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IMATE  作者: 風雅雪夜
決戦編
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ⅬⅩⅩⅠ 決戦編_3

 魔法を研究するガナックは渡り者達の協力を得て新たな発見をした。彼は新たな仮説や得た事実を嬉しそうにエルバに語って聞かせた。それはもう、宝物を見つけた子供のようにはしゃいでいた。


『ガナック博士の研究』

―――エルバの回想




 エルバはィユェージィの端、ガナックの家で休憩していた。まだまだ自分の力を完全に出せていない、まだ風の力と仲良くなれる筈だ、と鍛錬をしているのだ。流石に自分と同化したイメート・フウから休憩を強く勧められ、風の力を制限されてしまっては休憩せざるを得ない。

 今はフウの言葉通りに休んで、少ししてからまた頑張ろう、と彼はガナック特製のビネガードリンクをちびちびと頂いていた。



「調子はどうだ?」



 ガナックのイメートのヤズメが問う。彼女から色々と助けてもらっている。そんな彼女が自分の新技や力について気にしているのだ。



「技の威力も精度も上がってきています。ヤズメ殿のご助言のお陰です。なんとお礼をしていいか」

「いや、お前達の力だ。私は何もしていない。私にできることはサポートくらいだ」



 ヤズメは二杯目のドリンクを注ぎ、完成したばかりの焼き菓子を差し出す。こういうサポートがあるから、人を守ろうと思えるし、強くなりたいと思う。そしてより一層、鍛錬を頑張れる。


 ヤズメはガナックのイメートの中でも珍しく攻撃に特化した竜人のイメートだ。ただし、これもどこかの世界の伝説の竜の子供がモチーフだと言うため、伝承があやふやだ。設定も盛りだくさんらしく、色々と盛り込んだ結果が、この何でもできるヤズメらしい。伝承や逸話、設定が渋滞した結果、サポートも戦闘もなんでもござれなスーパーイメートが誕生したわけなのだが……。



「お礼代わりに後で手合わせをさせてくれ。どれだけお前達が強くなったか興味がある」

「ええ、是非」



 本当に、どうしてヤズメはハイスペックなんだ。

 エルバも王子であり軍人だが、こんなにかっこよく振る舞えたことはない。憧れる。何故、彼女はガナックのイメートなのか。


 そんなガナックと言えば、渡り者達がたくさん集まったことで、今まで仮設を立てても検証できなかった渡り者についての問題や疑問の解消に力を注いでいる。

 一族の祖、アディータ・クエストが研究し、世に発表した魔素や魔法、イメートについて、新たな発見が見つかっているらしく眠ることさえ忘れているらしい。お陰でヤズメはガナックの健康管理に、より気をつけなくてはならなくなった。


 で、ヤズメに強制的に眠らされたガナックが目を覚まして遅い昼食を取り始めたのがついさっき。ガナックはどうも新たな発見を誰かに話したくて仕方がないようでヤズメとエルバの会話が終わるのを今か今かと待っていた。

 今か? 今か? みたいな視線にエルバとヤズメは空気を読んでガナックに話を促す。



「ガナック博士、何か新たな発見でもあったんですか?」

「マスター、視線がうるさい」



 話を振ってやれば、待ってました! と言わんばかりに目を輝かせ、得意げになりながらガナックは博士のように❨ように、どころか本当に博士なのだが❩話し始めた。



「まあまあ。そう焦るでないぞ、お二方。これから話してやりますから、ちゃーんと聞いてておくんなさいね」



 その喋り方はどこから来たのか。まぁ、語ってくれるのだから黙って博士の発見を聞こう。エルバはヤズメの用意してくれた焼き菓子を一つつまんだ。





 ガナックは今度の上陸奇襲奪還作戦ために長年の研究の仮説を渡り者の有志数名と共に研究していた。


 この世界の魔素が魔法へ、それと自分の魔力や思いと混ざり合い、形を与えてやることでイメートとなる。それを渡り者の体に再び融合や同化という方法で戻せばどうなるか。

 答えは、渡り者でもこの世界の魔力を取り入れることができる、であった。


 エルバと同じように人とイメートを同化させてその前と後を比較していた。その結果、渡り者でもイメートと同化すれば、この世界の人間と同じように無属性の因子を取り入れられたのだ。この結果にガナックはとても驚いたのだ。



「この世界のものを取り入れれば、この世界の人になれる、他の世界ではヨモツヘグイ? って言ったかな。そんな伝承も異世界にはあるみたいでね。これはなかなかいい情報を得てしまったんだよ」



 渡り者の文化や伝承がこの世界でも作用するのは不思議なことだし面白いとガナックは語る。これについてもまた研究を進めてみたいと子供のように語る。

 そして、そのイメートを用いた実験はエルバや渡り者であるカイにも有益な結果をもたらしたのだ。



「つまりだね、エルバ君。イメートという生命のある魔法を支えているのは我々イメートの創造主の魔力とこの世界に溢れる結合する性質のある魔素だ。この結合する性質を持つ魔素はこの世界特有のものらしい。そう渡り者達からは聞いているのだよ」



