ⅩⅩⅩⅧ ウラグフェスタ編_2
こんなお祭りにいるには、やっぱりお祭りを盛り上げるやつがいないと。あの燃えるような真っ赤な髪と、炎と踊るあのダンサーがいなければ、お祭りの火はつかない。心の火もつかない。
『フェルゴといっしょ』
「いやー、まさか兄ちゃん達がここに来るなんてなぁ」
「いそうな気がするなぁ、と思ったら本当にいるんだもん。こっちがビックリだよ」
「そうだな! ハハハハ! あ、おじさん、もう一皿肉追加で」
「へい」
定食屋でフェルゴと食事をするカイ達。フェルゴが、ショーが終わった後はとてもお腹が空くので定食屋で燃料を補給したい、という希望があったからだ。
「兄ちゃん達は通り道だから、だよな?」
「うん。フェルゴは?」
もう故郷の火山探しは終わったのだろうか。
「ウラグフェスタがあるって聞いたから馳せ参じたってやつ」
やっぱりか。
「あの後な、大陸について、とりあえず火山に行ったんだよ。で、そこから、火山の中に入った」
「入った!?」
「で、マグマの中を通って、火山巡りして……」
「マグマ通った!?」
「で、見つけた。二日で」
「はやっ!?」
「合いの手ありがとな。緑の」
「いえいえ」
緑の、もとい、テイマがいい感じで合いの手をいれてくれるので、フェルゴは彼のことを気に入ったようだ。この二人はすぐに意気投合してくれそうだと、フェルゴと再会した時カイは思っていた。旅人とダンサー、どこか自由な彼らは、すぐにお互いと仲良くなれたようだ。
「その後なー、どうしようかわかんなかったから、とりあえず世界中の火山巡りしてたんだよ。で、たまたま、そこのバリックガル山の火口から出て山からの景色をぼーんやりと眺めてたんだよ。そしたら、遭難者と間違えられて麓連れていかれてさ。いや、参った参った」
さらっとすごいことをしてる気がする。流石精霊サラマンダー。しかし、自分達もあの後、極寒の北国へ行ったり、クーデターに参加したり、かなりすごいことをしていたことを思い出す。
「いや、お前らこそ何してんだよ。よく生きてるな」
簡単にフェルゴと別れたあれからを話してみたら、フェルゴに驚かれた。精霊を驚かせた人間なんてそうそういないかもしれない。ちょっと誇りに思うことにした。
「まぁ、お互い、大変だったんだな」
追加の肉を皆に勧めながら彼は言った。
「ところでさ、僕フェルゴのことあんまり知らないんだけど、マグマの中を通るとかどういうことなの? 炎を操るものだったら簡単なの?」
「おん? そういや、緑のは新顔だったもんな。もしかして、俺のこと兄ちゃん達から聞いてねぇの? 俺、精霊サラマンダーにして炎のジン・イフリートってこと」
「………………んん? ちょっとヨクワカンナイ」
情報が処理しきれていない。
フェルゴとカイ達がテイマに丁寧にやさしく説明するとようやくわかってくれた。
「君も大変だったんだね」
そう言ってさっき自分が追加で注文した麻婆豆腐をフェルゴに勧めた。
ここでフェルゴに会ったのも何かの縁なので、フェルゴに宿を紹介して貰い、明日ショーを最前席で見せてもらえることになった。
「今度は海魔なんて現れねーから安心して見られるぜ」
水気のないところで出てたまるか。出るとしたらどうやって出るのだろう。召喚魔法だったら、話は別だが。
「出たら出たで、それは怖いがな」
エルバの言葉にそうだな、と笑うフェルゴ。前よりも凄く明るくなった。やっぱり、ショーをするという目的があるといきいきするのだろう。
「おやすみフェルゴ」
「おう! また明日な!」
とびきりのいい笑顔だ。明日が楽しみになる。
生きるのも、何をするのも。
「おっはよーっす!」
朝からカイ達を宿屋のロビーで待っていたのはフェルゴだった。朝にふさわしい爽やかな笑顔つきだ。好青年というのはこういうものかもしれない。
「朝から元気だね、フェルゴ」
「おう! 俺はいつも誰かの心に明るい火をつける為に元気でなくちゃならないんだ。皆に教えられたんだ。もちろん、兄ちゃんからもな」
考える時間はたくさんあった。なら、自分を見つめ直して、自分を変えることができたのだろう。もう、あの時の死にたがっていたフェルゴはいない。それがとても嬉しかった。
「朝飯、食いに行こーぜ! 俺、いいとこ知ってんだ!」
得意気に笑うその笑顔につられてこちらも笑顔になる。
「いいねぇ。フェルゴのおすすめ、楽しみだな」
