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IMATE  作者: 風雅雪夜
はじまり
4/88

 今回は魔法でどんなことができるか、の説明のような話です。

 それでは、はじまりはじまり。

_____________________

IMATE世界あれそれこれ

◆魔法属性について(今回は無属性、風属性、闇属性、光属性について)


〇無属性……時間と空間を扱う。使い方によっては便利だが、使い方を間違えれば、己に直ぐにその罰が返ってくる。邪な心を持つ無属性魔導士は早々に死ぬと言われている。正しくその力を使うことで、国王から認められる無属性国家魔導士となる。使える者は世界の人口から見てもごく僅か。忌み嫌われることもあるが希少性が高いため国としては保護したい属性。使い方は移動する、物の時間を巻き戻した修理、防御の結界、未来予知、など。


〇風属性……風を扱う。使い方は飛ぶ、移動速度をあげる、風で切り裂く(鎌鼬みたいな)、風でクッションを作る、など使い方様々。


〇光属性……光を扱う。闇を払う。使い方は呪いの解除、闇を封じる、目眩まし、など。


〇闇属性……闇や呪いを扱う。光を飲み込む。使い方は呪いをかける、相手に幻覚を見せる、精神支配、記憶を読む、閉じ込める、隠れる、など。


◆魔物……いろんな地域に出没する。ゴブリンをはじめ、虫のようだったり、動物のようだったり姿色々。言葉を話すものもいて、それらは知能が高い。


◆イメート……詳しいことは Ⅱ を参照。今回のイメートは主人公カイのイメートのスノウ。


○スノウ

 幻獣型・ドラゴン。水属性と風属性の力によって、雪を生み出し、操る。体の色は雪のような純白で瞳は薄い透き通るような水色。

 人語を話す。思慮深い。雌竜。主人公の母親のような存在。クロの次に産み出された。

 瞳と同じ色で中心に白い雪の結晶の模様がある石の姿になる。体は鱗ではなく、毛で覆われている。暑さに弱い。

 今日は旅立ち。天気は快晴。気温は適温。風は心地よい微風。まさに絶好の日だ。



「カルラ、報告や連絡はこの魔道具でね。転送魔法や、光魔法と空間魔法で映像と声を伝えることができるから。使い方は昨日教えた通りよ」

「うん。わかってる」



 不思議な形をした魔道具を渡されるカルラ。空間魔法を使えるのは無属性の魔導士だけだ。カルラとキュリアは無属性魔導士だから使える。時間と空間を司る無属性魔導士は世界でも、1万人ほどしかいないらしい。それほど希少な存在のため、国では保護対象であったり、大臣として国に仕えたりする者もいる。大臣になる者は無属性の時間の魔法を使い予言をするので重宝される。キュリアは大臣ではないが、たまに予言をして国を助けている。そのため、なんとか国家魔導士の地位についている。



「僕らがいない間に何もなきゃいいけど」

「俺と王がなんとか守るさ」

「ラツィオさん……お願いします」

「おぅ。キュリアはこの国に必要な女だ。絶対に守る」



 ただでさえ希少な無属性魔導士。その力の強大さゆえ、監視、管理するべきという意見もある。特にキュリアはよく実験や魔法で必ず一回は失敗するから、国の大臣や他の国家魔導士達が顔をしかめてしまう。しかし、そういう人たちはキュリアの真の教えに気づいていない。失敗ばかりの魔導士は弟子のためにわざと失敗しているのだ。反面教師として。それは、ラツィオも王も分かっている。だからこそ、彼らは彼女を守るのだ。



