3.色々調べて、外に出る準備をします
遅くなってすみません。
前回に引き続き説明回です。
孤独なので台詞が異常に少ないです(独り言だけ)。
『データベース』を確認した後、敬鬼は『ミッション』の確認をすることにした。
既に目を覚まして2時間ほど経っており、腹も減ってきていたが、現状の把握をしておかないと不安になる性質なので、我慢することにした。『忍耐』スキルも持っているので、我慢強いのかもしれない。
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はじめに
ミッションは強制ではありません。やることが無いときの指針や、余裕があるときの暇つぶし程度で進めるのを推奨しています。
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「い、いきなりやる気を削ぎかねない注意書きだなあ」
恐らくは、ミッションだけに邁進することが無いようにという配慮なのであろうが、やる気満々で挑もうとしたところにコレでは、肩透かしを食らった気になる可能性もあるだろう。
「まあ、いいや」
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「グランドミッションNo.10 データ蒐集」
グランドミッションは、全12個しかない長期ミッションです。
グランドミッション一つに対して、挑戦できるのは一人だけになっています。
ミッションの進行の断念する際は、メールでの申請で当ミッションを返上することが出来ます。
・ミッションの目標
・ミッションの説明
・ミッション関連施設・設備
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意外と項目は少ない。内容を簡単に纏めると、
『ミッションの目標』には、大きく分けて二つ。
・(虫などを含む広義の)動物、植物、鉱物、岩石、魔物などのサンプルを集め、それらのデータを蒐集する。
・スキル、魔法、魔物の使う種族由来の能力を視認、もしくはその他の方法で確認して、そのデータを蒐集する。
『ミッションの説明』には、
・動物、魔物は捕獲、殺害した死骸または体組織からサンプルを得る(部位によっては完全なデータを得られない場合もある)。
・植物、鉱物、岩石は全体、もしくは一部をサンプルとして得る(植物は部位によっては完全なデータを得られない場合もある)。
・サンプルは『データ化生体保管庫』内にデータの形で保管される。
・それらのデータからは、エッセンスと呼ばれる『構成要素』を得ることが出来、データにあるものはエッセンスから合成できる。
・動物や魔物は、生け捕りにした場合に限り、生きた状態のものを復元できる。
・スキル、魔法、魔物の使う種族由来の能力は、エッセンスとして存在しているものもあり、それを入手できればデータとしても得られる。
・ミッションに必要な施設、設備、アイテムなどは装置の『ポイント交換』で、QPを使って交換できる。
・QPは、ミッションの進行以外でも『何か』を達成することで得ることが出来る。
・ミッション関連の施設・設備は、『ミッション』アイコン内の『ミッション関連施設・設備』の項目以外でも『施設機能』アイコンからでも使用できる。
・不明な点があれば、担当オクトーバーまでメール。
となってた。
『ミッション関連施設・設備』では、それぞれの施設や設備、アイテムの使用方法の説明と、実際に操作できるようになっていた。
とはいえ、今のところは何のデータも入っていないので、何の操作も出来なかったのだが。
『施設機能』のアイコンでは、今のところミッション関連の施設や設備の機能使用の他に、『始まりの石室』内の点灯・消灯や、外に出る扉の作成しか出来ることはないようだった。
『ヘルプ』アイコンを開いてみると、『ミッション』とは違いかなり色々な項目に分かれていたが、とりあえず必要になったら読むことにして、とりあえずよく分からなかったステータスについて調べてみることにした。
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ステータスについて
・名前 ……個体名。個体名が無いものは多くの者が認識している通称(本人が自覚していなくても)。
