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IMATE  作者: 風雅雪夜
無属性魔導士編
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ⅩⅩⅡ 無属性魔導士編_3

 モクシュカ・ジャドゥ手前でテイマと出会い、なんやかんやで一緒に入国したカイ達。相手を挑発したり、物騒なことを言い出すカルラの様子をおかしいと思いながらカイ達は町へ繰り出す。


『決裂』

 首都の活気溢れる街と様々な見たこともない魔導具が売られた市場にも目もくれず、どんどん人通りの少ない路地裏の暗く細い場所に入っていく。



「ちょっと、カルラ姉。どこ行くの? それ以上行ったら何があるかわからないよ」

「私は大丈夫」



 カイの言葉にも短く返すだけで歩みを止めようとはしない。そうこうしているうちに、ここがどこなのかわからないほど奥まで来てしまったようだ。

 空を覆い隠すように建てられた住宅街はひっそりと静まり返り、人の気配がない。高い建物のお陰で少し暑い日差しが遮られて涼しいが、薄暗い。不気味だ。空気もおかしい。

 このおかしさがわからないカルラではない。カイやエルバもこの空気の異様さにとっくに気づいている。だからこそ、彼女を止めているのだが、止まってくれない。



「いやー。……本気でヤバイと思うな、この状況」



 テイマの顔がひきつっている。



「僕さ、一人で旅してるからこういう危ない空気は敏感なんだよね。だから言うけど、もう、逃げられないよ」



 そう言い終わると同時に隠れていた住人達がゆっくりと姿を現しだした。ゆらり、ゆらり、と不気味な動きで。



「どうしよう」

「戦うしかないのでは」

「いやダメでしょ! さっきの人に言われたの忘れたの!? カルラ姉さん、安全地帯に避難を希望します!」



 さっきの衛兵の言葉を守ろうとするテイマ。面倒ごとにはあまり関わりたくない。ここで面倒事を起こし、それが原因で捕まっては旅が終わってしまう。それは旅を愛する彼にとっては死と同義だ。だからこの場からの即時離脱を彼は希望したのだが……。

 カルラは何も言わないし、カイ達の少し前に立ち止まっているだけだ。



「魔導士め……」

「……魔導士」

「魔導士」

「魔導士……」



 さっきの女衛兵が言った“魔導士をよく思わないやつもいる”というあの言葉は本当で、こういうことだった。この状況にカイ自身、どうしていいかわからない。虚ろでゆらゆらとしていて……。戦いたくない。……人が、怖い。



「か、カルラ姉!」

「うをををー!!」



 住人に取り囲まれた彼らに逃げ場はない。そこに住人が襲いかかってきた。



「ああ、もう!」



 テイマが叫ぶ。一瞬でカルラの腕を引き、自分達の方へ移動させると、地面を蹴るように踏んだ。




 ドゴォッッ!!




 橙色の光がテイマの足から円形に素早く波紋のように広がる。そして瞬時に、カイ達の周りの地面が盛り上がり壁ができた。その壁に阻まれたせいで、向かってきた住人達のぶつかる音が絶えない。痛そうだ。



「テイマ、これは……」

「あー、もう! 僕は使いたくなかったのにー!」



 ふくれ面のテイマ。これは魔法なのか? しかし、魔方陣の出ない魔法があるのだろうか。算術には公式があって解を得られるのと同じように、魔法の発動にはその公式である魔方陣が必要なのに、それがないなんて……。



「魔法は使えないけど、それに近いことなら僕だってできるんだよ。……簡単に言うと、大地のエネルギーと自分の魔力を練り合わせて、物質を再構築したの。なんかこういうエネルギーを循環させて、分解して再構築する技を錬金術っていうらしいんだけど、詳しいことは良くわかんない! それにこっちの方だと皆使うの魔法でしょ? 僕みたいな力を使ってる人なんていなかったから隠すしかなかったんだよね!」



