ⅩLⅡ ウラグフェスタ編_6
街道で闇の道化師と戦うことになったカイ達。闇の道化師はハクとセイを狙っていた。それを守りながらカイの達を追ってきたフェルゴ。途中、火の力が足りずピンチになるが、カイのイメートのコハクと、テイマのお陰でエネルギーを取り戻し、反撃を開始した。
『渡り者の行き先』
フェルゴの様子を見て安心したカイはその辺の石を拾い魔力を込め、天高く投げあげる。
「堕ち星!」
落ちてくる石は空中で加速度をつけながら小さく分離し、石の雨となり、闇の道化師へと降り注ぐ。
「相手はたったの五人だ! 数は我々が上だ! 魔力切れを起こさせろ!」
リーダーらしき人物が叫ぶ。
「魔力が先に切れるのは、貴方達だと思うよ」
テイマがカルラと力を合わせて土の小さな要塞を作り上げて迎撃する。そこに守られているハクとセイは、皆を驚きの表情で見ている。
「貴殿方は一体?」
「まぁ、こいつらの敵ってとこ。貴女達の味方だよ。大丈夫。この人達は強いから、安心してて。絶対にあの人達に渡してやらないからさ」
明るくテイマは言った。
「何故、お前達は二人を狙う? 一体何を考えている? 答えろ! 闇の道化師!」
剣劇と共にカイが問う。彼らは何も答えない。剣と魔法の応酬だ。自分が使える属性全ての魔法を使って、相手を翻弄するカイ。その様子にリーダーらしき人物が剣を向けて静かに問う。
「貴様、無属性か?」
「だったら!」
「この世界の生まれのものに用はない。引け」
「断る!」
こいつは今、気になることを言った。“この世界の生まれのもの”と。この世界以外にも世界があることを知っている。
「お前、他の世界のことを知っているのか?」
恐る恐る問う。すると敵は一度距離を取り、ほう、と何かを推理したようで呟く。
「……そうか。貴様、やはり異世界人の渡り者か」
異世界人の渡り者。奴はそう言った。
「この魔剣士も捕らえろ。贄は多いに越したことはない」
その場にいる全ての者がカイを見た。闇の道化師達はカイの方へ跳んでくる。
「姐さん!」
カイの足元に白い魔方陣が浮かび上がる。カルラの魔法だとわかったとき、彼はカルラ達の所へと移動していた。
「間に合った!」
テイマが現れたカイを見て安堵した。しかし、安心している暇はない、闇の道化師はカルラ達の方向へ素早く方向転換してきたのだから。
「心臓縛り」
怒りに満ちた声でカルラが静かにその魔法を唱えた。
「ぐっ」
「うっ」
空間魔法で心臓を縛り、空間に固定した。それは血流を生み出し、生きるための大事な装置を止めるということ。
「カイを贄にするなんて、私が許さない。よって私があの世に送る」
バタバタと闇の道化師達が倒れた。
その光景に急に背筋が寒くなった。前にカルラが自分達の前からいなくなったあの時よりも、怖い。肝が潰されるような、そんな感じだ。
「……止めて、カルラ姉。だめだよ。必要以上に命を奪っちゃ。だめだよ」
たとえ敵でも、命を奪いすぎるのは良くない。なにより、カルラの手がこいつらで汚れるのは嫌だ。
カイが呟くように、カルラの手を握って止める。
震えるその手を優しく包み込むように握り返し、カルラは闇の道化師達を空間魔法で拘束して、心臓縛りの魔法を解いた。
闇の道化師が意識を回復させたところで、彼らは問う。
「贄って何? どうして、僕を狙ったの? ハクさんとセイちゃんを狙ったのも、僕らが異世界の人だから?」
「ふん。闇属性があるのだから、自分で見てみるがよかろう、渡り者よ」
答えるつもりはないらしい。カイとカルラは頷き二人で手を繋ぎ、彼らの記憶を読み取ることにした。
「「メモリード」」
流れ込む映像と音声。
海の向こうの黒い島。狂暴な魔物。牢屋に入れられた人々。
『魔王様を復活させるには贄が必要だ』
『異世界から来たものこそ、復活させる贄となれる大役を背負いし者』
『探せ』
『捜せ』
『贄は多いに越したことはない』
