4.外の世界に飛び出します
遅くなってすみません。
1話冒頭の続きで、序章のエピローグになります。
一度データが消えてしまったので、大幅に削ってしまいました。
かなり短いです。
『始まりの石室』を出て半日ほど(敬鬼の時間感覚は既にマヒしていたが)、洞窟は一本道でそこら中に光るキノコやコケが生えており、薄暗いながらも歩くのに支障は無かった。
生えているそれらのキノコやコケ、『石室』を出て直ぐのところに生えていた結晶(手で折った)や洞窟の岩壁(ハンマーで砕いた)、それにここまでの道中で襲ってきた魔物などを回収しながら歩いてきた。
『蒐集家』の職業に変えたときに一緒に得た「鑑定Lv,1」を使って魔物や回収した物を見てみても、名前と分類のようなものしか見えなかったが、一度(トイレのために)『石室』に戻ったときに、装置のデータベースやミッション設備のデータ化生体保管庫を見てみると、回収した物の詳しいデータが追加されていた。
コウゲンタケ(菌類)……マナ濃度の高い洞窟や森などに自生するキノコ。マナを養分とするため、栽培は難しい。採取してもマナを補充することが出来れば光り続ける。無毒だが食用にはならない。〈エッセンス「菌類」「属性:光」「マナ」〉
コウゲンゴケ(植物)……マナ濃度の高い洞窟や森、湿地などに自生する苔。マナを養分としており、意図して増やせたという報告は無い。採取してもマナを補充することが出来れば光り続ける。〈エッセンス「植物」「属性:光」「属性:木」「マナ」〉
マナ結晶(マナ結晶)……鉱物のように見えるがそうではなく、マナが結晶化したもので非常に貴重。通称「魔石」といい、魔力をマナとして貯めておくことができる。魔物の魔核を加工した「蓄魔石」と違い、使用による容量の減少がない。〈エッセンス「マナ」〉
黒灰岩(岩石)……黒っぽく硬い岩。表面はザラザラしており、砕くことは容易いが割ることは難しい。〈エッセンス「岩石」「属性:地」〉
転がる岩(魔物)……一見するとただの丸い岩だが、勝手に転がって体当たりで攻撃してくる。動植物を自分の身体と地面ですり潰して体液を吸収する。〈エッセンス「魔物」「岩石」「属性:地」〉
生きた骨格鼠(魔物)……ネズミの死骸が瘴気によって動き出したモノ。生きた死体と違い骨格だけしか残っておらず、毒や病原菌などは無いが素早い。〈エッセンス「魔物」「不死者」「獣」「属性:冥」〉
鉱殻甲虫(魔物)……岩石や鉱石、宝石などを食べる虫。非常に硬い甲殻を持ち、攻撃されると自重を増加させる能力がある。鉱山でこの魔物が出て、いつの間にかかなりの被害が出ていることがある。甲殻は防具の素材になり、体内に宝石などが結晶化していることがある。〈エッセンス「魔物」「虫」「属性:地」〉
魔核(マナ結晶)……魔物の体内にある瘴気の結晶。マナを瘴気に変え、瘴気を貯めておくことができる。魔力を補充しながら瘴気を抜くことで「蓄魔石」にできる。〈エッセンス「瘴気」〉
転がる岩はボーリングの玉くらいの大きさの岩で、ハンマーで簡単に砕けた。一度、転がる岩が鉱殻甲虫に集られて食われていたのを見たので、そういう食物連鎖になっているようだ。
生きた骨格鼠は素早く、武器(代わりのハンマーなど)を当てることが出来なかったので、噛みつかせたところを捕まえて踏み潰した。
魔核はそれだけを採ったわけではなかったが、魔物の体内にあったものが別で記載されているらしかった。
石室から戻った後、蜂面蝙蝠という中型犬くらいの大きさの蝙蝠の魔物に襲われたが、敬鬼は生きた骨格鼠のときと同じ様に、自分の腕などに噛みつかせて首を折って仕留めた。
半日歩いてきたが、洞窟内で採取できたものはこれくらいしかなく、食用になりそうな物は無かった。
コウゲンダケは「食用にならない」と説明されているし、コウゲンゴケは「食用にならない」とは説明に無かったが、味も食いでもなさそうだ。
転がる岩や生きた骨格鼠に可食部は無さそうだし、鉱殻甲虫も、鉱物が食料なだけに人間が食べられるとは思えなかった。
強いて言えば蜂面蝙蝠はそこそこ食べられそうな肉もあったので、どうしようもなければ、今度『石室』に戻ったときにでもデータベースで見てみて、食べられそうなら食べてみようと、敬鬼は考えていた。
食糧確保のことを考えたり、どのくらいの時間歩いたのかを考えたりしながら、分かれ道は無いが曲がりくねった洞窟を歩いていると、なんとなく空気が変わったような気がした。
そして、敬鬼が次の角を曲がると、少し先から光が差し込んでいた。
「おおっ!もしかして外なのかっ!?」
キノコやコケが発する薄明かりと違う強い明かりに、敬鬼は急にテンションが上がった。流石に半日も薄明かりの中を歩いていると、肉体的には疲れていないように見える敬鬼でも、精神的に疲れていた様だ。
テンションの上がった敬鬼は、洞窟の出口であろう光に向かって、猛然と駆け出した。
「そ、と、だ~!」
大声を上げながら、跳ねる様に出口から飛び出した敬鬼は、
そのまま、
落下した。
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