「二人とも、頼んだよ」

「はい」

「王国のため、世界のために」



 二人は歩き出した。西国のリーゲルト公国へ。






「ところでカルラ姉、このペースだとリーゲルト公国にはいつぐらいにつくの?」

「半月後ね」

「長いね」

「空間魔法で短縮したいところだけど、私、自分の見たことのある土地にしか移動できないの」

「そっかぁ。じゃあ、スノウに乗らせてもらう?」

「そうね、そしたら、今日中に三日分くらいの距離は稼げる」

「そうと決まれば」



 カイは透き通る水色の石を出した。



「出でよ、スノウ」



 石から白い雪の結晶が渦巻き巨大な渦になると、その中から純白のドラゴンが現れた。



「カイ、話は聞いていました。さあ、私にお乗りなさい」

「ありがと、スノウ」

「久しぶり、スノウ。とても元気そう。そして、美しい。」

「ありがとう、カルラ。さ、貴女も」



 二人を背にのせて、スノウは羽を広げた。



「しっかり掴まっていなさい。飛びますよ」

「オッケー」



 羽を羽ばたかせ、スノウは飛んだ。



「西の方へ。そこに集落がある」

「わかりました」



 西へ西へと二人と竜は飛んだ。



「ねぇ、カルラ姉はリーゲルト公国に行ったことある?」

「ううん、ない。けど、キュリアとラツィオさんは行ったことあるって」

「どんなところなのかな」

「初めてですね、国を出るのは」

「うん。なんだか見るもの全てがとても新鮮だよ」

「それは良かった。カイが楽しそうで。私も楽しいです」



 水色の瞳が細くなる。



「町に行くとその地方の特産品とか見られて勉強になるから、よく見るといいわ」



 カルラが言う。





 都市を抜け、木々の生い茂る森に入っていたが一部分が禿げ上がったように濃い緑から若い草色の部分が眼下に見えた。



「カルラ姉、なんだか広いところに出たね」

「あぁ、薬草畑ね。ほら、こういう郊外じゃないと広い土地がないから」



 かなりの広さで眼下に広がる薬草畑。緑だけでなく赤や黄色、紫に青などの沢山の色がチラチラと夜空に浮かぶ星のように見える。



「それにしても結構な範囲ね。かなり大きな庭師(ガーデナー)の畑ね」



 庭師は薬草を育てる者。魔導士が多くこの仕事に就く。育てた薬草は薬師に売り、それで生計を立てている。医者から患者に薬を処方され、その処方せん通りに薬を作るのだ。かつては一人でその仕事をしているものが多かったが、今ではそれらの役目もほとんどが分業制となり、それらを兼ねていた者も少なくなった。