 嫌々だったが、それでも説明してくれた。ほとんどヤケクソで叫ぶように。



「それで、だ。……何で逃げようとしなかったの?」



 急に落ち着いて鋭い言葉でテイマはカルラに問う。カルラはずっとそっぽを向いたきりだ。



「……あのさ、人が話しかけてきたときは顔を向けるって教わらなかった? あと、聞いてる? 聞こえてるなら返事して」



 テイマの声に少し苛立ちが滲み出ている。それでもカルラは何も言わない。



「カルラ姉さんさ、僕は怒りたいんじゃないんだ。確かに姉さん一人だったらすぐに逃げられただろうけど、今はさ、仲間がいるんだよ。仲間を自分の都合で危険に巻き込んだらいけないだろ」



 諭すテイマにカルラの目がようやく向けられた。



「……わかった」



 気持ちを改めてくれたようだ。体を三人に向ける。



「なら、巻き込まないように私は動く」

「え」



 カルラの足元に白い光が走る。無属性の魔方陣。



「ちょっ、カルラ姉っ!」



 カッ、と狭い空間がまばゆい光に包まれた。目が眩んだその瞬間、カルラはどこかへ飛んでいた。そこにカルラの姿はない。ぽっかりと穴が開いてしまったようだ。



「……カルラ、姉……」



 カイの弱々しい声が狭い空間に響いた。



「……カイ殿……」



 パラパラと小さな砂粒が落ちてくる。土の覆いが崩れて来た。再び住人達が攻撃してくる。



「今はさ、それどころじゃないよ。まずはここから逃げないとね。カイ、まずはここから逃げることを考えるんだ。……探しに行くんだろ?」



 テイマの声はまっすぐカイの心に走る。



「女の子だけどさ、カイ君は彼女をひっぱたいていい。絶対に。目を覚まさせてやるんだ。仲間を大事にしない奴にはわからせるしかないよ! 例えそれが家族でも!!」



 少年達に衝撃が走る。カイだけでなくエルバにも。家族という形は違えど、思うところがある。



「そうですよカイ殿! 一回言ってやりましょう! カイ殿は優しすぎるんですよ! バシッと、ビシッと、言ってやりましょうよ! 私はカイ殿の味方ですから、どこまでもお供しますよ!」



 励ますエルバを見てテイマは彼を見直した。



「へぇ、君って見かけによらず、情に厚いんだね。冷徹人間じゃなくて安心したよ、王子」

「なんだ、貴様! その言い方は!?」



 二人が喧嘩をしだした。その様子を見て少し元気が出てきた。



「ホール・ホール!」



 言い合う二人の足元に穴が開く。



「え」

「なっ!?」



 これは喧嘩どころではない。そして、これができるのは今、一人しかいない。



「喧嘩はその辺にして、行くよ! 二人とも!」



 大声で叫ぶ。



「カルラ姉を、意地でも捜しだす!」

IMATE世界あれそれこれ


◆テイマの技

 本人曰く錬金術らしいもの。詳しいことは本人にもわからないらしい。ざっくりいうと、大地のエネルギーと自分の魔力を練り合わせて、物質を再構築したもの。エネルギーを循環させて、分解して再構築する技だという。土であれば自在に使えるらしい。魔方陣のない魔法のようなもの。


◆ホール・ホール

 土属性の魔法。呪文の通り、穴を掘る魔法。落とし穴、抜け穴など、幅広く使える。攻撃、防御、逃走用など、用途は幅広い。単純だが術者のセンスが問われる魔法。

_______________


 カルラ姉さんがどこかへ行ってしまいました。いつも一緒にいたカイ君にとってはショックでした。冷静に周りを見てカイ君を励ますテイマ君は大人だと思います。流石あざといしっかり担当。

 ところで、カルラ姉さんはどこへ?次回はカルラ姉さんの視点から入りましょう。


次回、『アルナと捜索』

 カルラ姉さん、一体何処へ?

 今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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