ⅩⅣ
フェルゴのスカウトを諦め、今後のことを相談するためウルガルド王国に一時立ち寄ることになったカイ達。やっぱり我が家は落ち着くねぇ~。
平和的でほのぼのとした14話です。
「お帰りなさいませ。国家魔導士様」
「ただいま」
門番と少し話をするカルラ。ここはウルガルド王国の首都の門。これから首都に入り、カイとカルラの育った街に寄るのだ。
「国家魔導士だったのか!?」
「うん。あれ? 知らなかったっけ?」
「初耳です、カイ殿」
考えてみればおかしなパーティーだ。最年少の無属性国家魔導士に魔剣士、最年少将校の軍人であり王子。メンバーがおかしい。これからどんなパーティーになるのだろう。
「行くよ、カイ。それは、どうしたの?」
「んー、ちょっと驚いてショック受けてる」
「そう。とにかくウルガルド王に謁見して、キュリアとラツィオさんに会おう。キュリアがまた何かしでかしてないか心配」
確かに心配だ。早く戻らなくては。
「早く行こう!」
カルラとエルバの手を引き、カイは走り出した。
「いや、大変なことにはなってないはず。昨日魔道具で話したし……まぁ、いいわ」
とても小さな独り言はカイには聞こえていなかった。
「キュリアさん!」
「あら、カイ。お帰り。どうしたの? そんなに急いで」
鍋を煮込んでいたキュリアが軽く答える。
久しぶりに会ったが、つい昨日話したばかりなので彼の近況などは知っている。だから、驚くこともない。母親のように温かく普段通りに迎えてやるだけだ。
「あ、貴方がエルバね。初めまして。この子達の師匠のキュリアよ。ごめんね。今、魔法薬作ってて手が離せないの」
一気に言うキュリアにエルバもああ、はい、としか答えることができなかった。
「お、お構い無く」
「カルラ、お茶だして。カイはテーブル拭いて」
テキパキと弟子に指示を飛ばすキュリアは本当に師匠である。カルラは渋々エルバにお茶を淹れてやる。
「さ、エルバは座ってて」
カイに座らされ、拭かれたテーブルの上に紅茶が出される。
「エルバ君の口に合わないかもしれないけれど、危ないものじゃないわ。うちでとれたハーブティーよ」
「キュリアさんの作る飲食物は美味しいですよ。魔法薬を除いて」
「ありがと、カイ」
親子を見てるようだ。自分もこのような一場面があっただろうか。
「はい。残さず食え」
カルラがエルバの目の前に果物のタルトが置かれる。それもキュリアの作ったものだ。
「こら、そんな乱暴なこと言わないの。……ごめんなさい。この子は認めないとこういう態度なのよ。でも、悪い子じゃないの。本当は優しくていい子なのよ。この子も色々あって……」
「キュリア!」
キュリアの言葉を遮るカルラ。何かを言うな、と釘を刺したように思えた。
「それ食べたらウルガルド王のところへ行く」
それだけ言うと急いで食べ出した。さ、食べて、とキュリアが苦笑しながら促した。カイとエルバも食べ始める。
ティータイムが終わり、ウルガルド王のところへ謁見しに行った。
王は少し痩せたように思える。魔王のことで心を痛めているのだろう、とカイは思った。きっと、各国が腕利きの戦士や魔導士をもっと派遣してくれれば優しい王がやつれることもないのだろう。皆、渋ってるのか、魔王の復活など起こり得ないと思っているのか。カイには、そんな各国のことはわからないが、目の前の優しい知人が弱る姿は見ていて心が痛む。
「カイ、旅はどうじゃ?」
優しい声が訊ねた。
「はい。この世界のことをもっと知りたくなりました。世界はとても広いです。とても勉強になります」
「ふむ。それはよいよい」
王は笑顔で大きくゆっくり頷く。そして、エルバの方を見る。
「エルバ、二人とぶつかることがあるやもしれん。同じ目的を持つ者、どうか怒らず、二人を支えてやってほしい」
「御意」
軍人として兵として、任務を遂行するのは当然だ。しかし、仲間がいなければ成し遂げられない。仲間のことも考えること、認めることが大事だと気づかされた。このような形で入軍したときのことを思い出すとは、とエルバは胸の内で思った。
王との謁見の後、城内を歩いているとラツィオが向かい側からやって来た。
「カイ、帰ったのか! 何故俺のところに来んのだ! 先にキュリアの所に」
「あはは……ごめんなさい」
どうどうとなだめるとエルバの方へ改めて向き直る。
「貴殿がリーゲルトの神速のエルバ殿であるな。カイの師のラツィオだ」
「リーゲルトのエルバです。ラツィオ殿、お会いできて光栄です」
ウルガルド王国の王族親衛隊騎士軍軍隊長。そして、聖騎士の二つ名を持つラツィオ。近隣の王国だけでなく、剣士を目指す者でラツィオの名を知らないものはいないだろう。剣士を目指す少年少女の多くはラツィオを目標にすると言われているほど有名な実力者だ。
カイがこのことを知ったのはラツィオと生活しはじめてからだった。剣士見習い達が歯軋りをしたり、羨望のオーラを放ってきたりと、すごく気になった。それらを感じてキュリアに聞くと、どうやらそういうことだったらしい。エルバに自分はラツィオの元で生活している、と言ったら、周りと同じように羨ましく思うのだろうか。歯軋りされるのだろうか。あまりこの事は言わない方がいいだろう。
「それで、今日はどうするのだカイ? 帰ってくるんだろ?」
想定外の出来事が起きた。
「部屋と寝床なら心配要らないぞ。後でキュリアかカルラに騎士軍宿舎の私の部屋から寝台を運んでもらうつもりだ」
「ラツィオさん、入る場所あるの?」
心配してるのはそこじゃない。そして、乗り気にならないでカルラ姉。エルバに周りと同じ反応をされたらエルバから嫌われてしまうのでは……と、ここまで思ってからカイは気付いた。エルバが自分のことを知らないように、自分もエルバのことをよく知らない。共に旅をしたけれど、それでも、自分の知らないエルバがいて、エルバの知らない自分がいる。あのカルラとエルバの決闘のとき、自分は彼のことをどの程度理解してあげられていたのだろうか。
「ラツィオ殿がカイ殿を指導したのですか?」
「ああ。カイがとても小さいときからな。あの小さな子供がこんなに立派になって、そのうち私なんてすぐに追い越してしまうだろう。流石自慢の弟子だ」
ラツィオの言葉はとても嬉しいものだった。
「ラツィオ殿! カイ殿の幼い頃のお話を聞かせていただけませんか? カイ殿は私の初めて出会ったとてもよき理解者なのです!」
エルバの言葉に更に嬉しくなる。エルバは自分がラツィオの弟子と知っても彼は今まで通りの彼でいてくれるみたいだ。なんだか心配していた自分がバカみたいに思える。だって、エルバは仲間で、そんなこと思わない。今日はたくさん話そう。それも朝までずっと。
今、すごく嬉しいから。
次回のIMATE ⅩⅤ(15)は?
それぞれゆっくりしているかと思いきや、どうやらそうもいかない人達がいるようです。
・意外な過去
・北へ行こう
の、二つでお送り致します。
今回も閲覧していただき、ありがとうございました。