 この畑の大きさから恐らく庭師だけの仕事なのではないだろうか。



「医者や患者だけが薬草を欲しているわけじゃない。私達、魔導士もそう」



 沢山の薬草が風に揺れている。風を受けて光る。花が風と踊るようだ。

 そんな畑を見ていると緑の中に花の色とは違う赤が見えた。花にしては大きい赤は止まっては動き、止まっては動き、を繰り返していた。



「なんだろ。スノウ。下の赤いの見える? 花じゃなくて」

「あれは……赤ずきん、ですね」

「赤ずきん?」



 薬草畑に赤ずきんとは。お婆さんに薬を持っていくために取りに来たのだろうか。それにしては、ひょこひょこと、動くスピードが早すぎる。なんだか様子が変だ。



「カイ、魔物です。彼女はそれに追われています」

「助けないと!」



 スノウは方向を変え、少女を追った。

 近づくにつれて少女の顔が見えた。急に現れたドラゴンに驚いている。魔物は少女よりも少し大きいゴブリンだ。



「今助ける」



 カルラが魔物に向かって手を伸ばす。



「だめ! 薬草を傷つけないで!」



 逃げながら叫ぶ少女。この辺りの薬草は貴重でこの季節にしか育たないものだ。逃げながら彼女は決意したようで籠を差し出す。



「これを! ジギー師匠と! タリス先生に!」

「君はどうするの?」

「ここを……守らないと!」



 腰の鞄から薬草を刈り取るであろう草刈り鎌の柄を取り出そうとする少女。



「女の子が一人で戦うものじゃないわ」



 カルラが言った。



「風の檻」



 魔物の体が風に掬われるように地面から浮く。



「ギギャッ!」



 風に捕まった魔物は空中でもがく。カルラの魔法はとても強い。だから、その辺の人間の子供と同じような大きさのゴブリンなんかが逃れることはできない。



「無駄」



 魔物に短くそう言うと、スノウから飛び降りた。風がカルラを優しく大地に誘う。怪我もなく彼女は大地に降り立つ。



「大丈夫?」

「あ、ありがとうございます」

「うん」



 カイの方に顔を向ける。スノウから降り、石の姿に戻すとカイも二人の方へ向かった。



「怪我してないね」

「はい。あの、本当にありがとうございました」

「君に怪我がなくてよかったよ」



 今はおとなしくなっている魔物。自分の力とカルラの力の大きさの違いを判断できる知能はある。頭の悪いやつではない。なら、言葉が通じるかもしれない。



「さて、どうしてこの子を追っていたのかな?」



 それはやはり、言葉の意味を理解していた。



「……ゥグギギ……薬、必要」

「必要?」

「…エリカ……薬、作ル……必要」

「エリカ?」



 それ以上、魔物は何も言わずに目を閉じた。



「うーん……どうしよう」

「そうね。……強制的に情報を引き出すって方法もあるけど」

「あの」



 少女が声をかける。



「そのエリカ、という人の名前、師匠から聞いたことがあります。師匠なら、何か知ってると思います」



 少女の言葉に二人は頷く。その師匠の所へ案内してもらうことにした。その魔物も連れて。






 大きな木で作られた家だ。診療所と薬局が隣り合っているからだ。白衣の男性が子連れの母子を送り出していた。



「アザレア、その人達は?」



 少女はアザレアというらしい。アザレアはカイ達を見上げた。



「僕らは旅の者です。僕はカイ、魔剣士です」

「カルラ、魔導士。これはさっき薬草畑で捕まえた、この子を追っていた魔物」

「私、いつものように薬草を採取していたんです。でも、何かがいるのに気づいて、それで逃げてたんです! そしたら、ドラゴンに乗ったこの二人が助けてくれたんです! だから、怪しい人じゃないです!」



 必死に弁明してくれるアザレア。白衣の男性は少々懐疑的だったが、アザレアの言葉を信じたようで中へ通してくれた。



「あと、師匠に聞きたいことがあるんです」

「おう、何だー?」



 奥から出てきたのは白衣の優男とは違い、日に焼けた健康的な浅黒い肌、筋肉質ないかつい感じの男だった。



「師匠!」



 アザレアが師匠、浅黒い男性に駆け寄る。一通り説明をすると彼はカイ達の方へ向く。



「ありがとな、俺の弟子を助けてくれて。俺はこいつの師匠のジギー。あの薬草畑の主だ。ここで薬局をしてる薬師であり、庭師だ」

「私はタリス。ここで医者をやっています。ジギーの弟です」



 全員が自己紹介を終えた。そして、あの魔物の言っていたエリカという人物について心当たりがないか、と問う。



「エリカ……。そういえば、そんな名前だったか」

「知ってるんですか?」

「ああ、確かあの魔女の名前がエリカだった気がするんだよなぁー。そー言えば最近見てないな」



 魔物が目を開ける。



「……エリカ、待ッテル……早ク……」



 絞り出すように魔物が言う。



「兄さん、その人について何か知らないか? 家とか」

「いや。そこまでの間柄じゃないし。あくまで彼女は客だし」



 ジギーもこれ以上のことは知らないようだ。



「ねぇ、君。話してくれないかな。急がないといけないんだったら尚更さ」



 カイが魔物に言う。その目はカイを睨む。



「……出セ。オマエラ、俺ヲココカラ出セ!」



 魔物が暴れるが風の檻は壊せない。片言で言葉は足りない。しかし、この魔物はそのエリカ、という魔女のところへ行こうとしてる。



「カルラ姉、僕、なんだか嫌な予感がする。そのエリカって人、病気なんじゃないかな」



 魔物の焦り方、言葉の意味、エリカ、それらをただ繋ぎあわせて考えただけだが。



「でも、この魔物が本当のことを言ってる保証なんてあるの? お兄ちゃん」



 アザレアの言うことも確かにそうだ。



「エリカ! ……エリカ! ……薬、必要! ……俺、待ッテル! 薬草、採ル! コレ、薬デキル! エリカ治ル! 出セ! 出セ! 出セ!」



 激しく暴れる。



「カルラ姉、これを解放してあげて」

「……わかったわ」

「そのエリカって人のところ、案内してくれる? 僕らにもできることがあるかもしれない」



 カイが魔物の目をまっすぐに見て言う。少し悩んだ魔物は力強く頷いた。



「よし、行こう!」



 カルラの魔法が解かれ、魔物は自由になると、外へ飛び出した。



「スノウ! あれを追って!」



 カイも外へ飛び出すとスノウに乗って飛び立った。



「私達も」

「その必要はない。ここに連れてくる。すぐに治療できるように準備して待ってなさい」



 それだけ言い残し、カルラは遅れて飛び出す。



大気の翼(アーリス・ェアーリア)