・種族 ……種族名。個体進化などで変化する。
・年齢 ……生まれてからの年数。満年齢。
・性別 ……人族の場合は男女。それ以外の場合は雌雄。もしくは無性別。特殊な性別の場合もある。
・状態 ……体調。状態異常等になっていないか。
・職業 ……所持職業。複数所持できる。鑑定系のスキルで分かるのは通常はメインのものだけだが、犯罪系職業は取得すると隠蔽しない限り分かる。
・魔力属性……身体に宿る魔力の基本属性。他の属性の魔法が使えないというわけではない。新しく追加される場合もあるが、その場合純度が下がることになる。
・加護神 ……加護を受けている神。複数の加護を受けることが可能。
・守護獣 ……守護契約している神獣、精霊など。複数と契約することが可能。
・最大MP ……体内に貯めておける魔力量。MPはマナポイント。MPはスキルや魔法などを使うと消費する。
・攻撃力 ……武器などを使わない、最大の攻撃力。
・防御力 ……防具などを使わず、防御態勢をとったときの頑丈さ。
・VIT ……バイタリティ。生命力や体力、受動的な肉体強度。肉体的な状態異常への耐性や防御力などに影響する。
・STR ……ストレングス。筋力や瞬発力、能動的な肉体強度。攻撃力や瞬発力などに影響する。
・MEN ……メンタル。精神力や信仰力、精神的強度。精神的な状態異常への耐性や、神や悪魔、精霊などの他者の力を借りる魔法に影響する。
・INT ……インテリジャンス。知性や記憶力。思考力や知識の保有力、自ら魔力を扱う魔法に影響する。
・SEN ……センス。感覚。五感や直感の鋭さ。
・AGL ……アジリティ。敏捷力、素早さ。瞬発力や機敏さ、思考の速さ等にも影響する。
・DEX ……デクステリティ。器用さ。指先の器用さだけでなく、身体の制御力にも影響する。
・LUC ……ラック。運。総合的な運のよさ。
・固有能力……スキルや魔法、種族的な能力に分類できない特殊な能力。
・スキル ……個人や種族の持っている技術。
・魔法 ……魔法系スキルによって使える術式。
・称号 ……二つ名など。
ステータスの高低が単純な能力の高低ではないが、スキルや魔法、職業の取得に影響を与える。
なお、VIT、STRなどの数値は、高位の鑑定系スキルを使わないとわからない為、一般的ではない。
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「なるほど、よく分からんな」
RPGなどをよくプレイするなら理解しやすかったのかもしれないが、敬鬼はゲーム自体を殆どやらなかったので、ステータスについてはよく理解できなかった。数値が高ければいいのかと思っていたのだが、最後の一文で更に混乱することになってしまった。
「考えても仕方ないし、必要になったらメールで聞いてみるかな」
敬鬼は早々に理解を諦めて、『ヘルプ』に関しては必要になったら調べることにした。
「腹も減ったし、何か食べ物を・・・・・・。 確か食料庫に食料を入れてくれるって話だったよな?」
ようやく『ポイント交換』を使うことにしたようだ。
「確かお勧めは、水源、排水設備、食料庫、厨房、トイレ、風呂だったかな?」
それぞれの項目を見てみると、機能によってランク分けされており、当然高機能なほど高いポイントが必要なようだ。
「水源」は、湧出量や水質、水温などや、それらの調整機能。
「排水設備」は、排水量や浄化機能。
「食料庫」は、容量や保管温度・湿度の調節機能。
「厨房」は、可能な調理法や専用の調理道具(「厨房」の外には持ち出せない)の種類。
といったものがランクアップしていくようだ。
更に、「厨房」「トイレ」「風呂」はランクアップしていくと、元の世界で使われていくものに近付いてきており、更にランクアップすれば元の世界でも見た事無いようなSFチックな物も交換できるようになっていた。
もちろん、高ランクのものは今持っているポイントでは交換できないようになっていたので、どうにかしてGPを得る必要があるだろう。
「よし、こんなものかな?」
よく吟味した結果、100GPは何かあった時のためにとっておいて、残りの400GPで施設を強化することにした。
内訳は、
「水源」Lv.1(湧出量:毎時1リットル、常温、軟水)50GP
「排水設備」Lv.1(排水量:毎分5リットル、水脈直送)50GP
