ⅩⅩⅢ 無属性魔導士編_4
カイ達を残してカルラは一人でどこかへ行ってしまった。姉同然のカルラがわけも言わず自分からどこかへ行ってしまったことにショックを受けるカイ。そんなカイをすぐに励まし、探しに行かせることで元気を取り戻させたテイマ。
さて、そのカルラは何処へ行ったのか?
『アルナと捜索』
カイ達と一方的に別れたカルラが向かったのは首都と国境の間の方、どちらかと言えば国境よりの小さな村だった。非魔導士の方が割合としては多いが、魔導士もちらほらと見かける。さっきのスラム街のような危険な村ではない。
村中を歩き回る魔導士がいるということは、ここはさっきの場所よりもずっと安全である、ということだ。なによりこの村は活気があるし明るい。
人目につかない森の中に転移してから、目的の場所を目指す。
「変わらないわね」
メインストリートには村と言えども様々な店が出ている。農具屋、仕立屋、八百屋、酒場、宿屋。自分の目指す物はこの先だ。
少しだけ住宅街から離れた一件の家。『doll house-Avatara』。人形専門店だ。
近づくとcloseのプレートがドアのガラス窓の内側にかかっている。昼間なのにお店がやっていないとは、定休日だろうか。
戸を叩き、人を呼ぶ。
「ごめんください。どなたかいませんか?ごめんください」
奥から眼帯とエプロンをつけた少女がやって来た。扉を開けて少女は言う。
「申し訳ありません。しばらくこの店は閉店なんです。ご注文は再開してからでお願いします」
頭を下げる少女。
「修羅の道より、夜明けは来たり」
カルラの言葉に目を丸くする少女。そして、優しい目をして、カルラに手を伸ばす。冷たい小さな硬い体を目一杯伸ばして、少女はカルラの頭を撫でる。
「久しぶり、アルナ。お帰り。よく戻ってきたね」
「はい、シュラさん」
カルラの目的の物は、目の前の生きた人形のシュラだった。
なんとか住人達から逃げたカイ達は首都のすぐ外に穴の出口を繋げ、脱出した。人家は周りにない平原。人も魔物の気配もしない。自分達の安全を確かめた上で穴から出た。
「みんな無事? 怪我してない?」
「僕は大丈夫」
「同じく」
あちこちに土汚れが着いた。それを払い落とし、三人は作戦を練る。
「さて、どうやって探そう?」
カイの使える探査魔法は狭い地域ならすぐにわかるが、カルラがこの国のどのあたりにいるのかわからない状態で使えば探索に時間がかかるし、魔力も大きく消耗する。この国はウルガルド王国よりも広い。さて、どうしたものか。
「ここはさ、イメートを総動員してみるのはどうかな? 確か、ドラゴンって目がいいし、速いから、この国の3分の1は一日でできるんじゃないかな?」
確かにスノウならできそうだ。イメートを使うのはいい方法かもしれない。
「でも、テイマは魔法が使えないなら、イメートは……」
「うん。持ってないよ。でも、僕にだって探す方法はある」
足元の土をとんとんと蹴るテイマ。足で探す、ということだろうか。それとも、あの錬金術、という力でも探せるのか。自信ありげに言う。
「確かに。イメートにも手伝ってもらえればすぐにわかるでしょう。出でよ、フウ」
エルバも賛成し、イメートを召喚した。
カイも続けてイメートを召喚する。
「カイ、皆、わかってる」
クロの言葉にカイのイメート達は頷く。魔物型・クロ。幻獣型・ドラゴン系・スノウ。妖精型・精霊種、ウンディーネ・ルリ。幻獣型・妖狐・野干・コハク。
「お前達、頼んだ」
「このフウ、心得ました」
「エルバのイメート、初めて見た」
鷲のような鳥のイメートと、妖精型・精霊種・シルフのイメート。風を操るということはつまり。
「え、神速のエルバの秘密って、もしかしてそのイメート?」
テイマががっかりした声を出す。
「主は魔法を使わずとも速い。私や魔法など、ほんの手助けに過ぎない。主を愚弄するな、新参者が」
「うぉぅ」
もう一人、尖ってた頃のエルバがいるみたいだ。イメートは主に似る、という諺もあるから、仕方のないことだが。再現度が高すぎる。姿形は違うのに。
「じゃあ、捜索場所を決めていこうよ」
テイマが地図を取り出した。
「国境側は遠いから機動力が欲しいね。それでいて探査能力が高いのが。で、中間層の探索班もそれなりに高いのがほしいね。この国意外と大きいから。僕ら人間組は内側から外に向かって進めばいいかな」
「うん。いいと思う」
国境付近はスノウ、フウ、コハクが担当。中間層をルリ、エルバの鷲のイメートが。首都からカイとエルバのコンビ、テイマとクロが担当する。クロはテイマの護衛だ。
「コハク、大丈夫? 体力もつ?」
「あっしは、化けられますからなんとかなりますよう。スノウさんみたくドラゴンに化ければ、スノウさん達純正ドラゴンほどではありやせんが、身体能力もそれなりに上がるんで。心配しないでくだせいな、カイさん」
化け狐と呼ばれる伝説の生き物がモデルだと、その力も使うことができるようだ。特性も引き継ぐ。
「カイ、俺、役、立たない。ごめん」
しゅんとした声でクロが言う。
「大丈夫だよ。クロは元々僕を守るためのイメートだから。人間にも向き不向きがあるようにイメートにもそういうのあるよ。だから、一緒に探そう」
「そうだよ。護衛、頼りにしてるからねクロ君」
クロを励まして、それぞれは捜索に散っていった。
IMATE世界あれそれこれ
◆イメート
テーマとなった生物の力を持った魔法生物。カイのコハクのように変化する妖怪をテーマとしたイメートなら、別の生物に変化してその生物の力を使うことができるものもいる。
◆フウ
エルバのイメート。妖精型・精霊種・シルフのイメート。性格はツンツンとしていて、まるでカイ達と出会う前の尖ってた頃のエルバのよう。エルバの加速装置。
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カルラ姉さんが訪ねたのは生きた人形のシュラ。しかし、彼女からはアルナと呼ばれていました。まだまだカルラ姉さんには謎が多いです。
さて、カイ君達はカルラ姉さんを探し出すことができるのでしょうか。そして、ひっぱたいて、ビシッとバシッともの申せるのでしょうか。ちなみに、テイマ君とクロが一緒に行動することになったのは見た目のバランスと、テイマ君のご指名です。
次回、『アルナと捜索、その二』
探せ捜せ。たがために誰を探すのか。そこにいるのは本当にあなたが探していたモノなのか。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。




