炎が広がる。人魂や炎の魔神に追いたてられる闇の道化師は進行方向上にある炎の海に足を踏み入れるしかない。逃れるため意を決してそこへ飛び込んだ。
しかし、そこに待っていたのは惨状だった。見た目ではわからないが青い炎は高温で、飛び込んだ闇の道化師達は悲鳴を上げて燃えていく。熱い熱いと生きながら足を焼かれ、炭化し、崩れ、どんどん炎の海に沈み込むように消えていく。
肉が焼け焦げ、血が蒸発する臭いに無属性魔道士達が吐き気をもよおす。五感全てで惨状を伝えてくる技を使いこなす星明一派は誰一人として動揺を見せず、普段と同じように立って唱和を続ける。
「四つ知らずに死者、獅子呼んで」
炭化しても骨と炭は残る。業火に焼かれても、自分が死んだことに気づかず蠢く敵もいる。それを確実に仕留めるため更に歌を重ねて、死者の骨で遊ぶ炎の獅子を召喚する。炎の獅子は蠢く骨を見つけると、バリバリと音を立て、踏みつけ、噛み砕き、飲み込みながらその躯を燃やしきる。
これは呪歌なのだ。恐ろしい呪いの歌。呪いを司る闇属性の魔法でも、こんなに恐ろしいものはない。無属性魔導士でも、このレベルの凄惨な呪いを作る者はいないだろう。
「五つ居つつも射つつまで」
別のグループが唱和する。こちらは別の闇の道化師を相手取っていたグループだ。
2つ目の魔神が変化し、炎の弓矢をつがえた。逃げ惑う敵や水の魔法で応戦する敵に一斉に矢を射る。水の魔法を使った者は無傷で攻撃を防いたが、逃げ惑った敵の体をその矢が貫いた。
「六つ睦まじ六の華」
射抜かれた体が突如として凍りついた。射抜かれた箇所を中心に氷の花が咲いていく。一つ、二つとその数を増やし、やがて体を氷の花が全身にまで広がる。
最後にパキン、と音を立てて氷像となった敵は血を撒き散らすことなく砕けた。後に残ったのは砕けた氷の中に6枚の花弁を持つ氷の花が二輪、そこに人がいたことを証明するように咲いていた。
「七つ死地にて亡骸踊る」
7度目の唱和。出ていた魔神が全て合体し、巨大な骸骨を作る。頭蓋、顎、頚椎、と頭から順々に形作られて現れる骸骨。その体は青白く光り、眼孔からは、ぼうっと火の玉が目玉のように燃える。全ての骨が形作られて最後に心臓部に眼孔と同じ色の炎が灯る。魂が入ったように、その骸骨は足を踏み鳴らして体を踊らせた。
カラカラ、カタカタ、キシキシ、パキポキ……。音を響かせて踊る骨。その踊りの最中に敵を踏みつぶしたり、蹴り上げたり。大きな骨の足は一人、また一人と敵を削っていく。
「八つ八千代に罰下る」
8つ目。骸骨の体が分解され、残りの敵を捕らえる。背骨の一部と肋骨を残し、手が、足が、顔が、敵を捉えては巨大化した肋骨の檻に入れていく。そして、敵を全て捉えてしまった。
肋骨の檻から出ようとある者は魔法で破壊しようとし、ある者は隙間をくぐり抜けようとし、またある者は肋骨を登り上から出ようとしている。
しかし、骸骨は許さない。
魔法は骨を透過した。壊すことができなかった。隙間から出ようとした者、登って出ようとした者には心臓の炎が火花を散らして、結果的に中に囚われた者達に炎の雨を中に降らせた。
もう逃げられない。ここからは、もう二度と生きて出ることができないのだ。
「九つ括り苦しき剄り」
9回目の唱和。
空中に浮いた手の指の骨が互いの指と青い糸で繋がる。細く長く、その糸は肋骨の間をすっ、と通り抜けた。なんとなくこの後の予想ができる。闇の道化師達は訪れる未来に恐怖し、星明一派や無属性魔導士軍に助けを求める。それで助けるなんていうお優しい心を持つ人間はここには存在しないので、それは無意味な行為なのだが。
青い糸は敵の周りをぐるりと一周回るように配置される。そして、その糸はヒュッ! という風を切る音。直後、最期の音が廊の中で埋め尽くされ、ひきしめられ、斬られて飛び散った物で肋骨の牢の中は見えなくなった。
「十に轟け永遠の問い」
10度目の唱和。骸骨は己の中の肉の細切れを見て問いかける。
『同胞カ、糧カ?』
細切れから青い炎が這い出し、それが心臓の青い炎へ向かう。一つ、また一つ、と心臓の炎へと飛び込む。全ての魂が心臓に入り、髑髏は跡形もなく空気に溶けるように消えていった。
ここに敵は一人も残っていなかった。
「……全滅したな」
ヤズメが口を開く。敵の気配は近くで戦う本隊と精霊軍、そして内部で戦う者だけだ。
周りの星明一派の術師達は疲弊しており、膝から崩れ落ちている者もいる。無属性魔導士なんかは精神的に限界だったようで暫く動けそうにない。できれば早々にここを離れ大陸の安全なところへ彼らを移送するのが懸命なのだが……。動けそうなのはヤズメを含めて星明ぐらいか。辛うじてミーナも動けるだろうが、気が動転した今、魔法を使うのはおすすめしない。
ヤズメは敵の奇襲に備えて刃をいつでも抜けるように辺りを警戒する。そのうち、周りが立ち直るだろう。
IMATE世界あれそれこれ
◆星明一派
降霊術の使い手。星明からは術を教えられ、更にメンタルを鋼レベルに鍛えられた僧兵の術者達による降霊と使役を行う。情けや霊への恐怖心はかなぐり捨てた。後に術の重大な秘密有り。術には人魂を使うので炎系の技が多い。
まとめ
星明一派は幽霊を使って攻撃。歌に合わせて幽霊が幽霊を作って攻撃というホラー展開。歌詞もダークで物騒。大の大人が何十人も不気味な歌を歌うので更にホラー。霊を呪歌で数えつつ操り攻撃する。これ、内容が深夜枠だったわ……。
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次回、『それぞれの戦い』
「言われなくてもやってやるっての!」