「食料庫」Lv.1(害虫害獣避け、食料が腐りにくい、容量:少)50GP
「厨房」Lv.2(竈、調理台、串焼き用鉄串、鍋、包丁、換気)100GP
「トイレ」Lv.2(穴型、水洗、水脈直送、石枠付き、鍵付き、換気)100GP
「風呂」Lv.1(大きなタライ、手桶、排水:悪)50GP
となった。
「厨房」は、Lv.1だと竈と包丁しかなく、貰えるという食材を調理するのが難しそうだったため、ランクを上げてみた。「トイレ」も、Lv.1だと水脈の上に穴を掘っただけで、外への仕切りもカーテンになっているだけのようだったので、ランクを上げた。
それぞれの施設は、元々の『石室』の外に拡張して作ることも出来たが、その場合だと余分にGPが必要になり、そうしてしまうとGPを使い切って全部Lv.1にしても一つか二つしか交換できなかったので、元の広さから間仕切る形にすることにした。
場所は、装置がおいてある面とは反対側に角から「食料庫」「厨房」、逆の角から「風呂」「トイレ」と並べた。後で「厨房」と「トイレ」の間に外に出る扉を作成する予定だ。「水源」「排水設備」は「厨房」内に設置した。
「食料庫」は幅50センチ、奥行き1メートルくらいで、中には籠(部屋の外には出せない)が一つ。ダチョウの卵くらいの大きさの卵が一つと、人の顔ほどの大きさの菜っ葉が一枚籠の中に入っていた。
「厨房」は、敬鬼が元の世界で住んでいたワンルームのアパートのキッチンより広いくらいだったが、石造りの調理台と古民家で使うようなイメージの竈、1メートル四方の足洗い場の上に、壁の突起から滴る水とそれを受ける石の瓶といった感じだった。
「トイレ」もアパートの部屋のトイレより広かったが、石の床に和式トイレの様に枠取りされた穴の下に水が流れているだけだった。
「風呂」はユニットバスくらいの部屋で、直径1メートルくらいの木製のタライと木製の手桶(共に部屋から持ち出せない)があり、部屋の隅に排水の穴が開いているだけだった。
それぞれの部屋の仕切りはすべて『石室』の壁と同じ黒っぽい石造りで、それぞれの部屋と広間の間に木製の扉が付いていた。「食料庫」と「厨房」も扉でつながっていたが、隣り合っていても「トイレ」と「風呂」はつながっていないのは何かの基準でもあるのだろうか?
敬鬼は「食料庫」から卵と菜っ葉を取り出すと、「厨房」で調理することにした。
鍋に卵を割り入れようとしたが、かなり硬く、無理に割ると潰してしまいそうだったので、ベッドの横にあった木箱から金鎚と釘のようなもの(頭の平らな部分がなかった)を取り出して、それらを使って卵に穴を空け中身を鍋に落とした。
菜箸の代わりに鉄串を使って卵をかき混ぜて竈にかけた(火は装置の『施設機能』アイコンから熾せた)。焦げないように、混ぜながら加熱して、適当なところでちぎった菜っ葉を入れた。炒り卵のような感じで卵が固まったら火から下ろし、鍋のまま広間に持って……行こうとしたが鍋が「厨房」から出せなかったので、「厨房」の中で鉄串を箸代わりにして食べた。
「げっ、めっちゃ不味い」
玉子は殆ど味がせず、菜っ葉は異常に苦かった。敬鬼は、急いで食料になりそうなものを探そうと心に決めた。そして、食器になるものも探そうと思った(『ポイント交換』で交換も出来たが、勿体無かったので)。
なかなかの量があったので、物足りなかったものの腹も落ち着いた様だ。
広間に戻ると、装置を操作して竈の火を消し、「厨房」と「トイレ」の間に外に出るための扉を作った。
『施設機能』の「レイアウト」を使って、ミッション関係の設備を装置と同じ側の壁の前に並べると、ベッドまで戻った。そして横の木箱から背嚢を取り出すと、中を確認してみた。
背嚢の中には、どう考えても中に入りきらないようなものが入っていた。
頑丈そうなランタンが1個、1.5メートル程のシャベル、1メートル程のハンマー、刃渡り50センチほどの鉈が1本ずつ、大きな毛布が1枚といった感じだった。
背嚢に鑑定スキルを使ってみると、「拡大容量背嚢」となっていた。
「ん~、こうしていても仕方がないし、外に出てみるか。
食糧なんかも探さないといけないし」
敬鬼は呟くと、水筒と着替え、特典のポーションや手鏡、ミッション用のアイテムを背嚢に入れて、外へとつながる扉に向かった。
読んでいただいて、ありがとうございます。
感想、ご指摘などお待ちしております。