機械の人形の周りにいるたくさんの人々。そして、最後に見えたのは、カイと顔立ちがよく似た、カイより少し年上に見える男性。
『エイク様』
「っ!?」
思わず飛び退き後ずさる。その飛び退いた勢いを殺しきれず、カイは尻餅を着いた。
「カイ、大丈夫よ」
安心させるようにカイを抱くカルラ。キッと闇の道化師を睨みつける。そして、カイを男三人に預け、立ち上がる。
「エルバ、テイマ、フェルゴ。カイをお願い。ちょっと戻って、こいつら檻にぶちこんでくる。すぐ戻るから」
カルラはそう言い終わると、白い光と共に奴等と消えた。そして、十分程で戻ってきた。
「カイ、大丈夫よ。大丈夫だから」
沈んだカイに声をかけ続けるカルラ。
「……カルラ姉。兄さんが、いたんだ。あいつらに贄って呼ばれて、エイク様って……」
「ええ」
心配、という顔でカイはカルラに問う。
「僕、兄さんを取り戻したい。けど、なんで? なんで、兄さんがこの世界に? どうしてあいつらが兄さんといるの? ねえ、どうして?」
「カイ、落ち着いて。……大丈夫だから、私が取り返してあげるから」
カルラの言葉でカイはようやく落ち着きを取り戻す。
一同が重い空気になる中、一人が口を開いた。
「よく、わかんねぇけど、兄ちゃんの兄さんが奴等のとこにいるんなら、奴等から助け出さねぇとな。俺は兄ちゃんに助けられたんだから、俺にも手伝わせてくれよ。何かお返しをさせてくれよ」
フェルゴが真剣に言う。手を握ってくる彼の手は安心させるような、優しい温かさの手だ。
「提案なんだが、俺達は奴等のことよく知らないといけない。なら、東の方の学者の国に行った方がいいと思う。誰か一人くらい奴等のこと研究してたり、魔王について研究してるやつがいても不思議じゃない。そこで何かわかれば、兄ちゃんも少し落ち着くと思うんだ」
「そうだな。敵を知らないと攻略しようもないものな」
フェルゴの提案にエルバがのる。
「フェルゴに一票。僕もそれがいいと思うな。そういうの、ちゃんと知っておくべきだよ」
明るい声で賛同する。
そして、カルラとカイを見る。
「カイ……無理にとは言わないわ。もし、貴方がこの任務から下りたいのであれば私は止めないから」
一呼吸。落ち着いて空気を吸って吐く。
優しい彼らに心が少し軽くなる。前を向けた。彼らのために答えなければ。
「……僕、行く。知らなきゃいけないんだ。この世界の僕がどんな存在なのかを。奴等にとって、“渡り者の僕ら”がどんな存在なのかを」
僕ら、でハクとセイを見る。彼女達も頷いた。
「よし! じゃあ俺は、その隙に仲間を集めて来る。声かけりゃ四大精霊の一組や二組は集まってくれるはずだ。だから、ちょっと時間をくれ。一月ぐらい。絶対に仲間を集めて来る。仲間は多い方が心強いだろ?」
にかっとフェルゴが笑う。太陽のような笑顔を見ると何だか雲が晴れていく。
行く先は決まった。
「よし、行こう!」
立ち上がり、次の場所を目指した。
IMATE世界あれそれこれ
魔法
◆堕ち星
土属性。石に魔力を込め高く投げ上げた後に呪文を唱える。落ちてきた石は落下による加速度をつけながら細かく分離し、石の雨となって降り注ぐ。
◆心臓縛り
闇属性と無属性。心臓を無属性で縛り固定し、動きを制限もしくは一時的に止めて死に至らしめる魔法。仮死状態になるときも使えるが、あまりお勧めしない。
◆メモリード
Ⅳ話辺りで出てきた記憶を読む闇属性の魔法。
その他
◆渡り者
イメートの世界の生まれではない、異世界からこの世界へやって来た者達。魔王復活の為の贄。
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不安を抱えて次の目的地へ。大陸の一番端の国、学者が住まう国へ。
そこで待っているのは一人の男。
彼は語る。
この世界の本当の歴史を。
この世界の秘密を。
暴かれるべき秘密を。
前に進むための秘密を。
次回、新章。秘密編。ご期待ください、
今回も読んでいただき、ありがとうございました。




