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IMATE  作者: 風雅雪夜
無属性魔導士編
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ⅩⅩⅩⅡ 無属性魔導士編_13

 遂に正体を現したカルラ。ウルミラとの戦いが始まった。テイマが土人形を駆動させた時、地下の部屋の人形師と衛兵、そして外の様子と人形には何があったのか。


『衛兵→家畜→騎士→?』

 テイマが土人形兵を駆動させたことにより地面が揺れ、隆起していた。その揺れは神殿の地下のあの牢屋のようで違うような白い部屋にまで届いていた。



「何だ!?」

「おい、何が起こっている? この音は?」



 地震とは違う揺れに捕らえられていたキルカも、番人をしていたリティカも驚く。



「緊急事態だ。キルカ、ここが崩れては危険だ。逃げるぞ」



 部屋の鍵を開け、キルカを部屋から出す。手枷を外し彼の手を取り、空間魔法で外へ飛ぶ。神殿の外に出てすぐに飛行魔法で上空から状況を確認する。



「何だ、これは……」



 巨大な土の人形がいくつか暴れている。ジャーディアン達がそれらを倒そうと魔法を繰り出す。神殿の土地の中はあちこちで戦闘が行われている。町はどうなっているのだろう。町の様子を確かめるため、また飛んだ。神殿の上空を一回りすると町の方にはそのような土人形が暴れている姿は見えない。



「どうやら、神殿の中だけのようだな」

「ああ。しかし、どういうことだ? あれはお前達のものじゃないのか?」

「あんなものの存在聞いてない!」



 リティカは叫ぶ。自分だって半年と少し前にここに来たばかりなのだ、と彼女は付け加える。数は10体。ジャーディアン達がそれぞれに散って応戦しているが規模が違う。家一件より少し大きい。それらは腕や体を壊されてもすぐに土を吸収して攻撃を受ける前の姿に戻ってしまう。いくらやっても再生してしまうので終わりの見えないその戦いに絶望の表情を浮かべている者もいる。

 自分も加勢しに行かねばならない。しかし、彼女の無属性以外の力は弱く、その辺の魔導学生ぐらいのちんけな力しか振るうことができない。



「キルカ、お前、どれだけ魔法を使える?」



 隣のキルカに問う。



「この前が初めてだ。俺も戦力にならないだろうな」

「私も無属性以外はほとんど力はない。私が行っても足手まといか」



 しかし、この異常事態に黙っていられる二人ではない。二人は考える。なんとかしてこの異常事態を食い止めたい。



「キルカ」



 少女の声。キルカにとって、その声は聞き覚えのあるあの声。

 その声に二人は振り返る。



「シュラ!」

「遅くなったわ。ごめんなさい」



 穏やかに優しくキルカに言うと、彼の手を取って飛行魔法で浮いているリティカを睨んで鋭い声で言う。



「キルカを放しなさい。でないと、ただでは済まさない」



 手にした魔水晶の付いた杖がリティカに向けられた。



「待て、シュラ! この人は悪いやつじゃない。今ここで戦うよりも、あの土人形を何とかする方が先だろ!?」



 焦るキルカにシュラは下に見える土人形をちらりと見て言う。



「あれは人に危害を加えることも建物を壊すこともない。よく見なさい。ああやって、足踏みをして、腕を振って無駄に大きく動いているだけよ」



 土人形達は攻撃を受けてよろけてはいるが、最初に見た時と同じ場所にいて動いていなかった。建物も壊れていない。動きも緩慢で、すぐに避けられる程だ。というより、よくよく見れば殺意や破壊する意思を全く感じない。



「あれは私の協力者の土人形。彼があれを制御しているの。私が貴方を助け出すまでの時間稼ぎの間」

「俺を助け出すためだけに、こんなことを?」

「私の目的は貴方を助けることもそうだけど、ようやく時が来たの。ようやくウルミラを倒せる時が」



 ウルミラ。初代シャーサーカでモクシュカ・ジャドゥの建国者。それを倒すと言ったシュラに何のことだ思ったリティカはキルカに問う。



「ウルミラって……、初代シャーサーカのことだろう? 彼女なら500年前の人間だ。今も生きているはずがないだろう。おい、キルカ。お前の知り合いは何を言っているんだ?」



 リティカの困惑の声に初めてその話を聞いた時のことを思い出す。彼女なら自分達に協力してくれる。彼女は多くの人を救った。なら、今回もきっと。そう考えたキルカは修羅に言う。



「シュラ、リティカにも、見せてやってくれ。お前の記憶を。500年前のことを。この人は味方になってくれるはずだ」



 頼むその目は真剣で、信じてくれと言っている。シュラはリティカに目を移す。彼女の顔は困惑の色を浮かべている。着こなした鎧や、雰囲気から元は騎士であったのだろうということが感じられる。キルカにも信頼されているし、彼が操られている様子はない。



「わかったわ。これが500年前の記憶よ」



 シュラの体から紫の光が、太陽のように輝いた。






「……っ、こんな、ことが……」



 500年前に奪われた目の前のシュラの体、成り代わり生き続けたウルミラ。戦い、決着がつかず、今に至り、人を食らうそんな行為が許されるわけはない。立派な罪だ。



「これが、このジャーディアンの、本当の姿だったのか……こんな、……こんな」

「だからこそ、私は戦ってきた。そして、今日、協力してくれる仲間達と共に、ウルミラを倒す」



 シュラの声は強い。


「シュラ、俺にもできることはあるか?」

「早くカマラに会うこと。でも、ウルミラを倒さない限り、貴方はまたここに連れ戻される。キルカ、手伝ってくれる? そこの貴女も。できれば」



 シュラの言葉に俯いていた顔が上を向く。



「私のような、魔導士でも騎士でもない、この私に……家畜でしかない私に、何が……」

「貴女は、誉れ高い魔剣士よ! 無属性は、全ての属性が使える。貴女の力が加わるだけでも大きなことなの。貴女は家畜でもない。力のない者でもない。その剣は、飾りなんかじゃないでしょう?」



 シュラが叱咤する。



「リティカ、お前は多くの仲間を瀕死の危機から救った英雄だ。誰かのためにその力を使うのって、それこそお前がなりたかった英雄じゃないのか? 未来の誰かが助けられるなら、協力しないか?」



 キルカの言葉に彼女は目を閉じる。心から何かか溢れてくる。温かい。それは昔、皇女であることを捨てる時に決意したあの感じに似ている。誰かを助けられるという希望。それだ。あの時、胸に抱いた希望の炎は再び、勢いよく燃え出したのだ。

 目を開いて彼女は言う。



「行こう。私は、騎士だ」



 その瞳の奥には希望の炎が輝いていた。



「時間がないわ。簡単に素早く魔法の使い方を習得してから行きましょう。まずは、……そうね、あれを倒しながら覚えましょう」



 暴れている土人形を指してシュラは言った。

 個人的に「その剣は飾りなんかじゃないでしょう」と「行こう。私は、騎士だ」が好きです。というよりもリティカさんが好きです。私がなりたかった理想の強さと優しさ持つ人の姿が彼女に反映されているのだと思います。カイ君も優しいっちゃそうだけど、あの子は何か違うんですよね。優しさの方向が。


 希望と救いの炎を抱いて騎士は立ち上がった。もう一度、あの日の自分が、英雄の自分が帰って来た。

 少年達の前に現れた狂信者。彼女も参戦し、戦いの炎は更に燃える。


次回、『新たな力』

 それは、想像できないほど強い力。

 今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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