 そう唱え、地面を強く蹴るとカルラの体は浮き上がった。そしてそのまま上空へと上がり、スノウに追い付くため飛んだ。


 魔物は森の中を駆ける。木々が時々魔物を遮るお陰でカイ自身もう目で追えなかった。スノウのドラゴンの動体視力と遠くまでよく見通せる目に頼らないと追えない状態だ。



「中々深い森にそのエリカという魔女は住んでいるのですね」

「そうらしいね」

「カイ!」



 カイが後ろを振り向くとカルラが飛んでいた。追い付いたカルラはスノウに飛び乗る。



「まだ見失っていない?」

「うん。大丈夫」



 スノウがまだ追ってくれている。そろそろそのエリカという魔女の家らしきものが見えてもいいはずだ。

 スノウが高度を下げ始めた。



「着きましたよ」



 薄暗い背の高い針葉樹の森を背負うようにその小屋は立っていた。魔物はその小屋の前で大人しくカイ達を待っていた。

 スノウから降り、小屋の扉から声をかける。



「ごめんください! ごめんください!」

「エリカ! エリカ!」



 中から応答はない。



「カイ!」



 小屋の小さな窓から中を覗くと、簡素なベッドの上には左腕と顔の左側が木のようになっている、淡い金髪の魔女が眠っていた。



「アァ、モウ、ココマデ……」



 カルラが中に急いで入り、エリカの症状を確認する。



「どう?」



 半分人の姿をしていないその人は生きているのか、或いは……。



「まだ生きてるから大丈夫。誰かに呪いをかけられたわね。左手の甲、この花の模様から花弁が消えると、この人は……」

「エリカ! エリカ!」



 大きな目から涙が溢れそうになる魔物。それほどまでにこのエリカという人を心配している。見ていると悲しくなってくる。



「なるほど、薬草はそのために」



 カルラがテーブルの上に目をやる。テーブルの上には数種類の薬草が調合されないまま置いてあった。カラカラに乾燥しきっている。その薬草で呪いの進行を止めようとしたらしいが、術者が強かったらしく呪いは止まらず進行した。



「……ヒペリカム」



 弱々しい女性の声。エリカだ。



「泣かないで……ヒペリカム」



 弱々しく言うエリカ。魔物は更に泣き出した。



「ここまで来ると、もう薬じゃ治せない。カイ、それ、抑えてて。解呪する」

「わかった。さ、離れて。大丈夫だから」



 カイが優しく魔物とエリカを離し、カルラがエリカの左手を持つ。

 呪いのタイムリミットを示す左手の甲のバラ模様。花弁は残り五枚。まだ大丈夫。



「闇魔法の封印系魔法・樹縛なんて……。かけたやつは一体どういう魔導士よ」



 悪態を突きながらもカルラは花弁の上に手をかざし、何かを引く動作をした。



「分離せよ、剥離せよ、反発し、引き合い、呪いを浮き出せ。光魔法・呪引き」



 バラ模様から紫色の線が伸び、空中に漂う。それは一塊に集まっていく。球状で大きくなる呪いに対し、エリカの体が元の人間の体に戻っていく。

 完全に呪いが全て取り除かれるとバラの花模様は左手の甲から消えた。解呪は成功した。



「呪いは解けた。でも、しばらく安静と栄養が必要」



 魔物は静かにエリカの手を取る。



「エリカ」



 球状に漂う呪いの塊は、カルラの手によって別の入れ物へ入れられ、その後その入れ物もろとも燃やされた。すべては終わった。






「ヒペリカム、貴方頑張ったのね。偉いわ」



 しばらくはタリス先生の診療所で入院することになったエリカ。近くにはあの魔物、ヒペリカムがついている。

 エリカに呪いをかけた者は魔導士だったが体の線を隠すように深くゆったりした真っ黒な闇色のローブをまとっていた人物で顔も性別もわからず、逃げられたそうだ。

 真っ黒な闇色のローブ。襲撃したのは闇の道化師だろう。彼らの目的はよくわからないが、人を傷つけることをしているのだけはカイにもわかる。魔王を復活させるという目的も果たされれば多くの人が傷つく。それだけはなんとしても阻止しなければ。

 早く次の仲間、エルバの元へ行って多くの仲間を集めなくては。

職業あれそれ

◆医者……王都や首都等の都市部の学校で医術を学び、更に難解な試練と試験に合格することでなれる。医師免許が必要になる。(今回だとタリスが該当)


◆ガーデナー(庭師)……魔導士達や医者のために薬草を育てる者。薬草のスペシャリスト。魔導士でこの仕事をしている者が多い。大きく沢山の薬草畑を持つため、郊外で暮らす者がほとんど。自分で薬を作って販売しているものもいるが、それには薬師免許が必要になる。(今回だとジギーが該当。アザレアは見習い)


◆薬師……薬を作る者。ガーデナーから薬草を貰い、それを加工し薬として売る。薬を人に販売するには薬師免許を取得しなければならない。(今回だとジギーが該当)



_____________________


 読了ありがとうございました。次の章で仲間が増えます。

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