「火じゃないわよね?」
「ちゃんと食えるやつだよ!」
「なら安心だ」
「なぁ、お前ら俺をなんだと思ってるんだよ!?」
宿屋の親父に『元気でよろしいがうるせぇ!』、と怒鳴られながらカイ達は宿屋を出た。
朝食はちゃんと食べられるものだった。おいしい不思議な惣菜パンを売る屋台。それを頬張るカイ達。
ほかほかで、調味料で深い味をつけて、ひき肉と細かく切った野菜と炒めた中身、不思議なもちもちとしたもので包んである。多分、この生地はパンではないのだろうが、とりあえず、不思議な惣菜パンと言っておく。
「これはさ、米粉を練って生地に具材を入れてから蒸して焼いたやつなんだと。この辺の地元飯ってやつ。どうだ? うまいだろ」
「不思議な食感だね。これはまだ食べたことないやつだ」
「うむ。もちもちしていて食べごたえがあるな」
「あったかくていいね」
ウラグフェスタのために集まった様々な国や自治区、民族の料理がたくさんだ。どれを食べても外れなし、というほどの賑わい。
ふと横を見れば、今までいたはずのカルラがいない。辺りを見回すと宝石のようなキラキラした果物の飴を買っていた。顔がとても嬉しそうだ。
「涼しい顔して飴を買うんだな。あの店、若い娘達には大人気で見てるだけで笑顔になるのによぉ」
ぼそりとフェルゴは言った。フェルゴにはカルラの顔が無表情に見えるようだ。カイにはかなり顔が嬉しそうに見えるのに。エルバもテイマもあの顔は少しだが喜んでいる顔だ、とわかるようでフェルゴの言葉を否定していた。
彼女の、12年の戦いが終わったこともあるのだろう。表情も言葉もだんだん明るくなってきている気がする。
食べながらフェルゴはウラグフェスタのことをカイ達に話す。
「このウラグはさ、もともと様々な文化のある国でさ、食に文学、芸術に武術、薬学の長ーい歴史のある国なんだよ。で、今の皇帝がこの歴史と文化を世界に発信して広めようって始めたのが、このウラグフェスタなんだと」
「へー。ウラグ帝国って本当はとても見るものの多い国だったのか。……あーん、もう! 何でこんな面白そうなこと知らなかったんだよ僕ー!」
フェルゴの説明を聞いて悔しがるテイマ。旅人として許せないのだろう。かなり東の方へ来たのだ。知らなかったのも無理はない。自分の足で歩いて旅をしているのだから行ける場所も限られるだろうし。
フェルゴはどうどう、とテイマをなだめている。荒れたのはカルラではなくテイマだったか。
「さて、そろそろショーに行くか。最前列の特等席で見せてやるから。な? だから元気出せよ、ミドリーノ」
「僕ミドリーノちゃう。テイマや」
ミドリーノは否定した
IMATE世界あれそれこれ
◆フェルゴ
サラマンダー。炎のジン・イフリートの力をとある組織により組み込まれ、改造実験された。スタメシア共和国を去った後は故郷を目指して火山巡りの旅をした。
大陸に渡り、とりあえず近場の火山に行き、マグマの中を通って火山巡りをして二日で故郷の火山を探し終えた。とても早く終わってしまったので、この後どうしよう、と世界の火山巡りをしていた。たまたまウラグ帝国の国境の高い火山であるバリックガル山から景色をぼんやりと眺めていたら、遭難者に間違われ保護された。麓まで連れていかれた時にウラグフェスタのことを聞き、行かねば、と馳せ参じた。今までスタメシアでショーをしていたので、それをいかしパフォーマンスを行っていた。観客からはとても人気があり、ウラグフェスタ・パフォーマー賞の最有力候補と言われている。
テイマには何かを感じているが、自分も訳ありだったため何も言わないでいる。だからなのか仲良くしている。
変化の仕方をうまく調節できるようになったので、サラマンダーやイフリートの精霊の姿から人間よりの姿で留めることができるようになった。
カイのことは“兄ちゃん”、テイマのことは“緑の”又は“ミドリーノ”と呼ぶ。
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お祭りはいくつになっても楽しいです。屋台の食べ歩きとか、毎年目をつけているお店とか、定番のお店ってきっと皆ありますよね。私のオススメはちょっと怖そうなオヤジがやってる食べ物屋の屋台です。なんか職人って感じがするんですよね。
次回、『炎の躍りは人を集める』
今回も読んでいただき、ありがとうございました。