 学者らしくエルバに自らの研究成果を語るガナック。本職だからか、とても生き生きとしている。



「この世界の魔法体系は無属性を中心に各属性が円を描くように配置されている。光、風、水、闇、土、火、そして中央に無属性の時間と空間。中央の無属性は各属性と手を繋ぐような形になっている。六角錐を底面の六角形同士で合わせた形だ。無属性を挟んで対局にある属性とは相性が悪い。しかし、相性の悪い属性の間に無属性が入っていることで、それぞれの属性は繋がっている。他の世界では火・水・雷の三竦みだったり、三竦みに更に属性を足したり、或いは個人が潜在的に持つ技能や属性により、魔力の量とレベルで魔法が使えるというものだったりするようだ」



 この世界の魔法体系を作ったのは彼の先祖、アディータ・クエストだ。この世界で魔法を使う全ての人間が知っている。後半は渡り者達から聞いたのだろう。エルバの知らない魔法体系だ。


「もし、無属性が時間と空間の他に結合という特性があったとすれば。これは新たな発見だ。無属性が結合の性質だとしたら、無属性=魔素となる。つまり、今までは無理矢理強いショックで無属性を引き出すことでしか無属性を得るしかなかったが、自らのイメートを取り込み同化することで、我々は無属性を引き出すことも可能だということだよ、エルバ君」



 新たな発見に興奮しながら語るガナック。ふんすっ、と鼻息を荒くしている。 しかし、魔素を取り込むなら、魔素の塊、結晶である魔水晶を取り込んでも同じなのではないだろうか。



「しかし、博士。魔素=無属性なら、魔素の塊である魔水晶を取り込んでも同じなのではないでしょうか」

「そこだよ、エルバ君!」



 ビシィッ、と指を指して彼は答える。



「それで同じように無属性を得られるのではないか、それも実験してみたさ! ……しかしね、魔水晶の塊を彼らに摂取させてみたが、無属性の因子は得られなかったんだ」

「それは何故ですか?」



 ガナックは静かに椅子に座り、考えるように説明する。



「魔水晶はあくまでただの魔素、エネルギーなんだよ。ご飯とかの食事と同じでさ。確かに吸収はされるよ。でも、それはエネルギーとしてすぐに使われてしまう。ほら、魔水晶は魔力不足を解消したり、魔力の上乗せだったりですぐに使われるだろう? でもイメートを同化するのはそれと異なる。イメートは生きた魔法だ。魔素ではなく魔法を取り込む。大雑把に言うと自分の一部が魔法になるんだ。魔力と魔素が結合して魔法になる。それは一時的じゃなく恒久的なものなんだよ。そこが違いだね」



 ご飯と魔法、面白い例えだが、分かりやすいとエルバは思い感心した。吸収のされ方に根本的な違いがある。だから魔水晶をガリガリとたくさん食べても、イメートと同化したような結果は得られない。

 まぁ、それで無属性が目覚めるというなら皆が皆やるだろうし、爆発的にこの話が広がるだろう。トラウマ級の嫌な思いをしなくともお手軽に無属性が目覚めれば万々歳だが、そうは問屋が卸さない。エルバ自身は既に因子を持っているが、まだ無属性に目覚めていない。



「それでねエルバ君、これが最後の手段なんだ。もしカイ君が、彼のお兄さんが、贄にされる事態が現実に起こりそうなら……」




―――その前に彼らをイメートと同化させるんだ。なんとしても。いいね?






―――――――回想終了

―――――

―――



「ェエエエエエエエエルゥゥゥゥゥバアアアアアアアアアア!!!!!!!!」



 現実がすごい勢いで帰って来た。

 モンスターシスター(カルラ)が風魔法で飛んできたのだ。風圧でテントが吹っ飛んでいる。後でいろんな方面から相当なお叱りを自分も彼女も受けそうだ、と覚悟した。


 その後、キュリアとラツィオに、特にカルラはこってりと絞られ、エルバは厳重に注意を受けた。そして、謝罪とテントの修復に尽力した。

 エルバの体はイメートと融合したことで、魔法を体に組み込まれた、一部魔法に作り変えられた状態になっている、という感じです。入れ墨だとか魔法を付与された、とはまたちょっと違う感じなんです。読者の皆さんに伝わってくれるといいなぁと思うのですが……。



 次回、『竜の目は色々見えて、人は色々感じ取る』


「盲目は目が効かん代わりに耳がいいのだ」(盲目の渡り者、星明の言葉)


 ヤズメが出会った渡り者の男・星明は彼女に一つの頼み事をする。しかし、頼み事よりもヤズメは彼の背後に漂うものに驚いた。




 皆様、体には気をつけてくださいね。

 それでは、また。

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